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167話 夜戦と支援物資

前回のあらすじ「なお、現実世界のお偉いさんたちも本気で協議中」

―「ビシャータテア王国・王宮 庭」―


「まさか、王女様が元騎士団隊長さんとは……」


 人は見た目に寄らずとは言うが、まさか王女様がそんなに強い人とは。


「魔法使いより相手にしたくない女騎士という事で、バーサーカーって言われたそうですよ?」


 ユノの言葉に失礼ながらも、それって人間?と思ってしまった。


「とんでもない二つ名な気がする」


「まあ、本人は気にしていないので問題無いと思いますよ」


「そうなんだ……」


 ジャガイモの皮を剥きながら泉が恐る恐る答える。あれはどう反応していいか困っている感じだった。


「そちらの準備はどうですか?」


 すると王宮のコックさんがこちらの進捗状況を尋ねて来た。


「もう少しで終わります!」


 僕は時計を見る。すでに針が5時を過ぎていた。外は少しづつ暗くなっていく。


「夜か……」


「薫!」


 すると、クロノスで作業中の直哉と紗江さんがやってきた。


「二人共どうしたの?」


「クロノスの今日の作業が終わって一度帰る所だ。他の賢者も帰って自国の防衛に当たるしな」


「そうか……あ、それで帰るから僕たちの所に?」


「それなら他の賢者に頼んでる。わざわざこっちに来たのはお前にある物を運んで欲しいからだ」


「ある物?」


「それは……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―薫と直哉のやり取りから一時間後「ビシャータテア王国・城壁 南側」シーエ視点―


「もう少しで夜ですね……」


「だな」


 夜。通常の戦闘なら一旦戦闘は休戦……また日が昇り次第、戦闘開始となる所だが……。


「こちらの砲撃が止むタイミングですし……」


「相手はバケモノ……攻めてくる可能性大だぜ」


「夜の闇に紛れるのは結構だが……こちらは関係ない……」


 響く轟音。軍人の二人は薄暗くなっているこの時間帯でもどんどん相手を倒していく。変な道具が増えているが。


「見えるのですか?」


「暗視ゴーグルという暗闇でも相手がくっきりと見える装備がある」


「ってことで問題ありません」


 羨ましい限りです。そんな装備があればこちらにも欲しいですね……。


「隊長!」


「どうしました?」


「えーと……支援物資が届きました」


「支援物資?」


「暗視ゴーグルが届いたか!」


「大量の暗視ゴーグルなんてよく持って来れましたね……」


「大使のソフィアだろう……どんな方法を使ったのやら……」


「気にしない……難しいですよね」


「まあな……」


 そう言って二人が溜息を吐いている。二人の会話からしてあちらの世界の代表者の一人であるソフィアが用意した物らしい。その行為がどれほど難しい物かも二人の反応から読み取れる。


「本当に味方で良かったぜ……」


「ですね」


 人員を休ませる必要も出て来るこの時間帯。より気を引き締めなければ……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―さらに一時間後「ビシャータテア王国・城壁 西側」カシー視点―


「ディピロ・エクスプロージョン!」


 周辺は真っ暗になり、先も見えない中で魔法が直撃する。相手にとって恐怖でしかないでしょうね。


「防衛全員とはいかなくても砲撃要因全員分があるのはありがたいわ」


「どう用意したんですかね……」


 自衛隊の隊員がミリーの方をチラッと見る。その視線にミリーも気付いているみたいで平然とした表情で答える。


「簡単よ?ソフィアの組織と私達ラエティティアが集めて、日本は必要な受け渡し手続きを省き、車両を使ってすぐに薫宅まで運び入れただけ」


「簡単……簡単とは一体?というよりかなり大問題じゃ……」


 自衛隊の隊員が目頭を押さえて呆れている。


「まあいいか……この際細かい話は後にしましょう」


「そうね……それで最初、誰が休む?」


「私達が最初に休ませてもらうわ。あなた達も一度、休んで欲しいんだけど?」


「交代要員がもう少しで来るから、来たら休むわ」


「……準備がいいな」


「私達も軍人ですから……あ、私はここに残ります」


「休まないのか?」


「一晩なら問題無く」


「……呆れた体力ね」


 その後、ミリーは交代要員とバトンタッチして城壁を降りていった。交代の狙撃手の状態は万全。一晩中攻撃が可能。相手が奇襲を狙っているならこれで防げる……かしら?


「このやり口……不気味だな」


「そうね」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・城壁 東側」カーター視点―


「凄いわね!これ!」


 王女様が暗視ゴーグルという装備を付けて、どんどん指示を出していく。


「鬼に金棒っていうのか?」


「薫が虎に翼って言ってたわよ」


 俺達も付けているがこれは凄い。お陰であっちの攻撃部隊が丸見えだ。


「カーター!門前に敵集団!」


「分かってます!サキ」


「ええ!」


「スパイラル・フレイム・ランス!」


 常に先端が渦巻いている炎の槍を作りだし、敵に放つ。


グォオオオオーーーー!!!!


 それを筋肉ダルマが殴るがその腕を貫き、右半分を抉った。筋肉ダルマはそのまま倒れる。そのまま同じ術で敵を一掃する


「やるわね……今度手解きしたいわ」


「王様に怒られるので勘弁して下さい……」


「バーサーカーのスイッチが入ちゃってるわね」


「それと一度、王様の所に戻って下さい。心配されるので……」


「一晩余裕よ?」


「「ダメです!!」」


 暴れ足りない王女様をなだめつつ、夜の戦況を眺めるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王宮 謁見の間(緊急指令所)」―


「そちらはどうだ?」


「現在、死者はゼロ。敵の投げた物に当たったことによる騎士の重軽傷者…合わせて15名。市民で軽傷者4名です」


「そうか……」


 既に戦闘が始まり半日以上が経っている。死人が出ていないのが唯一の救いか……。


「夜になり、各地で戦闘が激化していますがまだ侵入を許してません」


「門の無い北側の様子は?」


「そちらもハリル達が監視。侵攻がありましたが現在も対処出来ているとのことです」


「何とか持ち堪えてますね父上」


「ああ。暗視ゴーグルという装備のお陰でこちらが夜も有利に戦えるからな……追加の礼にでも魔道具を送るか」


「ですね」


「それとアレックス。お前は先に休め。長丁場になるからな」


「分かりました。そういえばユノは?」


「薫達と一緒にあっちだ。あちらなら安全だしな。お前も安心して休めるだろう?」


 国民を置いていくのは出来ない。だから本人はこちらに留まるつもりだったが、薫達に頼んで連れていってもらった。


「薫さん達に感謝ですね」


「あの子の役割は戦闘では無いのでな。あっちでしっかり休んでまた後方の支援に回ってもらいたいのだ」


「ただいまー!」


 アレックスと話をしていると、サーニャが東の城壁から帰ってきた。


「戻ったか。ケガとか大丈夫か?」


「全然よ!むしろ久しぶりの戦場でワクワクしてるわ!」


「それだけ余裕なら問題無いな」


 妻の報告に思わず苦笑いをする。バーサーカーとしての騎士の姿は健在という訳か。


「それで……お前からみてどうだ?」


「……気味悪いわね。何を考えているか分からないわ」


 鎧を外しながら答える妻。他の面々からも同じ内容だな。


「ユノは?」


「予定通りあっちだ」


「それなら安心ね。仮にあっちに攻めたら薫達が抑えるでしょうし」


「ハリルの話じゃ、ある程度なら気配を読める。って言ってたからな一番安全な場所だ」


「なるほど。母上も知っていたと」


「ええ。それに謎の召喚獣も呼べるみたいだし」


「謎?」


「そうだったな……」


 シーエ達の報告にあいつが蝗災という呪文を作り、そこからさらに強力な召喚魔法を創ったと聞いているが……。


「まあ、こっちの身の安全を心配するべきだな」


「そうですわね……それでは先に休ませてもらいます」


「ああ。明日も頼む」


「何かあったら起こしてもらっていいですからね?」


 そして、妻とアレックスが謁見の間を後にする。


「さてと……」


 私は被害の報告、避難民の状況の確認に入るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王都付近の森」シュナイダー視点―


「上手くいってないようだが?」


「ははっ!夜の闇に紛れて襲うつもりでしたが……どういう訳かあちらにはこちらの動きが見えているようです」


「どういうことだ?」


「光源も無い真っ暗な闇からあいつらは攻撃を正確に当てています」


 本の少しの光源しか用意していない暗い森の中でアクヌム様が考え始める。私自身も始めは牽制。夜の奇襲を本番というつもりだったのだが……。


「シュナイダー?アイツらかなり遠距離から攻撃をしテルがそっちは脅威じゃないのカ?」


「ほほう?そんなに脅威になるような攻撃だったのか?」


「城からカなり遠い場所から投擲しテた奴ラが頭に穴を空けて死んでいたのデ」


「ふーーん。それでどうするつもりだ?」


「私も前に出ます。ちょうど用意していた弾が来るので」


「ふははは!!お前もなかなか恐ろしい奴だな!あれを弾とはな!」


「すでに私は人を越えた存在。あなた様の眷属なのですから」


「そうかそうか!今回の件で功績を上げたなら魔王様に進言してやる。心してやれ!」


「はは!」


 私は立ち上がり、明日の準備をするためにその場を後にしてテントの方へと向かう。私は自分の太く黒く美しい手を見て握ったり開いたりする。ふと、巨石が目に入ったのでそれに向けて思いっきりぶん殴る。


ドゴーーン!!


 近くにあった巨石を全力で殴ると割れて崩れていった。実に愉快……。


「ふふふ……」


「調子がいいナ」


「ああ……」


 人とは何て不便な生き物だったのだろう。単体だけでは何よりも弱く脆い存在……。魔族の眷属になればこれほどの甘美な力を楽に得られるというのに。


「さあ……やるぞ?」


「ケケケケーー!!」


 蝙蝠の羽を羽ばたかせキクルスが笑う。私も片方だけ裂けた口で満面の笑みを浮かべるのだった。

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