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14話 ぶらり異世界の旅

前回のあらすじ「年齢詐称」

―「薫宅・玄関」泉視点―


 私の名前は多々良 泉。30歳にして魔法使いみたいになった薫兄と一緒になんと、今日、異世界に行くことになりました!! やったぜ!! と、いうことで朝早く薫兄の家に来ています。


「おまたせ!!」


「おはよう。って何か荷物多くない?」


 といいながら、薫兄の荷物もなかなか多い気が……ジャガイモに人参に玉ねぎが見えるけど。自分だってたくさんの食材を持っていく気じゃん。この前カレーの話が会ったからあっちでも料理しようとするなんて相変わらずだけど女子力が高い。料理にスイーツ作り、裁縫も出来るし……。近場のコンビニに行くにしても身だしなみを整えるし、肌も綺麗だし……。今も少し男性っぽい格好している綺麗な女性にしか見えないんだよね。


「それ一緒に収納するよ」


「ありがとう!!」


「収納」


 私の持ってきた荷物と一緒にそれらが消える。正しくは薫兄が着けてるアイテムボックスに入っただけなんだけど。


「便利だね。それ」


「まあ人前では使えないけどね」


 まあ、急に物が消えたらびっくりされるよね。きっと。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それからすぐ「薫宅・蔵」泉視点―


「へえー。蔵の中に魔法陣があるとは……知らなかった」


 蔵の前に移動すると棚や道具が蔵の隅っこに置かれていた。そして蔵の中央にはゲームで見るような魔法陣がある。


「僕もだよ。これが大昔じゃなくてそこそこ最近っていうのが謎なんだよね」


「何で分かるの?」


「床がコンクリートだから。小説のネタで調べた事があるんだけど、日本での一般への普及は戦後ぐらいらしいよ」


「カーターさんの曾祖父はもっと前に来てるんだっけ?」


「話からすると恐らく戦前で間違いないと思う。あっちに行った時に腕時計で確認したけど、あっちの時間とこっちの時間の進み方は一緒だったから」


「そうしたら、おじいちゃんかおばあちゃんから何か聞いていないの?」


「僕は何も。昌姉も聞いてないし、両親ならと思って魔法陣って事は伏せて、2人には蔵に変な模様があるんだけどって言って確認したけど何も聞いてないだって」


「ふーん」


 こんな物が蔵にあるから誰かが何か知っていてよさそうな気がするんだけど。そんなことを考えながらカーターさん達を待つ。また会えると思うと楽しみで昨日はあまり眠れなかった。鞄からスマホを出す。画面にはカーターさんとツーショットで撮った写真。前回、帰る前に思いきって頼んで撮らせてもらったのだ。思わず顔に笑みを浮かばせる。それから少しして魔法陣が光だしたのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「薫宅・蔵」―


「おはー!!」


 サキが手を挙げて挨拶をする。


「おはー!!」


 泉もノリで同じように挨拶をする。


「おはよう」


「おはよう。すまない少し待たせたか?」


「全然。2人で喋りながら待っていたから」


 ちなみにあちらの世界は時計が普及していなくて時計塔の鐘の音で時間を知るとのことだった。ついでに異世界の1年は365日で閏年もある。まあ流石に月日の数え方は違っていて、ひと月36日と37日の繰り返しで10月までだそうだ。


「では早速行くけど、準備は大丈夫か?」


「「大丈夫だ。問題ない」」


 泉とハモる。つい、大丈夫か。と言われて答えてしまった。


「分かった?……よし!じゃあいくぞ。」


 ここは、それフラグだぞ。ってツッコミが欲しかったが…まあしょうがない。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「カーター邸宅・庭」―


 光が収まると前回の石造りの部屋ではなく、あっちと変わらない寒空の下で良く手入れされている花々が見える。上を見ると石造りの屋根があり全体を見た感じ西洋の庭園を彷彿させる。


「前回とは違う場所だね」


「あの後、こっちに魔法陣を移したからな。ここは俺の家だし俺の目が届きやすい。ほらあそこが俺の家だ」


 指さす方向には家があるが…豪邸だな……。あれ建てるのにいくらかかるのだろうか。


「すごーい……。キレイな庭園……」


 泉が辺りを忙しなく眺める。この庭の綺麗さに言葉が出ないようだ。僕も再度辺りを見渡してこの庭園の綺麗さに驚く。様々な色の花が混ざり合うことなく各面ごとに色が分かれていて赤、黄色、青に紫などがある。よく見ると色が違うだけで同じ花みたいだ。異世界の花を堪能していると屋敷から執事服らしき物を着た初老の男性が歩いてくる。


「お帰りなさいませ。ぼっちゃま」


「ただいま。爺」


「お邪魔します」


「お、お邪魔しています」


「異世界の方々ですね。私の名はローリンと申します。リーブル家に仕える執事でございます。どうかお見知りおきを」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「爺。俺はこれから城に二人を連れていくから留守を頼む」


「かしこまりました。どうかお気をつけていってらっしゃいませ。それとお二人にはこれをどうぞ」


 そう言って、執事さんは僕たちにくるまった紙を渡す。僕たちはそれを開くとどこかの地図みたいだった。


「このビシャータテア王国の王都の地図になります。事前に話を聞いていたので準備させていただきました。街の把握に役立つと思いますのでどうぞお使い下さい」


「うわー!! ありがとうございます!!」


―アイテム「ビシャータテア王国の地図」を手に入れた!―

効果:王都の全体図が分かります。細かいところは歩いたり聞いたりして自分で書き足しましょう。


「流石、爺だな」


「薫達を案内するのに丁度いいわね。ローリンありがとう!」


「お褒めの言葉、大変恐縮です。それでは皆様いってらっしゃいませ」


 地図をもらった僕と泉は執事さんにお礼を言い、カーターの案内で門に向かう。


「馬車で城まで案内しようと思ったんだが、街の様子をゆっくり見たいと思って歩きで向かおうと思うんだがそれでいいか?」


「大丈夫だよ」


「私も」


 小説家である僕からしたらありがたい話だ……というより。


「王様の都合は大丈夫なの?」


 国王様って忙しいんじゃないの? どこぞのゲームの王様みたいに玉座に座りっぱなしで同じ事しか言わないっていう訳じゃないだろうし。


「ああ。執務はあるらしいが問題ないとのことだ。来たら直ぐに面会しよう。って言ってたしな」


「カーターさんの言い方だと大分王様ってフレンドリーというか気さくというか……」


「ええ。余り緊張しなくて大丈夫よ。時々街に出て散策してるぐらいだし」


「王様なのに?」


「威厳を纏うより国民に寄り添い親しみを感じられる王がいい。っていうのがこの国の王の考えだ。まあ、護衛は付くけどな」


「へぇー」


「そういうことだ」


 屋敷の門が目の前に迫った所で、不意に門の横から人が出てくる。厳つい顔に白い髭、身なりは碧を基調として動くのに不便という服装ではないがしっかりとした装飾はされていてかなりいい物だろう。年は50ぐらいだが体はがっしりとしていて鍛えられてる感じだ。そして今の相槌……。


「「お、王様……」」


「へ!?」


「やっぱり。まあ今の相槌の打ち方で分かっていたけど…」


 まさか話していた本人、王様が直接お出迎えに来るなんて想像してなかった。


「どうしてここに王様が?」


「いや、異世界からの客がどんな奴か見てみたくてな。ここで待ってたんだ」


「ということでウチラが護衛にきてるぜ!!」


「マーバにシーエさん!? ……おはようございます」


「おはようございます。薫さん。それとこちらの方は……」


「多々良 泉です! よろしくお願いします!」


 新たなイケメンに出会ったことで思わず泉の声が上ずっている。


「こちらこそよろしくお願いします。異なる世界で分からないことがあれば、どうぞお気軽にお聞き下さいね」


 そして笑顔を見せる。その笑顔を見た泉の表情は……嬉々している。アイドル、モデルとかやってると言われてもおかしくないくらいのイケメンだもんな。……とりあえず王様に挨拶しないと。心ここにあらずの泉に肘で突っつき意識が戻ってきたところで王様へ挨拶をする。


「このたびはお招きいただきありがとうございます。僕の名前は成島 薫。こちらは従妹の多々良 泉です。どうぞよろしくお願いたします」


 自己紹介をして僕と泉はお辞儀をする。


「我はビシャータ・テア王国国王サルディオ・ホワイト・クレーンだ。このように異世界の客人を迎えられることを光栄に思う。よろしく頼む」


 先ほどの口調とは違ってお堅い自己紹介をする。そして手を出すので、僕も手を出し握手をする。


「と堅い挨拶はここまでだ。早速、歩きながら色々話そうじゃねえか。お互いの親睦を深めるためにもな」


 そう言ってガハハと笑う。良かった気難しい人じゃなくて。


「しかし……」


「どうかしましたか王様?」


「いや。お前さん達から聞いてはいたが……女性と間違えるな。こりゃ」


「大丈夫です。薫兄は女といっても問題ないですから」


「いや。笑顔で肯定しないでよ泉」


 泉がスマホを取り出し、操作する。


「だってこんなに可愛いのに男なんてありえないでしょ」


 そう言って画面を皆に見せる……。って!? 僕も急いで覗くとそこには写真が!?


「うわー。薫似合いすぎだぜ」


「すまない。これは女性にしか見えない」


「そうですね」


「これが写真や連絡ができるスマホってやつか。しかしこれが男ってのは……」


「うわああああああ~!!!!」


 人の黒歴史を勝手に見せるな!! あれって当時流行った魔法少女の衣装でフリルのついたスカートを履かされたりして、すごく恥ずかしい思いしたやつ!!


「し、しょうがないわよね。こんなに可愛いもの女装したいって気持ちがあっても……。大丈夫よ薫。薫なら理解できるから」


「サキ違う! 違うから!!」


「なら、どうしてこんな格好を?」


「アルバイト……」


「アルバイトとは?」


「仕事ってこと。給料が良くて……昌姉の頼みだから……仕方がなく」


「え?ちょっと待てよ。それだけなのか。あんなに女扱いされるの嫌がってたのにか?」


「買いたいゲーム機があってこのバイトをするだけですぐに必要な金額が手に入る理由もあったことにはあったんだけど……どうしても、昌姉のお願いは断れなくて…」


「昌姉のお願いは私も断れないのよね何故か……。あの満面の笑顔で有無を言わさないオーラを出すから」


「どんな女なんだよ?」


「マーバさんだっけ? 大丈夫よ。私達と付き合えばいつかは目にする日が来ると思うから」


 マーバが目を瞑り、どんな奴だよ? と考えている一方、一度会っているカーターたちは、そうか? という感じで先日会ったことを思い出そうとしていた。


「というより何で僕がこんな醜態を晒すことになるの…」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―邸宅から歩いて数分後「ビシャータテア王国・王都商業地区メインストリート」―


 カーターの屋敷から王様たちと歩くこと数分。王都のメインストリートに出る。


「すごーい。異国感満載だね」


「こんな風に商店を出して売り買いするのは日本ではないからね」


 ヨーロッパのバザールみたいに店舗が並んでいる。並んでるのは様々な食材に花と見たことないものが並んでいる。他にも服の生地や……剣と盾。


「へぇ~。武器なんかも扱ってるんですね」


「魔獣何かもいるからな。ギルドの依頼をこなす傭兵なんかが購入するんだ」


 あれらが普通に売っているところがいかにも異世界って感じがする。


「あそこにある店は何ですか?」


 泉が指す方向には装飾品が置かれている。そこには老若男女問わず集まっていた。あれ? 装飾品に使われてるのって……。


「もしかして魔道具屋?」


「その通りよ。あんな風に売ってるものは日常生活に役立つもので、水を出したり、火を出したり色々なものがあるわ」


「武器では無いの?」


「それは危険だからな。店舗販売で厳重に扱われるし高級品にもなるぜ。しかもギルドや信用できる誰かの紹介が無いといけないしな。ちなみに薫のアイテムボックスはこれに入るぜ」


「ここで売られるのはあくまでも精霊が単独でも使用できる位の低威力ですかね」


 泉が、なるほど。と頷く。それにしても店だけではなく周りを行き交う人々を見ると多種様々な種族が行き交っている。僕が人々に目をやっていたのを見てカーターが説明してくれた。


「耳が長いのはエルフであそこのデカイ斧を持つ背の低いのがドワーフ。獣の耳や尻尾があるのは獣人だな」


「精霊も行き交っているね」


 僕の目の前を仲良くお喋りしながら通り過ぎていった。


「王都だからな。色々なやつが来て売り買いするぞ」


 活気があっていい感じの町並みだ。でもここで疑問が…。


「そういえば、戦争中だよね?」


「そういえばそう言ってたね」


 僕たちはそうカーターたちから聞いていた。戦争してて貿易もそんなに盛んではないと。と王様がその疑問に答えてくれる。


「確かにお前さんの言うとおり何だが……。だが一部の商人には戦争なんて関係なくてな。普通に貿易してるよ。戦争のため街道の整備とかはされてはいないがな」


「ああ。なるほど。道が整備されていないということは魔獣が出てくるから装備もしっかりしないといけないし、傭兵も雇わないといけない。さらに距離が長ければ道中での野宿もしないといけないから気軽に行き来が出来ないってことか。……これに盗賊なんかもいたらなおさらだね」


 説明が終わると王様がポカーン口を開けてこちらを見てくる。


「その通りなんだが……物分かり良すぎじゃあないかお前?まあ、説明が省けて助かったけどよ」


「薫兄の説明のおかげで私も理解した」


「この薫の説明が便利だと思うんだぜ」


「そうね」


 そうかな? 既に聞いている内容と先ほどの説明で何となく分かると思うんだけどな?


「流石に、街道が整備されていない。からそこまですぐにバンバン連想は出来ないと思うよ薫兄……」


「僕の心を読む泉も泉だけど?」


「そんなの表情で分かるわよ。なんせ長い付き合いなんだから」


「なあ、お前ら。異世界じゃこいつらみたいなのが普通なのか?」


「「「「特別です」」」」


「私も!?」


 ハモったよ。笑顔を見せている時点でからかい半分だと思うけど。そんな会話しててふとあることに気づく。


「ねえ? 何か周りの人がこっち見てない?」


「ああ。カーターとシーエがいるからだろ」


「あの~。王様もいるからじゃ?」


「それだけじゃなさそうですね。あきらかにお二人にも目を向ける人達もいますよ」


「あら。王様じゃないかい!」


 声のする方に顔を向けると野菜を売ってる恰幅のいいおばさんがいた。


「今日はここら辺の視察かい?」


 王様相手にかなりフレンドリーな話し方だ。


「それもそうなんだがな。町案内もしているところだ」


「そこの2人変わった服装してるねえー。もしかして噂の異世界人かい?」


「なんだ。分かってるんじゃねえか。その通りだよ」


「やっぱりかい! 初めて見た時からまさかとは思っていたけどね」


 そのまま王様はおばさんと談笑を始める。……ちょっと待って。カーターの服を引っ張り、振り向いたカーターに耳を近づかせるように指示し、小声で話しかける。


「(カーター。僕たちの事ってあんな風に話していいの? 機密とかじゃないの?)」


「(もうあっちこっちで知れ渡っている。あの戦いで薫は有名だしな。……一人で軍を黙らした女神となっている)」


「(あそこにいたの騎士だけだよね? ちゃんと情報管理しなくていいの? というか女神ってなんなの?)」


「(……)」


「(黙らないでよ)」


「(皆……認めたくないんだよ。現実を)」


「ちょっと! 後で変な誤解生むから止めてよ。というか現実を認めてよ!」


 現実を認めたくないってどういうこと!? 思わず僕の声が大きくなる。


「おい。そのぐらいにしとけお前ら。別の意味で勘違いされてるぞ」


「「へ?」」


 マーバの注意を受けて辺りを確認する。


「何あの女? カーター様と馴れ馴れしくない?」


「噂の異世界人だって。きっとカーター様をたぶらかしたに違いないわ」


「さっきあの女、現実を認めろ。って、まさかカーター様と既に……」


「コロス。コロス。コロス……」


 カーターとのひそひそ話が周囲から見ると男女のやり取りに聞こえたらしい。


「「何でだー!!!!」」


 その後、王様とおばちゃんの会話から僕が男だというのが周りに伝わり勘違いが解けるのだが、例のごとく僕の容姿のことで様々な阿鼻叫喚の声がするのだった。


「もしかしてカーター様ってそっちの趣味が……」


 ……もういいかげんにして。

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