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176話 休憩タイム

前回のあらすじ「地元愛溢れる召喚獣登場」

―「ビシャータテア王国・王宮 謁見の間(緊急指令所)」―


「さてと……」


 僕は少し休めた所で立ち上がる。すでにセイレーンも役目を終えて還っている。


「薫!」


 謁見の間にユノと王様が騎士とシャドウの方々を連れて入って来た。そしてユノがそのまま僕に抱き付いてきた。


「砂で汚れてるよ?」


「気にしませんから」


 そう言って、さらに強く抱きしめてくる。僕は心配しくれたユノの頭を撫でる。


「まさか……倒したのか?」


「ええ。何とか」


 戦った後の状況を見た王様に訊かれて答える。


「そうか……また、世話をかけたな」


「いいですよ……それよりあっちは?」


「シュナイダー達は討伐された。シュナイダー達が引き連れていた奴らがまだいるが、あいつらには薫達が戦った奴のように知能は無いらしい……そう長くは無いだろう」


「そうですか……」


「薫さん!!」


 すると、今度は他国の賢者たちを連れたソフィアさんがやって来た。


「良かった……皆さん。ご無事のようですね」


「ええ……まあ。でもどうしてここに?」


「現実世界に道具を取りに行っていたグループが、魔族しかも四天王と呼ばれる幹部が殴り込みに来たと報告があって、急いでクロノスにいた賢者達全員を連れてやって来たんです」


「まあ……それも無駄だったようだな」


「砂……土属性の魔法か……まあ、彼らが使う魔法なら、さぞ恐ろしい魔法なのだろうな」


「でしょうね……まあ、それより今は無事に退治された事を喜びましょう」


 集まっていただいた賢者さんたちから、集まったことに意味が無かった事に対しての残念感と無事に終わったことによる安心感が混ざった声が聞こえる。


「すいません。せっかく集まっていただいたのに」


「気にしてませんよ。それより私は一度あちらに報告してきます。それで……」


「それで?」


「相手はどんな奴でしたか?」


「スライムでしたよ」


「スライム?あの?」


「はい。ねえ泉……?」


「(……寝てますね)」


 ユノが声を小さくして喋り始める。ユノの言う通り、泉が僕の肩に寄り掛かって寝ている。レイスとフィーロも泉の膝の上でぐっすりだ。


「……とりあえず報告はスライム型の四天王討伐完了ということで伝えときます」


「お願いします」


「俺達も戻るか……戦闘は問題無いみたいだしな」


「ああ。ただ各国の王達にも伝えておいて欲しい」


「もちろんですよサルディア王。それでは失礼いたします」


 そう言って、ソフィアさんたちと賢者さんたちは帰っていった。


「さてと……どうしようかな?」


「そうですね……」


 ユノと一緒に泉たちを見る。皆をどうやって運ぼうか……。


「無事か!!」


 そこへカーターたちが……。


「ちょうど良かったよ王子様!さっそく眠り姫を連れていって欲しいな!」


「はい!?」


「……だな。王としての命だ。泉を抱きかかえて休める場所に連れていってくれ」


「へ!?」


「分かったわ!ほら!カーターやるわよ!」


「え?まて?魔族は?」


「どうせもう倒したんでしょ!さっさと功労者を休ませる!」


「そうですわ!」


「は、はあ……?」


「ゆっくり休めた方がいいだろう。上の客室を使ってくれ」


 そのままカーターを言いくるめて連れていかせる。流石、騎士……お姫様抱っこで連れていってくれた。


「さてと、二人は僕が」


 先ほどまで泉の膝の上で寝ていたレイスとフィーロは僕のアイテムボックスから取り出したタオルの上で寝ている。僕は二人を落とさないようにそのタオルを丁寧に持つ。


「薫も休んで下さい。疲労困憊でしょうし……」


「そうだな……ユノ。お前の部屋に連れていって休ませてくれ。それとゆっくり休めるように一緒にいるといい」


「はい。それでは薫……」


「いや。客室で……」


「薫達なら気にしませんから!」


「そこは淑女としてのたしなみを!!」


「淑女としてのおもてなしをさせていただきますわ♪」


 すると、ユノが物凄い力で僕を引っ張る。え?どうしてこんなに強いの!?と思っていたがその理由は簡単だった。ユノの部屋に着いた後、2人が寝ているタオルをテーブルに置き、ユノに引っ張られるままベットへと倒れるとそのまま寝てしまうくらいに疲れていたのだから。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから数時間後「ビシャータテア王国 城内 ユノの部屋」―


「うん……?」


 目を開けると豪華な天蓋が見える。


「起きたのです?」


 声のする方へ振り向くと、レイスが僕を見上げていた。


「うん……」


 僕は少しけだるさを感じながら起きる。隣を見るとユノも寝ている。その表情は非常に穏やかだったので起こすのは止めといた。


「フィーロは?」


「ここッスよ」


 フィーロを見ると、テーブルの上にあったお菓子をつまんでいる。あんなのこの部屋に来た時には無かったと思うんだけど?


「王子様が持ってきたのです。起きたら皆で食べて。って」


「そうか……ふぁ~」


 僕は大きな欠伸をして背筋を伸ばす。窓から外を見るともう夕方になっていた。


「それで泉は?」


「ああ。それなら……」


「薫兄!!」


 ユノの部屋に泉が怒鳴りながら入ってくる。その声を聞いて寝ていたユノも起きてしまった。


「な、何んで!カーターさんが!!」


「覚えていないの?泉ったら寝落ちしたんだよ。それで僕たちを心配してやって来てくれたカーターに頼んで客室まで運んでもらったんだ。それでカーターは?」


「私が起きたら、大丈夫か?とか熱が無いか?とか……額に手を当てたりして……」


「ほほえましいですね♪」


「だね」


「じゃないから!恥ずかしかったんだから!寝顔を見られたりして!」


「それで泉の王子様はどうしたッスか?」


「フィーロ~~ーーーー!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから30分後「ビシャータテア王国 城内 ユノの部屋」―


 泉が落ち着いた所で、僕たちが寝ていた間の状況を確認すると、お菓子を置きにきた王子様と、泉の無事な様子を確認後また城壁に戻っていってしまったカーターからの話を聞くと、指揮官のいなくなった筋肉ダルマたちはほぼ討伐。魔法使いや徹甲弾のような兵器を使わなくとも、近接武器で筋肉による強化が出来ない関節部分を攻撃することで動きを止めてから急所を突くことで被害を最小限に抑えつつ倒せるとの事だった。


 すでにその方法が王都内に待機していた冒険者たちにも伝えられて、戦える人たち全員で攻撃をしているらしい。その代わりに城壁にいた米軍と自衛隊の人々は避難所の支援に再び回っている。という訳で、急ぐ必要はもうなくなったので僕たちはしっかり休むようにとのことだった。


「お疲れ様」


 そこへカシーさんが入ってくる。


「お疲れ様です……あれ?ワブーは?」


「女性の部屋に入るのは憚れるって」


「……僕は?」


「婚約者だし……異性とは思えないから安心しなさい」


 カシーさんの意見に僕以外の全員が頷いている。


「何を安心しろと!?」


「まあまあ……それでカシーさんも一休みですか?」


「ええ?少し休んだら仕事に戻るわ。まあ、戦闘は終わりだけど」


「そうですか……どうぞ」


 泉がポットに入っていたお茶をカップに注いで、カシーさんに手渡す。カシーさんは座らずに立ったままお茶を飲み始める。


「それで、どんな魔族だったのかしら?」


「スライムでした」


「「スライム?」」


「スライム……この世界にもしかしていない?」


「初めて聞きます。カシーは?」


「私もです。それでどんな特性を持ってるの?」


「本体である核と黒い魔石を1つずつ持っていて、それらを守る為に大量の水を纏っている奴でした」


「その纏っている水を操って攻撃を仕掛けて来たのです」


「そんな魔族がいたのね」


「……姿を自在に変えてました。私が初めて目にした時は細い体型の男性でしたから」


 ユノが首をさする。あいつに首を絞められたのを思い出してしまったようだ……。


「そういえば、薫達は何であんなに速く助けに来られたんですか?襲われて間もないはずでしたのに?」


「あいつ、避難民と一緒に何食わぬ顔して入って来たんだけど……見た目とかは騙されても足音は無理だったみたいだね」


「足音?」


 それを聞いた皆が首を傾げる。


「音が何か大きい人が歩くような足音だったんだよね。それでちょっと見ていたら、土を踏んだ時の足跡が凄くへこんでいたし……」


「え?足音?そんなので分かるの?」


「薫兄って背後から迫る変態相手に何戦もしてるから……たぶん」


「それでも出来るとは思えないッスけど」


 フィーロの意見に僕を除く全員が頷いている。橘さんも出来るんだけどな……。


「でも……弱いスライムで良かったよね」


「そうッスね……」


「「へ?」」


 泉たちの弱いスライム発言にユノとカシーさんが驚いている。


「二人の意見には同意。もしあれが別パターンのスライムだったら……」


「魔王になったスライムとかなら死んでいたのです……」


「そ、そんなスライムがいるんですね……」


「あくまで創作上だけどね。肝心なのはそのスライムに核が無いってところかな。アクヌムにも核が無かったら、再生が出来ないように徹底的に消滅させないといけないから……」


 本当に運が良かったと思う。創作上では強さの幅にピンからキリまでいるスライムの中で、そんなスライムが襲ってきたとなっていたら本当に負けていただろう。


「倒した……ですよね?」


「うん。そこは間違いないよ。ただアレ以外のスライムがいないとは言い切れないけど」


「今後、魔族との戦いにおいて注意する魔獣の一種になるわね……それとすぐにこの事を伝えて警備を強化するわ」


「お願いします」


「さてと……」


 カシーさんはカップを置いて、部屋を後にしようとする。


「え?もう休憩終わりですか?」


「ええ。他の件も含めて急いで報告しないといけないから。それにワブーも周りから話を聞いていると思うからそちらも聞かないとね。それじゃあごちそうさま」


 カシーさんはそう言って部屋を後にするのだった。


「……どうするッス?」


「うーん……このまま休んでいるのも…ね」


 皆が仕事をしてるのに、こうやってお菓子を食べてお茶を飲んでゆっくりしてるというのは……気が引ける。


「また、外のお手伝いに行こうか」


「そうですね」


「でも皆、大丈夫なのです?」


 レイスの意見に、体の具合を確認するが問題は……あった。


「着替える……」


 衣装が巫女服だった。


「そのままでいいじゃん」


「砂を使って汚れてるからね……あ。砂も回収しないと……」


 今、思い返すと色々やらないといけないことがあった。


「じゃあ着替えたら、またお手伝いにまわりましょうか」


「うん。それでいいと思うよ」


 泉たちも賛成したので、休憩を終わりにして再び後方支援へと僕たちは戻るのだった。


「それで使っていない部屋って無い?」


「ここで着替えてもらってもいいですよ?」


「私も気にしないから」


「僕、男だからね!?」

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