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155話 クロノス内部へ

前回のあらすじ「色々、説明中……」

―「魔導研究所クロノス・内部」―


 内部に入った僕らはホテルのようなエントランスを抜けて奥の通路へと歩いていく。通路の左右にはいくつもの部屋があり、アニメの秘密基地のような鉄の扉が付いている。


「これはすごいですね……これは金属ですか?」


「はい。特殊な合金にて作られています」


「まるで戦艦ね……まあ、通路が広々としているから軍事施設としては向いていないけど」


「それより内部が結構ぼろぼろだね。もしかして2000年の間、手付かずのまま?」


 金属で出来た壁や床は長年の年月によってひび割れていたり錆びていた。また先ほどのエントランスに置いてあった机や椅子もボロボロで使い物にならなくなっていた。


「その通りです薫様。この施設は放棄されてから数十年前にアンジェ様が来るまで停止していました」


「薫様のおばあさまはここに来ていた……セラ様。アンジェ様はここで何をされていたんですか?」


「この私の復旧、それとメッセージを残しただけとなっています。私のシステムが復旧される前だと分かりませんが……それと、謎の言語……薫様が使われている言語が登録されていますね」


「しすてむ?ふっきゅう?」


「えーと。シーエさんたちに簡単に言うと眠っていたセラさんを起こしたような感じかな。ユノは何となくだけど泉の所で把握してるよね?」


「はい。大丈夫です」


 パソコンやゲーム機をあまり見たことの無いシーエさんたちには分かりにくい会話かもしれないな。そう思いながらセラさんを見ると不思議そうな表情を浮かべている。


「薫様?まるでこの世界は私のような物が珍しいように聞こえるのですが?」


「多分、文明が一度崩壊、または極度な衰退を起こしているみたいなんだ。君のような存在は僕も初めてだよ。その原因をセラは知らないかな?」


「……覚えている範囲ではコーラル帝国とユグラシル連邦との戦争が原因かと」


「ここはコーラル帝国の領地だったんだよね」


「はい。もしかしてっここを統治する国は変わっているんですか?」


「今はビシャータテア王国。そしてここはさらにアリッシュ領に属しているよ。それでこのアリッシュ領の領主様がこの方だよ」


 僕はセラさんに領主を紹介する。


「もしかしたら、今後、領主様と会う機会があると思うからお願いね」


「かしこまりました。あ、それでここの階段を下に下ります」


 通路の脇にあった階段。セラを映し出すお掃除ロボットのような機械はそのまま下りていく。


「ホバークラフトみたいな技術かしら」


「もしくは重力操作かもね」


「オルデ女王が乗っている椅子にも似てませんか?」


「確かになのです……」


 そんな話をしながら階段を僕らも下りていく。そして地下の通路に出て、セラの案内の元、一番奥の両開きの部屋までと辿り着く。


「ここです」


「ここには何が?」


「君というメインコンピューターがある部屋かな?」


「その通りです」


 扉が自動に開くと、そこには大型ディスプレイに複数の同型の機械らしき物が置いてあった。


「まるで電車の運転指令所みたいだね」


「私はこれからロケットでも打ち上げるかと思ったわ」


 ミリーさん以外の人が首を傾げてる。説明しようにも難しいのでスルーしておく。すると正面の大型ディスプレイが映し出されて、どこかの見取り図が出て来る。


「この建物の見取り図?」


「その通りです。ここは地上3階、地下1階の建物。また、連絡通路で大型の実験場とポータル場がありますよ」


「え?ポータル場!?それってどこに繋がってるの?」


「残念ですが繋がっておりません。唯一アンジェ様が帰る際に使ったポータルしかありません」


「それって異世界の門(ニューゲート)?」


「それは禁止事項です!ここにあるのはグージャンパマ内を移動できる物ですよ!……まさか」


「僕とミリーさんは異世界の門(ニューゲート)を通ってこちらにやってきてるよ。もしかしてかなりヤバイ?」


「本来は厳罰対象の重罪なのですが……」


「統括機関マクベスの返答が無いから何とも言えない?」


「ええ。ただつい先ほどアダマスから送った時は何故か送れたみたいで……返信後にすぐに通信が切られてしまいました」


「その内容がここの所長への着任指示ってことか」


「はい。アンジェ様も同じ内容になります。そして研究内容も薫様に一任すると……もしかしたら私を再起動する前に何かやりとりがあったのかもしれません」


「色々気になるけど……とりあえずこの施設の問題って老朽化による弊害かな?」


「その通りです。今、ディスプレイに赤く光る所の配電関係に損傷があります。また動力炉にも異変があって予備電源で動かしています」


「それって魔石から電気を生み出している感じ?」


「はい。薫様のおっしゃる通りですよ」


「セラ自身は修理できないの?」


「指示は出来ます。ただ修理は不可能です」


「ナノマシンとかセラさんを映している機械のような物は?」


「ナノマシンは知らないですね?修理用の機械はここを放棄する際に持ち出されたようで、私を映しているこれの予備が2台と、後はこの施設の防衛システムであるアダマスだけですね」


「ナノマシンは無いのね……少し残念かも」


「ミリーさん。むしろこれ以上のハイテクは要らないですよ……」


「あなたの物になるわよ?」


「ふふ……これが現実世界に知れ渡ったら大変な事になりますよね?」


「ええ!あなたの事をとっ捕まえようとする危なっかしい組織とそれを食い止める組織の抗争でしょうね!」


 笑顔でミリーさんが言いきった!やだからね!?そんな危険な目に合うなんて!


「まあ、食い止める組織が大多数で特に何かが起きる心配は無いけどね……むしろこれらを巡って新たな世界大戦が……」


「起こさせないからね!!……とりあえず、一度あっちに戻って詳しい技術者を連れて来ないといけないね。セラさんそれでいいかな?後、出来れば個々の素材を持っていきたんだけど」


「分かりました。それならこの地下施設にある保管庫にスペア用に残した物があるかもしれないのでご案内しますね」


「じゃあ。そこへ案内をお願いします。あ、それとそれが終わったらポータル場へ案内してもらえますか」


「はい。ではこちらへ」


 僕たちはメインコンピューター室を後にして、保管庫へと向かうのだった。


「薫」


「何マーバ?」


「お前ら何を話してたんだ?」


「あ……」


 ミリーさんとレイス以外の人が呆然としていたのに今さら気が付くのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―その日の夕方「ビシャータテア王国・カーター宅」カーター視点―


「送ってもらってありがとうございますカーターさん」


「何を言ってるんだ。ここは俺の家だぞ?帰り道を一緒に歩いてきただけだよ」


「それにしても視察って早く終わるんッスね」


「一回戻ってきただけよ、明後日にもう一度、アレックス様と一緒に他の町を視察しないと。今日は一度家に戻って準備と休憩よ」


「大変ですね」


 そう言って、泉が俺の顔を覗いてくる。その仕草に少しだけ心臓が脈を強く打った。


「まあ、これが仕事だからな。それに長丁場になるユノ様の方が大変だ」


「薫兄に誘われたんですけど……どんな内容だったんですか?」


「鉄の密売が行われている可能性があるということで、領主の素行調査、もし問題があれば捕らえる算段だ」


「え?かなり危険……あ。だから薫兄が一緒なのか」


「それにシーエ達も召喚魔法が使えるようになったからな。戦力で考えれば過剰戦力かもしれないな」


 そう言って俺は笑い出す。しかし泉たちの表情が優れない。


「どうしたんだ?何か問題でもあったのか?」


「いや……薫兄達の新魔法の犠牲者が哀れだなと思って……」


「何その魔法?どんな危険な魔法を用意したの?」


「土属性の魔法で作ったセイレーンの触手みたいな物?」


「そういえばこの前、クラックウルフの群れ30匹をそれで討伐したって話してたッスね」


「……」


 過剰戦力という表現では生ぬるいということか……。


「カーター!ちょうどよかった」


 庭の門の方を見るとそこには王様とカシー達が走ってやってきた。


「どうしたんですか!そんなに慌てて!」


「ベルトリア城壁で捕らえたシュナイダーと精霊のキクルスが逃亡したようだ」


「何ですって!」


「今も領主が捜索をしているのだが……見つかっていないようだ。ただビシャータテア王国に対して報復をするかもしれない。とにかく警備を厳重に頼む」


「分かりました」


「後、薫にも連絡を……」


「坊ちゃま!!」


 呼ばれて振り返ると今度は執事がこちらへ走ってくる。


「どうした!まさか……」


 すでにあのアンコウエルフが!?


「薫様が来られました!!」


「……うん?」


「ああ。すいません。あまりにも驚いて……コホン」


 執事が一度、呼吸を整えていつもの雰囲気で話を続ける。


「薫様が転移魔法陣を使って、我が家の地下室に来られました」


「地下室?そんなのは……」


「あ!カーター!って皆勢ぞろい?」


 すると屋敷の方からアリッシュ領に行った薫達が全員……いや、アリッシュ領の領主もいるぞ?いや……その前に確認するべきことが。


「薫。何でお前、女装を?」


「カーター聞かないで……って泉。写真を撮らない!」


「大丈夫……動画を撮ってるから」


「余計に立ち悪い!」


「似合ってるッスね。これなら勇者と疑われなかったッスね。きっと」


 なるほど。今回の視察の為の変装という訳か。これなら美女の一般市民にしか見えないだろう。


「ユノ!どうしてお前も!?」


「お父様……薫。報告を!」


「あ、うん」


 薫が色々戸惑いつつ、報告を述べる。


「アリッシュ領での視察完了しました!その際に鉄の密売に関わった者達の捕縛……」


「そうかごくろ……」


「それと、ララノア神が使用していたと思われる魔導研究所クロノスの発見と所長への就任……」


「……うん?」


「それとアダマンタイトとの回収、および製造方法を入手しました!!」


「「「「……??」」」」


 今なんて言った?密売人を捕まえて?ララノア神が使用していた研究所?就任?それにアダマンタイトの回収?


「「「「どうしてそうなるの!!」」」」


「……どうしてでしょう?」


 シュナイダー達の逃亡なんてちっぽけで些細な事に思えてしまうほどの収穫を得るなんて……。


「流石、薫兄……ブレないね!」


「もう……いいや……」


 王様はあきれ果てた様子で手で頭を抑えるのだった。


―クエスト「鉱山の町にはびこる闇を暴け!!」クリア!―

報酬:魔導研究所クロノス(内部の素材、研究資料を含む)、魔導兵器アダマス。なお、クロノス内部は長年の放置でかなりひどい経年劣化をしてるので修復をしましょう。

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