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148話 有力情報

前回のあらすじ「ハンバーガー売りの少女」


*今年の投稿はこれが最後になります。来年、初の投稿はは元旦の金曜日でいつもの時間になります。また、2と3日のどちらかでもう一話投稿しますのでよろしくお願いします。よいお年を!

―「アリッシュ鉱山・坑道」―


「なるほど……」


 ユノから事情を聴いたロックさんはあご髭を擦りながら何か思い当たる出来事が無いか考えている。


「どうですか?」


「具体的にはいつからですか?」


「3年前からですね」


 それを聞いたロックさんが黙ったまま、さらにしばし考える……。


「……あるな」


「本当ですか!?」


 ロックさんが何か思いついた様子でそのまま話を続ける。


「はい。おおよそその位でしょうかここの警備が増えたのは」


「警備が増えたですか?」


「ええ。ここの警備員自体が前から長時間勤務で負担が大きすぎるというのと雇用を増やす目的で増員したことがあったのですが……」


「盗掘への対策だと?」


「恐らくですが」


「うーーん。でも今も改善されていないとなると、まだ原因は掴めていない感じかな?」


「ユノ様の情報通りならな」


「となると領主様自体は気付いていてそれを取り締まろうとしていた。しかし相手はそれを掻い潜って鉄の盗掘をしているということなのです」


「ちなみに……俺達は関係ないからな?」


 ロックさんが親指で自分の背中にいるいつの間にか話を聞いていた仲間たちへと差す。


「分かってます。それで彼らは……」


「ロックと同じ元騎士団仲間ですよ」


「同じく」


「という事で信頼できる相手だから安心してくれ」


「でもそうなると怪しい連中を俺、見たぞ?」


「え?」


「どこだよ?」


 するとポケットに入っていた地図を取り出し、平たい岩の上に広げてある場所を指差す。


「ここだよ」


「ここは……」


 地図上には×印がつけられている。


「ここは?」


「ここは危険地域で魔獣が出るんだ」


「魔獣って……」


「サイレントバットとマッドゴーレムだ」


 僕は頭の中でそれらをイメージする。たくさんの蝙蝠が襲ってきて、そこに堅いゴーレムが……。


「マッドゴーレムなんてワンパンで倒せるから問題無いだろう?」


「まあ、捕まっても簡単に崩せるしな」


「なんせ女性の蹴りで一撃だしな」


 ははは!と笑い合うロックさんたち……ああ、地属性最弱=地属性魔獣も最弱ってことですね。()()()()()()()()()()()()()()()()()


「とりあえず多くのサイレントバットがいて問題な場所なんだが……ここに入っていく奴らがいたんだよ。まあ、しばらくしたら出て来たからその時は深くは気にしなかったけどよ」


「でも怪しいですね」


「そうしたら行ってみましょう」


 ユノが立ち上がってこの場所に行こうとする。


「ちょっと待てくれ姫様!それなら夕方だ!見たのが夕方の仕事終わりの鐘の音が鳴ってからだったからよ!」


「それにシーエさんたちも呼ばないと」


「……ごもっともです」


「俺達も付き合うぞ。ここで何かあったら俺達の暮らしに影響するしな」


「……なら夜に行こう」


「「「「え?」」」」


「夕方なんて鉱山にまだ人がいるのに何か怪しい事をするなんて危ないよ。それに3年もの間、尻尾を掴ませていないとなると全く坑道内に人がいなくなる夜から明け方じゃないかな?いやそうなると……見張りも買収されてるのかな?」


「……ふっ。流石、勇者と言われるだけあるな」


「ああ……俺も家から武器を持ってこないと」


「俺も俺も!」


「それじゃあ、この町の噴水広場に一度集合ということでいいですか?」


 ユノの提案に全員が頷く。その後、鉱山から帰ってきた僕たちは侵入の準備をするのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―その夜―


「驚きましたよ。ロック先生がここで鉱夫になって働いていたとは」


「そうか?未熟だったお前に武器の指導してるときに言ったと思うんだが……」


「いや。言ってないと思うぜ」


 僕たちの後ろでシーエさんとマーバがロックさんと楽しそうに会話をしている。三人は師弟関係でロックさんはシーエさんとカーターの武術指導をしていたそうだ。


「そういえばシーエが騎士団の隊長をしてるの聞いてたんだぜ?」


「ああ。お前さんらの似顔絵が来たからな。お前が騎士団の隊長をしてる話が来た時は驚いたもんだ!ははは!!」


「あの指導が無かったら、今の私はいなかったですから…先生には感謝してますよ」


「そうかそうか!それで何だが……」


 三人が楽しそうに話をしている。敵陣へ向かうのにかなり不用心に思えるが、ハリルさんの部下2名にこの手が得意なミリーさんが警戒をしているので問題ない。


「そろそろ出しとくか……」


 僕は新しいアイテムボックスであるミスリルボックスから鵺とここに来る前に直哉から貰ったブレスレットを取り出す。


「それが例の指輪ですか?」


「うん。これが魔法使い専用強化アイテム、グリモアだよ」


グリモア。ヨーロッパで流布した幾つもある魔術書の総称であり正式名称はグリモワール。魔法使いが持つ物から名前を付けようとした時にこの名前に決まった。


 この指輪には二つの効果がある。1つは嵌めてある黒の魔石とブレスレットに彫ってある魔法陣の効果を使っての既存の魔法の強化。そしてもう一つは……魔法陣の設置である。

 

 仕組みとしてはブレスレット内に仕込まれた魔石を使った極小の投影機があり、念じる事でそれぞれが得意とする魔法陣を映し出すことが出来るようになっている。この魔法陣は地面に映し出せばブレスレット本体の投影を止めたとしても、しばらくの間は映し出された状態を維持することが可能で、人が触れたりしても崩れることはない。これにより既存の魔法をよりパワーアップすることができ、さらに召喚魔法がより楽に発動できるようになった。


「初実戦なのです!」


「そうなんだよね……あっちで何回か試しに使ったけど、実戦は初めてなんだよね……」


 一応、現実世界で練習もしたのだから問題は無いはずだ。


「それでも心強いですわ」


「シッ!」


 ミリーさんが皆に静かなるように指示をする。僕たちは声を殺して、さらに鉱山の入り口へと歩を進める。鉱山入り口付近に着くとそこには見張りの兵士がいた。


「ここは私達にお任せを」


 ハリルさんの部下の二人が見張りの兵士へと近づき、しばらくその場で話をしていると鉱山の入り口から離れて近くにある別の鉱山の入り口へと一緒に行ってしまった。


「行くわよ!」


 周りに警戒をしつつ僕たちは鉱山へと入り、そのまま目的の坑道まで歩いていく。


「静かなのです」


「そうですね。誰かが入れば声ぐらいするものと思ってたんですけど……」


「魔道具を使ってるかもしれないぞ?音を消す魔道具があるしな」


「だとしたらこっちの声は丸聞こえじゃ?」


「安心して。私が持ってるわ」


 ミリーさんが首元のネックレスを見せる。モチーフに魔法陣が刻み込まれた石がはめ込まれている。


「嬢ちゃん準備がいいな!」


「あっちでスパイなんかをやってたから当然の装備よ」


 あっちにはそんな便利な道具は無いんだけどな……って。


「あれ?それなら蔵での会話を何で聞けたんだろう?」


「あの時はあなたが近くにいたからよ。この魔道具は周囲に音がいかないようにする機能であって、近くにいる人には効かないの。それにもし何でもかんでも音を消したらこんな風に仲間同士で会話も出来なくなるしね」


「なるほど……僕も買おうかな?魔族との戦いに便利そうだし」


「高いですよ?金貨10枚ほどですし……」


「よし。それなら大丈夫!」


「大丈夫って……薫って金貨何枚持ってるのかしら?」


「えーと……金貨1000枚……」


「「「「「え!?」」」」」


 僕がそう答えると皆が驚いた表情を見せる。


「幾らなんでも持ち過ぎだよね……レイス?何か欲しい道具とかあるかな?」


「椅子が欲しいのです。フィーロが作ったクッションでもいいのですが、椅子に座ってゆったりと本を読みたいのです」


「そうか……じゃあ、後で買いに行こうか……」


「あの~……」


「あ、ユノも何か欲しいのがある?あればプレゼントするよ」


「あ、ありがとうございます……って!そういう事では無くて!いつの間にそんなに稼いだんですか!?」


「カーバンクルの魔石にドレイクの素材、ミスリルを売ったり……この前、イスペリアル国での料理教室の帰りにクラックウルフの群れが出たってことで、レイスと一緒に討伐したし……」


「おいおい!クラックウルフは地属性の魔法を使って足場を形成して縦横無尽に襲い掛かってくる中級の魔獣だろう?しかもそれの群れを討伐って!?」


「新魔法で一気に……」


「そんな話、始めて聞いたのですが?」


「私もですね。あっちでそんな事をしていたとは」


「それで?お前達はどんな破壊魔法を作ったんだぜ?」


「地属性魔法なのです。薫が私との会話で気になった魔法を一緒に作ったのです」


「いつもの重力か?」


「ううん。()()()()だよ。そこに細かくした魔石を混ぜただけ」


「どんな魔法か想像つかないですね」


「機会が有れば使うよ。材料は持ってきてあるから」


 材料は2つのアイテムボックスに分けて入れてあるので、いつでも使えるようにはしている。利便性が良く威力も問題ない。欠点があるとすれば体への負担が大きいのがネックである。


「あ、サイレントバット死んだな。これ」


「可哀想に思えてきますね」


「何で見ていないのにそうなるの?」


「お前がやったことを思い返せすといいんだぜ」


 僕とレイスがこれまでの事を振り返る。ワイバーンから始まって巨大悪魔にお猿さんにドレイク……。


「「……あれは…凄惨な事件でしたね」」


「分かったならよろしい」


 マーバとシーエさんが、うんうん。と頷く。これまでの事を考えて僕たちの使う魔法は危険度の高い物ばかりだと認めざるを得なかったのだった。 

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