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13話 ドンマイ地属性

前回のあらすじ「魔道具ゲットだぜ!」

―「カフェひだまり・店内」泉視点―


 突然ですが私の名前は多々良 泉。23歳ですが知り合いからは見た目も中身も16歳と言われてます。私達の家系は何故か実年齢よりかなり若く見られます。親戚である薫兄は30歳の男なのに高校に通う美人女子高生とからかわれたりします。そして遂にその薫兄が……。


「魔法使いになるとは……」


「ねえ。今度薫ちゃんに魔法少女の服なんていいかもしれないわね」


「それ採用」


 ビシッ!と片付け作業中の昌姉に指を指す。絶対今度のイベントには連れていく。あのアイテムボックスさえあれば衣装とかシワをつけずに運び出せる。他にも運び出すには難しいものとかもいけるだろうし、それと……。


「カッコイイ……」 


 薫兄が一緒に連れてきた男性を見る。完徹と聞いていたけど遂に力尽きたらしく、彼とパートナーの精霊が一緒に机に突っ伏して寝ている。彼を始めて見た時から気になっていた。何このアイドル!? 金髪にその碧眼ってもうカッコいい!! 正しくゲームの美形キャラをそのまま現実世界にしたようなもの……。写真撮っちゃダメかな? ポケットに入れていたスマホを取り出す。せめて一枚だけでも。


「あら?それって確かスマホかしら?」


 カシーさんがメモ帳らしき物から目をそらしこちらを見る。


「あ、はい。そうです」


「何しようとしたんだ?」


 ど、どうしよう。つい己の欲望に負けてこの二人の事を忘れていた。


「あ、いや。その……写真を撮ろうと思って……」


「「写真?」」


「薫兄から聞いてませんか?」


「連絡を取り合う事が出来るとは聞いていたがそれについては話してないな」


「私もよ」


「そうですか。このレンズの部分を対象に向けて。画面を見ると」


「カーターとサキが映っているわ」


「あとはこの撮影ボタンを押すと。このように記録されます」


「……凄いわ。これ研究の記録何かに最適じゃないかしら」


「確かに。しかしこれに文章をつけるなら何かに書き写さないとダメだろう」


「できますよ? 専用の機械やアプリを使えばこれを紙に印刷したり文章をつけたりとか……」


「誰かに伝えることもできるのか?」


「うん。同じような機器さえあれば」


「とんでもない物ね。量産できれば技術革新が起こるわ」


「こちらにも連絡手段はあるが……。しかしより写真を使えばより正確な情報送れるな」


「ええ。スパイに渡せばより正確な情報収集が可能だわ」


 ……ど、どうしよう。スパイとか何か軍事利用する気満々な話をしているんですが? とはいえ。スマホの画面を見るとそこにはカーターさんの寝顔写真が。写真ゲットだぜ! と、思わず顔がにやける。


「あらあら、カーターは大変よ。王都の女の子から絶大の人気だから」


 ハッとして声をかけてきたカシーさんに顔を向ける。2人がこちらを見ている。


「え! いや。その……。これは違うんです!!」


 慌てる私を笑顔でカシーさんが答えてくれる。


「隠さなくて大丈夫よ。彼の顔写真がファンの間で売られているぐらいだし……。容姿端麗で性格も良く御貴族様だもの。憧れて当然だわ」


 あちらの女性達の感覚は私達と同じか。しかも貴族。つまりお金持ち。何この全てを持ってます的な男性は。もはや白馬に跨がる王子様ではないのか。


「まあ、頑張ってちょうだい」


 そういって、コーヒーを口にした後、再び精霊と一緒にメモ帳に何かを書く作業に戻った。その胸をあらわにした服の上に幾何学模様があしらわれている白衣にもにた上着を着ているその姿は以下にも魔法使いという感じだった。


カラン。カラン。


 入口から誰かが来た事を知らせる音が鳴る。振り向くと薫兄がいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「カフェひだまり」―


「ただいまー!」


 ひだまりに帰ってきた僕は扉を開けて帰ったことを知らせる。


「お帰りなさい薫ちゃん。荷物どうだったかしら?」


 指輪を着けた手を前に出して荷物が出るように念じる。するとそこに先ほど回収した荷物が出てくる。


「ん。よし!」


「えーと。ちょっと待ってね……」


 昌姉が荷物を確認していく。


「問題なさそうね。お疲れ様ね薫ちゃん」


「といっても指輪の力を使っただけなんだけどね」


「薫に渡したアイテムボックスは最高クラスの物だからな。そのくらいの量なら問題ないぞ」


「それ本当なのワブー?」


 ワブーのアイテムボックスについての説明に驚く。てっきりあちらでの一般的な物ぐらいを貰ったんだと思っていた。


「それだけ薫との関係を王様は重要視しているということさ」


「今この数時間で私も多くの事を知ったわ。上手く活用すれば他国を遥かにしのぐ魔術国家の誕生になりかねないわ。こちらのスマホを何とかあちらで再現できないかしら……」


 異世界のスマホ……。電池切れとか圏外が無いんだろうなきっと。


「薫ちゃん。そろそろ12時になるからお昼にしましょうか。それに私も話をゆっくり聞きたいわ」


 昌姉に言われて、店内にある時計を見るとすでに正午を差していた。


「分かったよ。で……」


 おもむろに机の上に突っ伏している2人に目が行く。


「気持ち良く寝ているカーターとサキはどうしよう?」


 全くいい寝顔してるぜ。といいたくなるくらいに気持ち良く寝ている。サキなんてよだれを垂らしてるし。


「起こして上げた方がいいわ。薫に伝えたい事があって来てるのだし、薫もそれに気づいて私達をここに連れてきたんでしょう?」


「うん。まあ今までの話の流れである程度はね」


「伝えたい事って何なの薫兄?」


「多分だけど王様と謁見して欲しいってところかな」


「理解が早くて助かるわ」


「僕と話をして正式にこちらと交流と交易をしたい。そんな所かな?」


「そうよ。車やスマホ、それに私達の世界より遥かに進んだ医学。挙げたらきりがないわ」


「でも転移魔法で行き来したり、永続的に使える温度調整機能付きランプがあったりして、何か車やスマホぐらいなら魔法で何とか出来ちゃいそうな気がするのですが」


 泉が疑問にした事を口にする。まあ、確かに何でもアリな感じはする。


「泉ちゃん達からしたら魔法って何でも出来るイメージがあるかもしれないけど少し違うのよ」


「違う?」


「そう」


「その話、私達も詳しく聞きたいわ」


 昌姉がワクワクさせている。こんな姿を見せるのは珍しい。


「という訳でお昼ご飯食べながら聞かせてもらっていいかしら? ということで薫ちゃん手伝って!」


「分かった。それじゃあ、泉はカーターを起こしてあげて」


 そう言って昌姉と一緒に厨房に入る。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数分後―


 キノコをふんだんに使った和風パスタを持って席に向かうと俯いているカーターと顔を紅くした泉がいた。


「任務中に居眠りとは……」


「起こすのにこんなにドキドキするなんて……」


 カシーとワブーに目を向けると2人してメモ帳に何か書き込でおり、サキに目を向けるとよだれを拭き、軽く欠伸をしていた。


「何この状況」


 その少し混沌とした場を見た僕は、首を傾げるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 

―さらに数十分後―


 まず、起きたカーターたちの要件は僕がカシーとの話の通りだった。王様が僕からこちらの世界の話を聞きたい、出来れば機械製品や食品も買いたいとのことだった。


「カレーは特に食べたいとも言っていたな」


 と話ながらフォークでスパゲッティを巻き付けて口に入れる。あちらの世界には麺なんて無いらしく、さきほど食べ方を少し教えたところである。ちなみに精霊用のフォークなんて無いので先を潰した爪楊枝を箸がわりにして食べてもらっている。しかし、4人とも凄く美味しそうに食べている。始めはキノコを使っていたのでカシーさんたちは躊躇していたがすっかりハマっている。


「となると薫ちゃんとしては仕事がお休みの時に行きたいってことかしら?」


「そうだよ。でシフトの相談何だけど……」


「新装開店で3、4日は出て欲しいからその後ならいいわよ」


「それなら5日後に行くでいいかな?」


「問題ないと思う。こちらからの急な申し出だしな。後、服やマナーとかは気にしないでもらっていい。互いの文化の違いなんて当然あるだろうから、もしこちらに粗相があったら見逃して欲しいとのことだ」


「日帰り旅行気分で来て頂戴」


「異世界に日帰り旅行って……」


 スパゲッティを食べていた泉が呆れた感じで言う。まあ、言いたいことは何となく分かる。ふと、ここで思ったことを泉に聞いてみる。


「泉も来る?」


「え!? いいの!」


「私はむしろ大歓迎よ。泉なら女性ならではのことが聞けるし」


「女性のファッションとか化粧なんて、男の僕には無理だね」


「うーん。私達も行きたいけど、お店があるから無理ね」


「……うむ。そうだな」


「そしたら薫と泉だけだな。5日後に2人来るということで報告するよ。朝に迎えにいくがそれでいいか?」


「うん。僕はそれでいいよ」


「私も!!」


「じゃあ、決まりだな」


 異世界の王国に行くなんて人生何があるか分からないなと思いつつスパゲッティを口に入れる。


「ねえ? そしたら、さっきの魔法について聞かせてもらえないかしら? 私としてはかなり気になるところなのよね」


 昌姉が目を輝かせながら質問する。RPGとかよくやってて昔は魔法にあこがれてたから当然なのだろう。


「僕が聞いたのは強力な魔法は精神をかなり疲弊するだっけ?」


「そうね。そこらへんは個々の魔法の素質や精霊とのイメージがどれだけ近いかになるんだけど、それ意外にもあるのよ」


「というと?」


「例えば……光を灯す、火をつける、水を作る、風を起こす。これらはどこからでも起こせるわ。でも土に関してはそうはいかないのよ」


「地属性は大地からもしくは手に土を持って魔法を使わないといけない。まずはこれが1つだな」


 漫画によくある設定の等価交換というものか。


「まあ、最弱魔法だから戦闘では誰も使わないがな」


「イメージ的にはそう思えないんだけど?」


 泉の言うとおりだ。何か某術師は土で敵を串刺しにしたり、土の拳をぶつけたりと物理的に強そうだが。


「意外に脆いのよ。例えば土で壁を作っても直ぐに壊れるし武器にしてもすぐ崩れてダメージを与えられない。土石流とかにしても小規模過ぎて場所を選ぶ。そもそも土がないと意味がない。それなら農業用に大規模に大地を耕すにしても風を起こした方がコストはいいし、足止めようのぬかるみなら水を使えばいいし……。せいぜい砂ぼこりかしら」


 魔力でよくある強度の強化されないのか。地属性魔法……ドンマイ。


「他に地中に埋まっている金などを大地から取り出す事も出来ないの。だから、金が欲しければ自分で掘らないといけないわね」


「なるほど」


「便利そうと思ったけど、そうじゃないのね」


「他の魔法なら転移魔法は魔石で魔法陣を絵描きその中で行使しないといけない。また魔法陣には意味があって転移系なら方向、距離等を示していてそれを元に書かないといけないの。その数の多さから私でも本がないと書けないわ」


 凄いと云われる賢者がこう言うのだからそれだけ途方な数なんだろう。


「それがあればこの前の道が寸断された時にも何とかなったんだけどな。まあ、これに関しては研究して得た機密情報だから国境近くの城壁にポンと置くわけにはいかないんだけどな。異世界の門に関してはペンダントのお陰で何とかなったんだが」


 そう言ってカーターはペンダントを見せてくれた。ペンダントはゲーム何かで見る魔法陣の形をしていた。


「そうだったんだ」


「魔石に掘る紋章も同じで数が膨大で完全に把握はしきれていない。後は異世界の転移魔法も含めて何だけど良く分からない魔法もあるのよね」


「良く分からないってどういうことですか?」


「今だとずばり翻訳でしょ」


「薫の言う通りよ。どうしてあなた達と言葉が通じるかが良く分からないのよ。文字の形式それに流行や個々の表現に単位など……どうすればそんなことが出来るか良くわからないのよ」


「さっき確認したが薫の家で見たが、カーターの転移魔法陣を抜いたとしても、あの魔法陣のどの部分がそれなのか全く見当もつかない」


「うーん。さっきの話を聞くと基本はどれも自然現象内で解決出来るわね」


「昌の言う通りだな、水なんかは冷えれば氷に暖めれば蒸気になる。火や風、土なんかもそうだ」


「昌姉、マスター、薫兄……物分かり良すぎじゃない?」


「アニメ、ゲーム好きだからな……このくらいは」


 マスターの意見に僕と昌姉も首を縦に振って答える。


「設定を理解するのは楽しむのに必要だもん」


「そうね」


「アニメとかゲームとか良く分からないが……。まあ、カシーが説明した通り魔法にはかなり曖昧な部分があるってことだ」


「なるほどね」


 科学でも証明できない事柄がこちらにもあることだし、まあ、魔法でも同じようにあるのだろう。


「でも、これからは説明出来るかもしれないわ。私達が説明できなくてもこちらの科学なら説明できることがあるだろうし」


「逆も然りってことかな」


「ええ」


「となると、直哉を今度紹介するよ。こちらの技術者みたいな人だから」


「まあ、変人だけどね」


「カシー達も変人だから問題ないわよ」


「酷い言い様ねサキ」


「本当の事でしょ」


「あらあら。ケンカはダメですよ」


「ああ気にしないでくれ。単なるじゃれあいだから」


「カーター!!」


 途端に笑いが起きる。この先起きることを想像するとしばらくはこんな風に刺激的な日々になるだろうと僕は思った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後「カフェひだまり・駐車場」―


 昼食後、午後の片付けやお土産のクッキーを作ったりして夕方になった。


「お世話になりました」


 異世界グループが頭を下げて礼を言う。


「あら、いつでも遊びにきて下さいね」


 昌姉が凄く眩しい笑顔で答える。


「そう何度もご馳走になるわけにはいかないので、今度は何か礼になる替わりの物を持ってきますので」


「あら、真面目ね」


 とにかく昌姉も喜んでいるし紹介して良かった。僕にしてもこれで異世界に取材しやすくなっただろう。近いうちに昌姉たちも遊びに連れていく事になるかもしれないが。……あれ?何かサキの様子がおかしい。


「どうしたのサキ?」


 僕に近づいて、周りの人に聞こえないように聞いてくる。


「薫。昌さんって薫の姉なのよね?」


「うん。そうだよ」


「思ったんだけど薫が30歳なら昌さんはいくつなの?」


「ああ~。なるほどね」


 確かにもう少しで40になる武人さんと比べると親子に見えるもんな。


「実は俺も気になっていた」


 カーターも話に入ってくる。


「どうかしたの薫ちゃん?」


 カシーさんたちと話していた昌姉がこちらを見てくる。


「2人が昌姉の年齢を聞きたいだって」


「ちょ! 薫!? 女性の年齢をそんな……!」


「あら。武人さんと同じ39歳よ」


「昌姉って年齢隠さないから気にしないで大丈夫……」


「「「「ええーー!!!!????」」」」


 泉そして僕は「いつも通りだな。」とうんうんと頷くのであった。その後、意外にもカシーさんが若さの秘訣について昌姉を質問攻めするのだった。

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