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170話 土属性の魔法使い

前回のあらすじ「足場を有利に」

*165話にクエスト名を追加。また各話の誤字・脱字を修正

―「ビシャータテア王国・王宮 庭」―


「う、うっ……」


「こっちへ!」


 僕たちの横を担架が通り過ぎる。頭から血を流してそこを押さえていたため、投げた物が頭に直撃したのだろう。


「騎士団の人かな?」


「多分そうッスね。鎧も着てたッスよ」


「皆さん!こちらへ!」


 声のする方へ振り向くと今度は大勢の人々が騎士の人に連れられて避難場所に入ってきた。


「こちらに順番にお並び下さい!」


「この人はそっちへ!!次の人!」


 避難場所に建てたテントの下で受け付けの人々が慌ただしく働いている。


「あの人達、何かボロボロなのです」


 レイスのその違和感を聞いて、近くにいる騎士団の人に訊いてみる。


「この人たちは?」


「あいつらに連れて来られた人達です。この人達を弾のように……」


「それは本当ですか……?」


 とっさに後ろを振り向くと、そこにはテントで作業をしていたはずのユノの姿が……。


「ゆ、ユノ!?どうして?」


「ちょっと、薫に確認したいことがあったので……それより」


「ユノちゃん。落ち着いて……ね?」


「……泉も知ってたんですね」


「あ、えーと……」


 ユノは少しだけこちらを睨んで、そのままお城へと走っていってしまった。


「マズかったな……」


「いいえ。僕も少しばかり注意を怠ってたので……すいません。僕の方でフォローを入れるので騎士さんは仕事に戻って下さい」


「すいません……それでは失礼します」


 騎士さんは振り返って、受付のテントへと走っていく。すると一人の細めだがごく普通の男性が目に入った。その人はそのままお城近くのテントへと歩いていった。


「どうしたの薫兄?」


「うん?いや……何でもないよ」


「それよりお城の方に行った方がいいのでは?」


「そうッスね」


「二人の言う通りだね。それじゃあ……」


 僕はコックさんに断りを入れてからお城の方へと向かうのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王都付近の森」カーター視点―


「ケケケ!」


「全く……厄介だな!」


 俺は剣を振るってキクルスを斬ろうとするが、精霊という体の小ささと、恐らく黒の魔石によって強化された飛行能力で避けられ続けている。


「キクルス!」


「ケケ!」


 シュナイダーが声を荒げてキクルスを呼び戻す。


「やるのか?」


「ああ……」


 シュナイダーが地面に手を当てる。


「下の氷がやっかいだしな……アース・ブレイク!!」


 突如、大地が揺らぎ地面が盛り上がったり、逆に沈んだりする。さらにトドメに尖った岩が地面から突き出してくる。それを見て俺達はさらに距離を取る。


「嘘!こんな魔法を見たことが……」


「サキ!防御魔法!」


 俺は驚いているサキに声をかけながら前に出る。あいつらが何をしようか見えていたのだ。


「ファイヤー・ウォール!」


 急いで炎を壁を作り出し、それを盾にしつつ左右…または上にすぐに逃げられるように準備する。


「オッラアアアア!!!!」


 掛け声と共に、突起した岩をその馬鹿力で殴り、尖った岩が砕かれて幾つもの弾として襲い掛かってくる。


「何よ?あれ!」


「分からん。それより逃げるぞ!」


 炎の勢いが弱くなって盾がそろそろマズそうなのでこの場から離れようとする、サキが慌ててシーエ達のいる方向……と、行きそうだったので咄嗟にその体を手で掴んで逆に逃げる。すると逃げようとした方向に無数の岩が飛んできた。


「仲間と合流するっと思って、そっちに飛ばすと思ったよ」


「……何かアレに引っかかるって悔しい」


「ディピロ・エクスプロージョン!」


「スパイラル・アイス・ランス!」


 シーエ達が攻撃を仕掛けたことによって、シュナイダーがそっちへと攻撃を移した。


「今のうちに!」


「いや。冷静に見ろ……っと!」


 俺はサキを手で掴んだまま、そのまま横に飛んで避ける。さっきまでいたところにはファイヤー・ボールが飛んできた。


「ケケケ!!」


 シュナイダーは先ほどから尖った岩を殴り岩を飛ばす攻撃をし続けていて今はシーエ達の方を向いている。ただキクルスはこっちを向いていて、俺達、魔法使いが使うのと遜色のない魔法を放ってくる。


「反則でしょ!!」


 手に掴んでいたサキが叫ぶ。俺は手を離して解放する。


「精霊だけであんな魔法を使うなんて反則よ!」


「それよりも攻撃するぞ!スプレッド・ファイヤー・ボール!!」


 キクルスに向けて拡散型の魔法を放つが避けられる。


「オクタ・エクスプロージョン!」


 カシー達も攻撃をキクルスに変えたが……。


「クレイ・ウォール!!」


 シュナイダーが素早くキクルスの前に出て土属性の攻撃で攻撃を塞いだ。土の壁は壊れたが二人は無傷のままだった。


「マッド・ボール!」


 すると、今度は地面から大きな土の塊を作り、それを攻撃を仕掛けたカシー達に投げる。二人はそれを間一髪のところで避けた。


「さっきから土属性の魔法ばっかり使って……なめてるのかしら?」


「サキ!」


 俺はまたまたサキを手で掴んでそこから離れて、剛腕から投げ出された岩を回避する。今の攻撃は明らかにサキを狙っていた。


「大丈夫か?」


「ご、ごめんなさい……」


 シュナイダーに注意を向けつつ、再びサキを解放する。シュナイダーがこちらを鋭い目つきで威嚇する。


「……なるほど。土属性しか適性が無い魔法使いってことか」


 シュナイダーが俺の言葉を聞いて、ものすごいスピードで近づいて殴りかかってくるのでそれを最小限に避けて、首元を切るが切れない。すると、シュナイダーが再度殴ろうとしたので、それを剣で受ける。


「ウォオオオオーーーー!!!!」


 真正面から受けたら明らかにタダでは済まなそうなので、咄嗟に後ろに飛んで威力を弱めるが……そのまま吹き飛ばされて地面を転がってしまった。


「カーター!!大丈夫ですか!」


「ああ。大丈夫だ。お陰でこうやって合流できたしな」


 上手く位置を考えて、吹き飛ばされた時にシーエ達と合流できるように攻撃を受けていた。当然だがちゃんと薫直伝の受け身を取っているし、すぐに起き上がれるようにも注意している。


「薫との手合わせに感謝ね」


「ああ。流石、達人クラスの武術を持っているだけあるな」


 シュナイダーとの接近戦の際に、俺の鎧の中に隠れていたサキが感想を述べながら飛び出て来る。


「薫?……あいつはどこだ!!俺をあんな目に合わせたアイツは!!!!」


「さあ?彼は騎士では無いですからね……そもそも自業自得では?」


「五月蠅い!!そうやってどいつもこいつも馬鹿にしやがって!!!!」


 シュナイダーが思いっきり跳躍し、頭上から襲い掛かってくるのでそれを避ける。


「馬鹿にしやがって?そんなおつむじゃそう言われてもしょうがねえじゃないの?」


 マーバがシュナイダーを煽る。それを聞いた奴が近くにあった倒木を持ち上げて投げる。シーエ達に向けて投げられてたそれは氷の盾で塞がれた。


「貴様らに分かるまい!!土属性にしか適応が無い魔法使いの扱いがどういう物か!!」


 どういうことか分からない。魔法使いはその存在自体が重宝される。例え適応する属性が土属性だったとしてもだ。


「多勢の賊を倒しても、土属性にそれは出来ないって言われ、他の奴らの手柄にされる!」


 そう言って、奴はカシーを殴ろうとするが、エクスプロージョンで目くらましされて、その拳は地面に刺さる。


「土属性だからと言われて、他の魔法使いからバカにされて蔑まれる!マッド・ボール!!」


 突き刺さった手を抜きつつ、その手に大きな土の塊を持っている。それをそのままこっちへと投げてくるので俺達は避ける。


「国民の為に働いたら、群れてその手柄を横取りされる!!」


「……だからと言って分かりませんね。魔法使いはどこの国でも重宝されるはずですよ?」


「はっ!それはこの国の魔法使いが少ないからでは無いか!」


 今度はシーエ達に攻撃をする。それをシーエ達は躱して剣でカウンターを仕掛けるが効かない。


 さっきの話……ソーナ王国の魔法使いの数はこの国よりも多く、ドルコスタ王国と同数というのは聞いたことがある。それはソーナ王国はエルフがドルコスタ王国ではドワーフの魔法使いが多いという理由がある。そして、エルフとドワーフは長寿。それだけ長く魔法使いとして在籍出来るという意味である。


「多いから、手柄の奪い合いが起きるのだよ!こいつよりも優秀だとな!」


「だから、隣国を攻めて落とすか……短絡的だな」


「短絡的?ああ、そうかもしれないな!だがな……腐ったあの国を変えるにはそれしかなかったのだよ!手柄の為に……私の妻に手をかけた愚か共を粛正するにはな!!!!」


 その衝撃的な発言に少しだけ動きが鈍る。しかし、奴はお構いなしに今度は両手で土の塊を作り投げ飛ばしてきた。俺は避けきれずにその攻撃を咄嗟に両手で防いだ。その土量に負けて後ろに倒される。間一髪、生き埋めになるのは免れた。


「カーター!!」


「大丈夫だ……しかし……」


 あんな奴に妻?そんなのがいたのか?


「まさか既婚者とは……」


「どんな聖人だよ」


「ケケ!人を見かけで判断するジャねえヨ!」


 驚いているシーエ達にキクルスが不意打ちを喰らわせる。マーバは咄嗟に避けたが少しばかり攻撃を受けてしまった。


「大丈夫ですか?」


「問題ねえよ!それよりも!」


「分かってますよ!スプレッド・アイス・ショット!!」


 キクルスに攻撃を仕掛けるが全て避けられてしまった。


「ちっ!当たらねえ!!」


「当たるカ!!」


 そう言ってキクルスが笑う。


「ははは!そんな攻撃じゃ我々は倒せないぞ!!」


 シュナイダーも今までの攻撃が効かない事で余裕の表情を見せる。……ふっ。()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そんなにそちらに集中してていいのか?」


 シュナイダー達が声のする方へと顔を向ける。そこには魔法陣の中で杖を構えているカシーと魔石を持ったワブーの姿が。


「何だ?その魔法は……?」


「情報不足ね……文明の発展より生まれし存在よ。今、ここに起動せよ!フラムマ・マキナ!!」

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