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142話 大規模会議

前回のあらすじ「26話参照」

―「カフェひだまり・店内」―


 一通り説明を訊いた二人が紅茶を一気に飲み干して、喉を潤す。幸いにもその間、お客さんは来店してこなかったのはよかった。


「え、えーと。つまり薫さんとその精霊のレイスさんが今、世間を騒がしている妖狸で……」


「で、薫さんの仕事が小説家とウェイター以外にレイスさん達が住む異世界でもお仕事中と……」


「はいなのです!」


「そういうことだ。ここで仕事するとレイス以外にも精霊が度々やって来るからな。従業員はそれを事前に知っておいてもらわないと困るって訳だ」


「なるほど!……って!いやいや!何気に凄い情報が連発ですよ!!これかなりマズイ情報ですよね!?」


「昨日、総理大臣とアメリカ大使と会談していたくらいだもんね。ね?薫ちゃん」


「うん」


「うん。って!いわゆる国家機密情報って言うやつですよねこれ!!これうっかり話したら裏で消されるパターンじゃないですか!?」


 机をバンバンと叩いて主張する雪野ちゃん。


「大丈夫だよ。そんなことは無いと思うよ……多分」


「多分!?」


「薫さん!目を逸らさないで!こっちを見て下さい!その多分が怖いですから!安心できないですよ!?」


「いや。ゴメン。実は昨日どこかのスパイに襲われて返り討ちにしてたから……」


「「こわっ!!」」


 すると二人がお互い抱き合って震えだす。はて、この後どう話せば……。


「まあ、確かに危険な話だ……だが、リターンも大きいぞ?」


「え?なんですか。そのリターンって?」


「こいつに頼めば異世界に行けるぞ」


「……あ」


「ふぇ?いいんですか?」


 二人が異世界に行けると聞いて、途端に興味を示しだす。


「実はあっちで料理教室を開いていて、調理師の卵である二人が来てくれると助かるかな」


「あ、あの小説や漫画でお馴染みの異世界入りですか……」


 雪野ちゃんが手を組んで考え始める。


「しかも、魔法の力を使った調理器具も扱えるぞ」


「魔法の道具……」


 あみちゃんも人差し指を唇に当てて考え始めた。


「魔法の料理店……」


「いいかも……」


「どうだ?」


「「よろしくお願いします!!」」


 身の危険より、未知の世界や技術を知る事が出来るという好奇心の方が勝ったようだ。


「魔法の器具で料理を作るなんて、絵本の世界みたいじゃないですか!!その道具ってこっちに持ち込んでもいいんですか?」


「他の人には内緒だけどね。もちろん転売は禁止だよ」


「や、やります!やらせて下さい!!」


「じゃあ、よろしくな。くれぐれも秘密で」


「「はい!!」」


 その後、少しだけ打ち合わせをして今日の所は二人は帰っていくのだった。ただ……。


「よろしくお願いしますね!妖狸さん!」


「や、やっぱり女性として意識していたんですね薫さん!」


「その名前は言わないで!!それに違うから~~!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―閉店後「カフェひだまり・店内」―


「それでどうだったの?」


 昌姉がコップを拭きながら、今日のスパイ襲撃事件について訊いてくる。


「スパイ二人を確保して、今は橘さんに任せてるよ」


「しっかり見張っとくわ!って言ってたのです」


「それで、そいつらの正体がレルティシアの子孫だった……と」


「榊さんを通して総理とアメリカの大使であるソフィアさんに連絡、カーターたちに頼んでグージャンパマ各国にも連絡してもらって今後の対処について検討してもらってるところだよ」


「どうする予定なの?」


「帰国希望ならレルティシアへ帰国。って僕は考えてるけどね」


「いいのか?銃で撃たれたり、爆弾で蔵を爆破未遂……いくら何でもやり過ぎだろう?」


「私もマスターと同じように思ったのです。でも……」


「……まあね。少しは怒ってるよ?でも、僕にこれといった被害が無かったし……それに故郷に帰れずに寂しい思いをした身内がいるしね」


「お前達のばあちゃん…典子さんのことか?」


「うん。おばあちゃんにどんな理由があったとしても、故郷に帰れなかったのはきっと寂しかったと思うんだよね。昌姉は聞いていないかな?」


「そうね~……そうは見えなかったわね。私が来るといつも笑顔で嬉しそうで……今の薫ちゃんが笑ってる時の表情そっくりね」


「僕にそっくり?」


「あら?おばあちゃんの写真見た事無かった?」


「仏壇には位牌だけだし……いや、子供の頃に見せてもらったような……?」


 僕が一生懸命思い出そうとしてると、昌姉がスマホを取り出して一枚の画像を見せくれた。写るのは小さい昌姉を抱いた金髪ロングヘアーをした僕そっくりな女性。


「本当だ……似てる」


「金髪で長髪な所以外は同じなのです」


「どれどれ?……そっくりだな。これ見せてお前と双子って言っても疑われないレベルだな」


「でも、これおばあちゃんが死ぬ数年前の写真なんだけどね」


「昌や薫を見て少しは慣れた気がしてたんだが……ばあさんも規格外だな」


「そうね。孫の私でも若すぎるんじゃないかしら?って思うくらいだもの」


「母さんもあんな感じだし……もしかして僕たちも?」


 60歳過ぎても若者にしか見えないって、それはそれで困るような……。


「いつまでも若いのは乙女としては夢の話よね」


「嫁がいつまでも若いってのは世の男の夢だな」


 そう言って、マスターと昌姉がお互いに笑い合う。その前向き的な考え方もありか……と何か二人がいちゃつき始めた。


「はいはいご馳走様です。じゃあ、僕たちは帰るね?」


「ああ。お疲れさん。明日は昼からでいいんだな?」


「うん。あの二人に会いに行ってからこっちに来るね」


「無茶しないでね?」


「分かってるって行こうレイス」


「はいなのです」


 僕たちは二人に挨拶をして家の帰路につくのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日の朝「薫宅・居間」―


「で、どうしてこうなるの?」


「す、すまねえ。昨日の夜に決まってな……」


 サルディア王が実に申し訳なさそうに話す。というのもこの家にグージャンパマ各国の代表に橘さんとスパイのミリーとカイト。さらに、直哉と榊さんに紗江さんに泉とフィーロ。さらにさらにテレビ通話で総理とソフィアさんに大統領。そして庭にはお巡りさんに各国の護衛の方々がずらり。また、ここにいる全員がアイ・コンタクトを装備、後はここにアリーシャ女王が来たら会議が始まるという状態。ちなみに昌姉には既にひだまりに来れない事はすでに連絡済みである。


「この家には多すぎですよ!襖を外して二部屋を一つにしましたけど!」


「本当にすまねえ。ここが一番近い建物だからよ。色々な面倒を省けるんだ」


「それはそうですけど……しかも総理だけじゃなく大統領って」


 ついに大国のリーダーまでもがこの会議に出て来た。さらにモニターからは他の人の声も聞こえるので、それなりに地位のある方々も集まってるのだろう。ちなみに菱川総理側も同じような状況だったりする。


(ははは!君が妖狸とはね!男と聞いて驚いたよ!!しかし隠すなんて酷いのではないかね菱川総理?)


(状況が状況ですからね。そこはご容赦を)


「はあ~……」


 この部屋の要人率が高すぎる。ここでの会議が二つの世界に多大な影響を及ぼすのは目に見えている。下手すると今日という日が歴史の教科書に掲載されるかも。


「……というより私とフィーロって必要?」


「お二人にも念のためと思って呼んだのです。あなたたちは今や魔導士の称号を持つ最強の魔法使いなのですから」


「そういうものッスか?」


「そういものですよ。それに……」


 ソレイジュ女王が二人に今回の出席の意味を唱えていく。今回の件はかなり大ごとと判断し、全員が一同に顔を合わせようという事になったのだった。


「薫。来たぞ」


 庭に待機していたカーターが縁側のガラス戸を開けて報告してきた。僕が縁側に出て庭を見ると、家の庭に一台の高級車が入って来る。そこから男性が降りて来て、車のドアを開けると背の小さい女性……銀髪美少女と言っても過言ではない尖った耳を持つ女の子が出て来る。その子は玄関ではなく僕がいる縁側へと歩いてくる。


「あ、アリーシャ様!」


 後ろを振り向くと、スパイの二人が体を動かしてこっちを見ていた。


「二人共大丈夫ですか?」


「申し訳ありません!その……」


「いいのです。それに悪い事をしろと指示をしたのは私ですから」


「で、でも……」


「チョット黙ってあげなさい。あなた達のボスが話したい事を話せないじゃないのよ?」


 橘さんがスパイの二人組を黙らせる。アリーシャ女王は一旦間を置いてから僕の方を見つめて話始めて来た。


「この度は私達の身勝手な行為でこの家の持ち主である薫さん。あなたに多大なご迷惑をお掛けしました事を深くお詫び申し上げます」


 そう言って、アリーシャ女王が頭を下げる。


「顔を上げて下さいアリーシャ女王。僕も話を聞いてますから。あなた方がいなくなった時、あちらの世界では戦争中だった。それが今も続いていると考えていたら密かに相手にバレないように行動するのは普通ですしね」


「それでも、やろうとしたことは重罪です。必要とあればこの身を持って……」


「すいません……それは本当に重いので勘弁して下さい」


 一般人感覚である僕にそうゆう判断を下すとかそんなのは勘弁して欲しい。


「「「「本当に無欲だな……」」」」


 集まっている方々が呆れている。いや、僕に何を求めてるのかな?


「賠償金ぐらい吹っ掛けていいものだぞ」


「いや、まあこれほど無欲だからこそ安心できるといいますか……」


(ただ、これはこれで心配になるぞ?)


 総理の一言に全員が泉とフィーロそしてスパイ二人組以外の全員が頷く……いや、シーニャ女王とソレイジュ女王も他の人と反応が違うような?


「私としては助かりましたけど」


「まさか再びお会いできるとは思って見せんでしたわアリーシャ」


 二人が親しそうにアリーシャ女王に語りかけてくる。シーニャ女王なんて呼び捨てである。


「シーニャ、ソレイジュ様。お久しぶりです」


「お知り合いで?」


「お互いエルフで、多くの国民を養う王家ですから戦争中のあの頃でも自然と仲良くなってました。それとソレイジュ女王も」


「ソレイジュ女王?」


「アリーシャ女王が不思議に思ってもしょうがないですわね。王である夫と一緒にいた頃しか知らないでしょうし」


「王は?」


「つい数年前に」


「……お悔やみ申し上げます。そうなると淋しくなるのでは?」


「ありがとう。でも心配は御無用よ。それに今はここにいる娘と一緒に国を盛り上げているから……」


 そう言って、ソレイジュ女王がレイスの近くに寄ってアリーシャ女王に紹介する。


「え!?そ、それは良かったですわ」


 アリーシャ女王が一瞬だが変な反応をした。


「もしかしてアリーシャ女王?精霊であるレイスとフィーロを捕えようという計画もあったんじゃ……」


「ぎくっ!」


「いや。隠せてない。というより口にしてる」


「この子はその頃からこんな感じですわね」


「ふふ。本当に」


 二人が久しぶりの再会に笑みを浮かべている。どうやらこの計画自体にツッコミを入れる気は無いようだ。


「す、すいませんでした!まさか、妖狸のパートナーである精霊がソレイジュ女王のご息女だったなんて!」


「まあ、実行されたわけでは無いですし、実害をこうむった薫さんが手を引いた以上こちらもとやかく言いませんわ。とりあえずこちらへ来てちょうだい」


「は、はい」


 アリーシャ女王がシーニャ女王の隣に座った所で僕たちの会議が始まるのだった。

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