表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/503

171話 フラムマ・マキナ

前回のあらすじ「4体目の召喚獣登場」

―「ビシャータテア王国・王都付近の森」カシー視点―


 カーター達に注意が向いている間に、グリモアによる魔法陣生成からの召喚魔法。あのロロック達との戦いから考えたら大幅な短縮。これぞ魔法工学の成果とも言えるかもしれない。


 そしてシュナイダーとキクルスも同じようにアレもアレで魔法の発展といえるが……正直、あんな成果は認めたくない。


「そんな成果……全て破壊しなさい!」


 私の隣に出現した召喚獣フラムマ・マキナに命令する。


「なんだアレ?」


「魔法……なのか?何だあの鉄の塊は……!?」


 シュナイダー達が驚いている。私達が創った召喚獣は上半身は人、下半身は昆虫のような6つの足を持つ全身に重火器を装備したロボット型。あちらの技術を色濃く反映させたのが私達の召喚獣である。


「フラムマ・マキナ。あなた達が恨んでいる薫が創り出した新たな魔法よ」


「なんだと?」


 今度は私達に注目が集まるように含みのある言い方をする。その間に4人が巻き込まれないようにその場から離れていく。


「ケケ!だったら魔法使いを潰せばいいだけだろウ?」


 そう言ってキクルスが攻撃を放つ。しかし、それをフラムマ・マキナがすかさず間に入って攻撃を受け止めた。


「チッ!」


(……モクヒョウ。確認)


シューーッ!!


 少しだけ音を立てたフラムマ・マキナの攻撃によって、キクルスの右手と羽が吹き飛んだ。


「ヘ……?」


 そこから血は流れていない。攻撃と同時に相手の傷口をレーザが焼いて塞いだのだろう。


「ギャアアアアーーーー!!!!」


 突如、キクルスが大声で悲鳴を上げる。しかしフラムマ・マキナはそれを気に留めず。そのまま顔に装着したゴーグルから第二射を撃とうとする。


「くっ!」


 今度は先ほどとは逆にキクルスの攻撃を庇うために、シュナイダーが前に出る……しかし、その堅い体を見えない何かが貫く。


「はっ?……はあああーー!?」


 まさか、自信のその堅い体を貫かれるとは思っていなかったのだろう。


「な、何だ!その攻撃は!!」


「ふん。ただのレーザだ。そんな凝った物では無いぞ?」


「レーザ?何だそんなの聞いたことが?」


「異世界の技術だからな」


 ワブーがあっちの世界と言ったが……少し語弊もある。そもそもレーザでこんな風に人に穴を空ける事は出来ない。ただし……魔法で疑似的に作ることは可能だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―今から1週間前「笹木クリエイティブカンパニー・第ニ工場」カシー視点―


「はは……空気抵抗やら熱の減少とか色々あるはずなのにここまでとは!!」


 直哉が盛大に大笑いする。他のメンバーからも実験の成功に大いに歓喜してる。


「でも、これを実戦で使うとなるとやっぱり召喚獣にしないとダメね」


 そう言って、私は労うように実験でレーザを撃ったフラムマ・マキナの肩を叩く。


「それでもおかしいですから……この様子だとまだまだ行動が可能みたいですし。レーザの射出も余裕で撃てるみたいですよ?」


 榊がタブレットを操作しながら、今回の実験をまとめていく。


「レーザ加工とかなら問題無く……兵器利用となると魔法使いじゃないと無理……結果としてはこれで良かったのかもしれませんね」


「紗江さんの言う通りですね……魔石でレーザ兵器が大量に作れるなんて事になったら戦争に利用されそうですしね」


 二人がにこやかにホッとした表情で今回の結果について話している。


「ただ、魔石でレーザを放てるように魔法陣の開発が必要になるな。もしかしてクロノスにあるか?」


「あそこにはまだまだ色々な情報があるしな……それもありだろう」


「光を使ってより、やっぱりこの方法で……」


 別の所では賢者同士で魔石を使ったレーザ器具の開発の話し合いがされる。


「……しかし、これは」


 ワブーが腕を組みながら考えている。それを見た私もついつい一言呟いてしまう。


「レーザと呼んでいいのかしら?」


 フラムマ・マキナを喚んだ私達二人にとってこれをそう呼んでいいのか困ってしまう。レーザの定義に指向性が一定方向、波長が一定で、波同士の谷と山がそろっている必要がある……そう。これがレーザの定義なのである。しかし、そんな見えない物を想像力が大事な召喚獣で再現するのは厳しく、最初の召喚ではただ目が、キラリン!と光るだけだった。そもそも光=火属性というのはどうなのだろう?光=雷属性ではと思い始めていた。


 そこで、紗江が、えーと。それなら見えない高温の棒を飛ばすイメージ……で、どうですか?物体を高温になるように振動させるというのは火属性っぽいですし……。とアドバイスがあり、試しにやったのがこの結果だった……長々と説明したがつまり。


「光……関係無いんじゃないかしら?」


「かもしれん」


 ここにいる全員が喜んでいる中で、私達二人はどうも釈然としない結果に素直に喜べなかったのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―現在に戻って「ビシャータテア王国・王都付近の森」カシー視点―


「まあ……不可視の高温攻撃としては一緒か」


「その辺りの話は、後にしましょうか……」


 この前の事を頭の片隅で思い出し、この呼び名に若干の抵抗を感じつつも戦闘に戻る。


「くそっーー!!」


「やりなさい。フラムマ・マキナ!」


 フラムマ・マキナが再びレーザを放つ。今度はそれを受けずに横へと逃げる。それを見たフラムマ・マキナは腰に装着している2丁のバズーカ砲を相手に向けて撃ち始める。それは相手のいる所で都合よく爆発。小さなデイピロ・エクスプロージョンを発生させる。


「くっ!」


「なんだヨ!あレは!!」


(目標……生存……)


 すると、フラムマ・マキナが背中のロケットランチャーから上空へと発射。それが上空で爆発して中に入ってた小さい爆弾が地面へと降り注ぎ、相手の進路を妨害する。それがどんどん爆発を起こしシュナイダー達を巻き込んでいく。


「ぐああああーーー!!!!」


「ギャあああアあーーーー!!!!」


 単純な爆発によって外傷は与えられないはずである。しかし奴らは苦しんでいた。


「どうやら内部は脆いままだったようだな。カーター達の火属性の攻撃に対しては息を止めていたという所か……」


「流石に連続爆破に対しては息がもたなかったようね……」


 先ほどからの集中砲火のせいでシュナイダー達辺りから凄い熱風が吹きつけてくる。その中心地は灼熱だろう。


「くっ……ああ」


「ケ……ケ………」


 シュナイダー達がボロボロの状態で立っている。


「く、くそ……」


(活動時間残り30秒……最終シークエンス……トリプレックス・エクスプロージョンへ移行)


 フラムマ・マキナの体が鉄の黒い色から赤へと変色していく。


「全員……避難して!!」


 4人にもっと遠くへ逃げるように呼び掛けてから、私達もその場からさらに離れる。私達がその場を離れると同時にフラムマ・マキナがシュナイダー達に目掛けて突撃する。


「ナ!?」


「くそ!!キクルスいくぞ!!アース・ブレイク!!」


 地面に衝撃を与えて地面が隆起する。その行為にフラムマ・マキナの行動が阻害される。


「よし!ここで……!」


(残り5秒……4…3…2…1……デリート)


 そして、フラムマ・マキナ自身が盛大に爆発。一度に三回爆発を起こすトリプレックス・エクスプロージョンが発動した。その威力は凄く近くの木々がその爆発で倒されてしまう。遠くの木に隠れて耳を塞いでいた私達でさえも今にも吹き飛ばされそうになる。


「凄い爆発だな……ここまでとは思わなかった」


「かなり危ないから実験しなかったけど……正解だったわね」


 爆風が収まった所で隠れていた木から顔を出す。薫の使った彗星以上に大きなクレーターを作り、その中心には倒れているシュナイダーの姿が……。


「キクルスは?」


 私達が中心へと歩みを寄せつつ、周囲を見回すが姿を確認できない。


「こっちに来たわよ」


 左を向くとカーター達がこちらへ歩いてきた。


「奴は?」


「死んだ。さっきの爆発で首があらぬ方向へ向いていてたよ」


「そうか」


 キクルスが死んだ。これでこの戦闘も終了という事だろう。


「終わったぜ……」


「ですね」


 右からはシーエ達が。こちらは全員無事だったようだ。


「しっかし……アレは無いぜ!何だよアレは!!危うくうちらも死ぬところだぞ!!」


「しょうがないじゃないのよ。何せ今のが初めてだったもの」


「……事前に確認して下さい。アレが王都の近くだったら大惨事ですよ」


「無事だったんだ。いいだろう?」


「「「「よくない……」」」」


 ワブーの意見に4人が反対する。しばらくの沈黙の後、全員が一気に笑い出す。無事に終わってホッとしてしまった。これで後は……。


「カシー!!後ろ!!」


 私がサキの声に反応して後ろを振り向くと、真っ黒になったシュナイダーが鬼の形相でその右手を振り上げていた。


「あ……」


 一瞬の油断。これは避けきれないと悟ってしまった。一秒が何倍にも伸ばされた状態になり、何も出来ないと分かった瞬間に目を瞑ってしまう。その瞬間、横から衝撃が加わって弾き飛ばされる。あの手で殴られたにしては弱い威力。


「ガハッ!!」


 その聞き覚えのある声を聞いて目を開けると、そこに映ったのはカーターが体でその攻撃を受けて、身に付けていた鎧が粉々になる所だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ