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166話 各々の戦場

前回のあらすじ「ハ〇クの軍勢」

―「ビシャータテア王国・王宮 庭」―


「こちらへ!」


「押さないで下さい!ゆっくり前へ!」


 開戦からおよそ一時間後。相手がそこら辺の物を投げ道具にしてるということで城壁近くの市民たちがこの庭へと避難してきた。


「大丈夫かな……」


「しばらくはこのままだと思うよ」


「何故ッス?」


「攻城戦の基本はいかに相手を弱らせるかだからね。あっちはあらゆる物を弾にして投げてきてじわじわと弱らせる気なんだと思う」


「それだとかなり不味くないかな?」


「そうだね……」


 小石とかを投げれば、落とせずに城内落ちてくるだろうし。そこそこ大きい石なら致命傷になりかねない。特に最前線の騎士たちは危険だ。


「あれ?」


「どうしたのレイス?」


「そういえばソフィアさんが連れて来た軍人さん達が見当たらないのです」


「そういえば……」


「か、薫さ~ん!」


 スメルツさんたちが手を振ってこちらへとやってきた。


「二人共どうしてここに?」


「ケガした騎士や冒険者はここに連れて治療するからな、こちらに来たって訳だ」


「ということで。よ、よろしくお願いします!」


「こちらこそ。お腹が空いたら僕たちに言ってね」


「あ、ありがとうございます!そ、それでなんですけど……さ、さっき軍人が見当たらないとか言ってませんでしたか?」


「うん。さっきまでいたと思ったんだけど……」


「それなら城壁に行ったぞ。何か荷物を持っていたが」


「ああ……なるほど」


「分かったの?」


「うん。アレを生で見れるとは思わなかったよ。あれは有効範囲広いからな……ダメージを負わせられるかは疑問だけど」


「「「「あれ?」」」」


 まあ、ダメージを与えられなくても相手に混乱を与えるには十分だろう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・城壁 南側」シーエ視点―


「すぐに砲撃の準備を!」


「はい!」


 相手は投げた後、後ろにすぐに戻り再び投げてを繰り返す。その投げられた数は多く、幾つかは城内に落ちていった物もある。遠距離から攻撃をして相手を倒したいが、相手は筋肉で全身が守られているので手段も限られてしまう。


「シーエ隊長!」


「どうかしましたか!」


「彼らが手伝うと……」


 報告に来た騎士の後ろには二人の軍人の姿が。


「手伝うぞ!」


「助かりますが……距離が離れてますよ?」


 一人の兵が城壁の影から外を覗く。


「この距離ならいけるな。いいか?」


「え、ええ」


 私が許可を出すと一人の兵士が荷物を下ろして何かを組み立て始める。先ほど許可を求めた軍人も変な道具を取り出してそこから城壁の外を見ている。


「いけるよな?」


「この距離なら」


 一人がミリーが持ってきた銃に似たそれでいて先端が長い銃を城壁の外に出して敵に向ける。そして……轟音が鳴り響く。その音は周囲の騎士がそちらへと目を向けてしまうほどだった。


「どうですか?」


「命中だ」


 私はそれを聞いて双眼鏡を使って、彼らが見ている方向へと向ける。すると、確かに地面に横たわる化け物の姿が。


「流石に頭を徹甲弾で撃ち抜かれては筋肉も意味が無いな」


「想定した範囲で良かったですね……本部にはいい報告が出来そうですね」


「ああ……次はあそこで先ほどから動かない奴がいるな。そいつがいい的だ」


「ラジャー!」


 そして、また銃の位置を変えて発射させる。よし!と言ってる所からしてまた当たったのだろう。


「……すげぇ」


「ありがたいですね……」


 敵なら恐怖しかないが今回は味方だ。これほどありがたい味方は無いだろう。


「砲撃準備完了!」


「撃て!」


 今度はこちらの砲弾が放たれ、相手が集まってる場所に直撃する。直撃した相手は倒れて、それ以外にも多少なりのダメージを与えられたようだ。


「ヒュー♪やるね!」


「これが魔法の兵器か……こちらも負けてられないな」


「ええ!次いきます!」


 これなら思ったより早く制圧できるかもしれないと思い始める。しかしこの後……彼らの次の一手に恐怖、そして怒りを覚えるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「ビシャータテア王国・城門 西側」カシー視点― 


「次!いくわよ!」


「……了解」


「薫が言ってた重火器とは強力だな。魔法と比較しても負けていない」


「そうね。これを防衛に取り入れられないかしら?」


「お勧めしないですよ……この使ってる弾ってかなり高価なんで無駄遣いできないですから」


「いいじゃないの。弾代はこっちもっちなんだから……」


「それはそうですけど」


 ミリーと自衛隊の二人が会話をしつつ敵を屠っていく。何でも即席で観測手、狙撃手のペアとして組んだとのこと。観測手の方も銃を扱えるとの事だが、自分が銃を使ってしまうと後々が面倒になる。とのことで特殊な道具を使って観測手としてミリーのサポートをしている。


「しかし……徹甲弾を使ってやっと仕留められるって……」


「急所を狙えば、普通の弾でもダメージを与えられるかもしれないけど?」


「そんな高レベルな狙撃術を求めないでくれ。これを警察官だけで止めるなんて無理な話だ」


「他の国だと軍用ライフルで何発も撃って仕留めたくらいだったわね」


 話をしながらミリーが引き金を引いた。すさまじい音を立ててまた一人倒す。


「日本に現れた奴を最初に相手したのが妖狸で良かったな……」


「被害が最小限だったもんね……」


 二人が喋りつつ自衛隊の隊員の指示を聞きながらミリーが位置を変えながら撃っていく。


「カシー様!一体がこちらに向かってます!」


 騎士の報告を受けて、そちらを見ると砲弾に魔法、そして銃弾を潜り抜けて近づいてきた奴が。


「ワブー?」


「ああ」


 私はそいつに向かって、杖を向け、さらにグリモアの効果を加える。


「ディピロ・エクスプロージョン!」


 杖の先端から小さい赤い球が黒い靄をまといながら相手に向かっていく。


ドッッーン!!


 球は当たった瞬間に重々しい音を発生させて爆発。爆発の威力に耐えきれなかったらしく、相手はその場で仰向けになり、右腕が吹き飛んでいた。


「今のは?」


「ディピロ・エクスプロージョン。当たった瞬間に爆発を二回連続で起こす魔法よ。オクタと違ってあの球一つで2回爆発だから威力が違うわ」


 エクスプロージョンの強化版であるディピロ・エクスプロージョン。最初の爆発の衝撃に、すぐさま次の爆発の衝撃を加える事で、爆発の威力を増加させる仕組みである。


 オクタ・エクスプロージョンを見た直哉から、あれだとただの8回連続爆発だから、こうした方が威力が上がるのではないか?と言われていたのでグリモアが出来た直後に実験と試行錯誤を繰り返していたが……今回のこれが初お披露目となった。


「まあまあかしら?」


「初戦にしては完璧だろう。それより影響は?」


「まだまだいけそうよ。ただ、疲労感が普通のエクスプロージョンと違うわね。こっちの方が強いわ」


「グリモアの改良が必要か……」


「もしくは武器かしらね。黒の魔石を魔法使いの武器に混ぜられれば完璧なんだけど」


「それは失敗だったな。使用されずに釜に残っていたしな」


「諦めないわよ?もしかしたら武器を強化すれば……」


「かもしれないな」


 魔法使いの武器の可能性を考えつつ構想をワブーと考えていく。


「……魔法って便利ですね」


「ですね……というより」


「ちゃんと注意を向けてるわよ?仕事はしっかりするから安心しなさい」


「賢者と言われる俺達を舐めなるなよ?」


 心配する二人に問題ない事を伝えながら相手の動きに、私達は注意するのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「ビシャータテア王国・城壁 東側」カーター視点―


「撃て!!」


 俺の合図と共に砲弾が一斉に放たれる。その際に当たらなかった。またはケガが浅い奴が突撃してくる。


「砲撃に続け!!」


 そして、魔石使いが各々が持つ魔石を使って攻撃を放つ。また、弓矢の攻撃も加わる。しかし弓矢のダメージは低い。


「弓矢は意味が無いか」


「そうね……弓矢部隊は攻撃中止よ!指示通り砲撃部隊と支援部隊に分かれなさい!」


 サキが指示を出して、それに従い騎士達が持ち場を変えていく。


「銃撃の支援もあるが……やっぱりここは俺達がしっかりしないとな」


「そうね……」


「サキも思うか?」


 神妙な面持ちのサキに訊く。


「それって攻撃がぬるいって事?」


「ああ」


 あっちの攻撃は手当たり次第に物を投げてくるという手段だ。それ自体は厄介だし、ちょっとした石でも大ケガにもなる。あくまでこっちにプロテクションの魔石が無ければだが。


「騎士団にはプロテクションの魔石を全員に配備している。当たって大怪我した者もいるが死人は出ていない。その一方であちらは既に死人が何人も出ている」


「この前と同じね」


「ああ……何かあると思えるな」


 薄気味悪いこの侵攻に俺達は注意せざるを得ないのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王宮 庭」―


「……そうえいば泉?」


「うん?」


「クロノスに行く前にカーターに何か渡していたみたいだけど何を作ったの?」


「あ~あれね……」


「手袋ッスよ」


「手袋?」


「うん。鎧の下に着ても違和感が無い腕を覆える手袋……というよりアームカバーかな。新技に必要なんだって」


「新技?」


「うん。詳しくは聞かなかったけどね」


「そうなんだ……」


 腕を覆えるアームカバー……まさか…ね?


「薫!」


 話をしているとユノがこちらにやってきた。


「お手伝いしますわ!」


「お姫様なのにいいの?」


「すでにお城のコックにメイド全員が手伝いに回っているのですが……人手が足りないとのことでしたので、それに皆さんを見ているとかなり忙しそうですし……」


 ユノの言う通りで、確かに余裕が無い。僕たちも時たまこうやって話をしているが基本は黙々と料理に専念している。


「それにここにいた方が安全ですから」


「だな」


 今度はユノの後ろから王様が来た。


「魔法使い二人の近くにいる。これほど安全地帯は無いだろう」


「王様……お疲れ様です」


「うッス!」


「相変わらず緩いな」


「あ。キャラ統一したんですか」


「キャラと言うな。なるべく親しみやすいドルグの口癖を真似ていただけだ」


「下手ですよね……お父様の演技」


「……なのです」


「ぐふっ!」


 二人の言葉に王様の心がダメージを喰らっている。


「……まあいい。我とアレックスは各所の報告を聞いて指示をしないといけないのでな。ユノを頼む」


「そういえば王女様は?」


「恐らく……砲弾を撃ってるんじゃないか?」


「「「「へ?」」」」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・城壁 東」カーター視点―


「照準よし!放ちなさい!」


ドーーン!!!!


 王女様の指示を受けて角度を調整した砲撃は多くの敵を捉えて当たる。


「流石、元騎士団隊長……」


「あの人のためにも頑張らないとね♪次!行くわよ!!」

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