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158話 管理者決め

前回のあらすじ「特技兵という名のお偉いさん」

―「魔導研究所クロノス・休憩室」―


「お疲れ様ユノ。こっちに泊まり込みで仕事してるけど大丈夫?」


ユノはアリッシュから一度帰ってきた後、王都で必要な物を用意して再びアリッシュに戻り事件の後始末などをしていた。ちなみに施設内を通らないといけないので僕が付き添いで送り迎えした。


「いいえ。こちらとしては王家の仕事をしてるだけですから」


「でも、良く分かったね?今、ここにいるって?」


「領主の家には王都とすぐに連絡できるように通信の出来る魔道具が置いてあるので……それでこの方は?」


「内閣情報調査室の官邸直属の情報機関に勤めてます田部です。菱川総理の部下と思って頂ければ」


「ユノ・ホワイト・クレーンです。ビシャータテア王国、サルディア・ホワイト・クレーンの娘。そして薫の婚約者です」


「菱川総理から話を伺っています。薫さんもいい婚約者をお持ちですね」


「自分にはもったいないくらいですけど」


「お二人がウェディングドレスを着て結婚している風景が思い描けますよ」


「いや!?僕、男!!何を言ってるんですか!!」


「すまない。そこの田部殿と同じように何故か俺も思い浮かんだ」


「私もです」


 全員が……ユノも何とセラさんも一緒に頷いている。いや、婚約者がそんな格好でいいんですか?


「それで話を戻しますが」


「戻さないで!!」


「それでこの施設の管理者ですが薫さんでいいのでは?」


「「「「異議なし!」」」」


「僕の意見は!?」


「泉さんには荷が重いでしょうし……ただ管理者の一人として登録して欲しいとは思っています」


「完全無視!?その前にグージャンパマの各国の代表に訊かなくていいの?」


「あ。それはお父様が済ませてます」


「え?」


「まずこちらの代表の意見としては、この前施設の管理者の一人であるアンジェさんの子孫である薫達に管理者になって欲しいとのことです」


「アレックス王がお認めなら、俺自身も異議なしだな」


「私もです。大統領、それとミリーさん伝手でアリーシャ女王からも了解を得てます」


「菱川総理から了承を得ています……当然、異議なしです」


「うちらもッス!」


「私もお母様がおっしゃるなら問題無いのです」


 僕と泉以外はその意見に賛成する。準備のいい皆にビックリしながら僕と泉は顔を見合わせる。


「どうするの薫兄?」


「はあ~~…………色々、言いたいことがあるけど僕も異議なし。というより登録済みだから今さら…ね」


 溜息を吐きつつ僕は答える。そもそも既にここの所長に任命済みなのだ。断るというのは無理だろう。


「うーん……それなら私もいいよ。でも、私でいいの?他に直哉さんとか明菜おばさんとかもアリじゃないの?」


「確かに。その二人は十分に施設の代表になる理由、それと中立という立場から考えれば悪くありません。ただ、お二人は魔法使いでは無いので現実世界とグージャンパマの行き来きが自由に出来ないので何かあった時の対応が出来ないので却下となります。それに泉さんにはぜひここの代表になってください。そうなれば肩書が出来ますから」


「薫兄みたいな勇者とか?」


「止めて……それ言われると恥ずかしいんだから」


「薫さんのそれも肩書としてはアリなのかもしれないんですが、やはり現実世界だとどこかの施設の代表の方が勇者とか魔導士より伝わるので……」


「ああ……」


 確かに僕と泉の肩書は非常に弱い。僕の肩書は勇者、小説家、始めて異世界と交流した人。泉なら魔導士、ファッションデザイナーとかで、お偉いさんや世界を裏で牛耳る人たちに紹介するときに非常に困るのだろう。


「説明するときのVIPの反応が……ええ」


「VIP……ここで世界を牛耳る方々の呼び名がそうなっているとは……」


「まあ、教えても大丈夫ですから。それに、ポーションを買ってこい!とか、アダマンタイトを交渉してこい!とか最近、無茶難題が多くて……あ、大統領も同じです」


「ああ……こちらも同じですね。総理よりも他の協力者とかがうるさいみたいで……」


「そこにヘルメスの息がかかっている人たちいないですよね?」


「「それはないです」」


 ふと気になって尋ねてみると、ソフィアさんと田部さんの二人が揃って断言する。そこまではっきり答えるとは。


「そこまで断言できるんですか?」


「ここでは言えないような調査もしてますから。だから繋がりが無いのは確実ですよ」


「そこまで?」


「具体的に言いましょうか?それをネタに小説を書いたら確実に消されますけど」


 田部さんも首をゆっくりと振っている。


「止めときます!知ったら死ぬなんて嫌ですから!」


「まあ、落ち着いてださい。という訳で表沙汰にできないような事をしてまでチェックしてるので問題無いですよ。ちなみに私も受けてますので」


 田部さんがニッコリと笑顔を浮かべている。ただし目は笑っていない。どんな調査を受けたのだろう……気になるがこれ以上は言及は……。


「もしかして、僕たちも調査済み?」


「「……」」


 二人が黙ってこちらから目を逸らす。まあ、そうですよね。調査済みですよね……この反応だと笹木クリエイティブカンパニーの社員やひだまりの全員も調べてるとみて間違いないだろう。


「他の人には黙っておきます。泉もいいよね?」


「うん。知らない方が幸せってこういう事なのね……」


 この件にはこれ以上、突っ込まない方が僕たちにとって幸せなのだろう……きっと……。


「話が脱線したので、またまた戻しますね。それでお二人共よろしいですか?」


 僕たちは頷いて同意をしめす。


「セラさんいいかな?」


「問題ありません。現所長である薫様が許可を出したということで登録させて頂きます。念のために序列として薫様を1番、泉様を2番にさせて頂きますね」


「分かりました」


「それでは……」


 全員が拍手して祝ってくれる。僕と泉からして喜んでいいものかどうか困るのだが。


「それでは……セラさん。この施設に残っている情報を開示してもらっていいですか?」


「分かりました。ただ……情報が消されているので情報量は少ないですが……」


「それでも大丈夫です」


「分かりました。それでは情報を開示します」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


 あの後、こちらが知りたい情報を話してセラさんに開示してもらうという方法で情報を聞いている。それを田部さんやソフィアさんは現実世界から持ってきたパソコンに入力したり、自分はいつもの手帳に記入したりする。


「おかしいね?まさかコーラル帝国とユグラシル連邦の名前はあるのにその歴史自体がないって」


「一方では魔法の研究内容は大分残ってますね……しかも」


「禁止事項である異世界の門(ニューゲート)の情報がたっぷりある。セラさんの見立てならすでに利用している物を解析に回し、幾つかの実験をすればあちらとのゲートを簡単に作りだせるようになるかもとは……」


「はい」


「出来れば、笹木クリエイティブカンパニー、首相官邸、ホワイトハウスの3つは必要かな?」


「最低でもですね。ただ重要施設である首相官邸に直に置くのはちょっとまずいかと」


「まあ、そこは専門家達と交えてから考えましょう。それよりほかに有益そうな情報は……」


「魔法に魔石……それに月の雫(ムーンティア)の大量生産方法。これがあればガソリン代わりに使えそうね」


「直哉が大喜びするよ。それと飛空艇の開発も大幅に進むよ」


「飛空艇?それも無いんですか?」


 セラさんが僕の言葉に反応して聞いてくる。


「昔は多くあったんですか?」


「えーと……少々お待ちください」


 セラさんがディスプレイを開いて何かを見ている。


「あ、ありました。ここで4隻程作られてました。ただ、それ以外の記録は残ってません」


「どうして記録が残ってないんだ?」


「そこですが……ここは一度完全に破棄されてます。それをアンジェ様が再起動し今に至ってます。さらに異世界の門(ニューゲート)の情報を詳しく解析した結果、ここにあった物ではなくマクベスから情報開示、それを厳重にロックをかけて保存をアンジェ様がされている形跡があります」


「もしかして、ここに残っている全ての情報ってお婆ちゃんが残した物なんじゃ……」


「泉様の言う可能性がありますね。直ぐに解析します」


 セラさんがまたディスプレイを解析しいく。


「解析完了。泉様の言う通りでした。この施設内にあった情報は全て消されています。その後、アンジェ様が情報を再度こちらに保存しています……?これは?」


「どうしたんですか?」


「恐らくですが大分、大急ぎで作業されてますね……保存のログを確認すると記録自体の保存間隔がそんなに空いていないんです。多分、これだと寝ずに2日間でしょうか」


「何かあったのかな?」


「恐らくはあったのです。じゃなければこんな大急ぎでしないと思うのです」


「その何かって何なんッスかね……?」


「すまない。ログって何だ?」


 領主様が恐る恐る手を上げている。


「記録の意味です。というより、これ翻訳されてないのかな?」


 領主様も含めたここにいる全員がアイ・コンタクトにセシャトの両方を装備している。それなのに理解に差が出ているとは……。


「翻訳の魔法は知識が無いと翻訳されない時もありますよ?まあ、基準がかなり曖昧ですが」


「なるほど」


「そういえば魔法もそんな感じか……イメージしなければ形にならないし」


「確かにそうッスね」


「はい。その通りですね。あの……そういえば……」


 セラさんがレイスとフィーロを見ている。


「どうかしましたか?」


「この子達は?」


「精霊ですよ」


「精霊?あちらにはそんな種族がいるんですね」


「え?うちらはこっちの種族ッスよ?」


「え?そんな種族はいなかったような……」


 セラさんから思いがけない言葉が出て来る。


「すみません。気のせいですね。恐らくそこの情報が無いだけでしょうし……」


「やっぱり修理が優先かな」


「お願いします。もしかしたら記憶体にも破損している可能性もあるので」


 この後、それ以上に有益な情報は得られなかったのでここでの話し合いを終わりにして、直哉たちの所へと戻るのだった。


「薫……今のセラさんの言葉」


「まだ分からないよ。とりあえずやれることをやっていこう」


「はい」


 そう、僕とレイスに一抹の不安を残して。

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