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138話 笹木クリエイティブカンパニーの秘密施設

前回のあらすじ「薫の戦闘力は53万です(嘘)」

―「国道」ミリー視点―


 私とカイトはそれぞれバイクに乗って、警察の追跡に注意しつつ逃げている最中にその情報が突如もたらされる。


「どういうこと!?」


 魔法陣のトレース作業は完璧、そして肝心のあの魔法陣もあの爆発で壊したはず。


「それなのになんで、あちらに設置した魔法陣が発動しないの?」


(魔法陣の作成には問題無いはずです。となるとあの魔法陣はダミーかもしれません)


(ダミー?ってことは本物は別の所……となると)


(恐らく、それらを研究している場所。笹木クリエイティブカンパニーです)


 迂闊だった。あの薫という魔法使いが守る建物はそれっぽく見せた疑似餌だったのか……。


「こうなったら笹木クリエイティブカンパニーへ……」


(それは危険です!すでに、あの魔法使いからあちらへと連絡がはいっているはず、警備も厳重になってるはずです!)


(でもミリーの言う通り、このタイミングでいかないともうチャンスが無いでしょうね。あいてはラエティティアである僕達が狙っていることを知っています。そしてこれ以上の余裕を与えることは、彼らに僕らへの対策を与えることになります)


(でも……)


「行かせてください!今が最後のチャンスなんです!」


 アリーシャ様に私は懇願する。これ以上のチャンスは巡って来ない。そして日が完全に昇る頃には警備も厳重になることは容易だ。行くなら今しかない。


(……分かりました。でも、くれぐれも気を付けて)


「はい!」


(それじゃあ行きますか!)


 そして、私達は笹木クリエイティブカンパニーへとバイクのハンドルを切るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「薫宅」―


「薫兄!大丈夫だった!?」


「薫!」


 僕の家で爆発があったのを聞いてしまったようで、こんな深夜に泉たちが慌てて来てくれた。でも……。


「三人共、いくら何でも抱き付かないでよ」


ユノと泉が左右から、レイスは頭に抱き付いてくる。


「だって、心配したんだから!」


「そうですよ!カシーから聞きましたよ!レイスとワザと離れて囮になるなんて!」


「そうなのです!もっとパートナーとして信用して欲しいのです!」


「だから、ゴメンって!」


「「「分かってません!!」」」


 三人にドヤされてしまう。ちなみにフィーロはどうしているかというと、泉の車の中で就寝中である。泉に寝たまま連れて来られたのだろう。


 僕たちがそんなやりとりをしていると、蔵からお巡りさんとカーターたちがやってくる。


「成島さん。我々はすぐに犯人達の逮捕に向かいます」


「あ、はい。こんな夜遅くに申し訳ありませんでした」


「いいえ。それと他の署員が周囲の巡回をしますので、また何かあったらすぐにご連絡を下さい。それと多々良さんの家もすでに巡回するのでご安心を」


「はい」


「俺達もここで一晩見張りをする。念のためにユノ様はビシャータテア王国へお戻りください」


「で、でも……」


「どんな危険な武器を使う奴らがくるか分からないわ?万が一の場合も考えて城に戻ってちょうだい」


「サキ……分かりました。薫」


「大丈夫。無茶しないよ」


「はい……それとお伝えしたいことがあるのですが、耳を少し……」


「なに?」


 僕はユノに耳を向ける。すると、耳ではなく頬に柔らかくて暖かい物が当たる。これって……。


「それじゃあ……おやすみなさい」


「う、うんおやすみ……」


 そして、カーターたちに付き添われて蔵の中へと入っていくのだった。


「教えといてよかったわ」


 カシーさん。ほっぺにチューを教えたのはあなたでしたか。


「さてと、それでどうする?今、出来ることは無いようだが?」


 今まで静かに黙っていたワブーが仕切り直しといわんばかりに、話の話題を変えてくる。


「とりあえずここはカーターたちに任せて、私達は泉の家かしら?」


「それならここに泊っていった方が早いと思います」


「それが良いと思うのです。相手がいつ来るか分からないのに戦力を分散させるのは得策じゃないと思うのです」


「俺もレイスの意見に賛成する。カシーはどう思う?」


「そうね……」


~~♪~♪


 すると、僕のスマホに着信が入る。こんな夜遅くに誰かと思ったら直哉だった。


「もしもし?なお……」


「すまん!!今すぐ会社に来てくれ!!」


 直哉からのヘルプ電話!これってまさか!!


「大丈夫!?ラエティティアの二人に!?」


「何だそれ?でも大問題が起きた!」


 え?違う?でも、大問題?なに?何が起きたんだろう?


「ちょ、ちょっと何が起きたの?」


「実は……」


 直哉から事情を聴いた僕は戻ってきたカーターと泉たちに家の事を任せて、倉庫から道具を持ち出しカシーさんたちと一緒に笹木クリエイティブカンパニーへ車を走らせるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「笹木クリエイティブカンパニー・地下保管庫」ミリー視点―


「警備がいくらなんでも手薄過ぎないかしら?」


「そうだね……他にもトラップがあるかもしれない。注意して進もう」


 地下の通路を二人して歩いていく。本当はカイトは別の場所で待機してもらう予定だったのだが、施設内を捜索した際に、ここの地下へのセキュリティが異常に高いために来てもらっている。


「しかし……ここは国家の極秘研究所か!?なんだこのセキュリティの高さは!?」


「そんなに?」


「地下の扉のパスワードは30分おきに変更。その扉を開けた通路には監視カメラと赤外線センサー……さらに重量センサーってどうなってるんだこれ!?」


 ディスプレイを見ながら悲鳴を上げるカイト。頭をせわしなくかいている所からして、かなりやっかいな物らしい。


「これだけ厳重なのは当然でしょう。なんせこの世界にない魔法と魔石を研究する唯一の施設なのよ?」


「それもそうなんだけど……それなのに何故、警備員がいないんだ?あっちの騒ぎを聞いたら普通、巡回させてもいいくらいだぞ!?」


「これがあるから?」


「防犯設備に過信するのはよくない。あくまでこれらは補助としてみなすべきだ。それなのに……」


 確かにここまで来るのに見張りも、監視カメラさえも何にも無かった。それなのにここになったら急激に上がった。


「むしろ、ここまでして守りたい物って何かしらね」


「それは……そうか魔法陣か」


「おそらく外のセキュリティが低いんでは無くて、その魔法陣からいけないものが万が一現れてしまった場合すみやかに知るためのセキュリティと考えれば……」


「そうか……それなら納得だ」


「となると、ここに異世界の門がある信憑性が高くなったわね」


「ああ」


 これだけのセキュリティ……きっとここに!


「ただ、ここまで静かなのは妙だ。気を付けないと……よし!セキュリティ解除!」


 セキュリティが解除されたので、私たちは地下への階段を降りて扉を開ける。扉を開けると同時に灯りが点灯。灯りによって照らされた通路、その両脇には幾つもの扉がある。私達は慎重に手前の扉から開けていく。保管庫に発電施設……隠し扉も考えて調べているけど、お目当てのものが見つからない。そして最後の扉……。


「他には見当たらなかった。きっとここに……」


「カイト。いくわよ?」


「ああ」


 私は扉を静かに中の様子を伺いながら開けていく。そして中にあったのは……。


「木?なんでここに?」


「分からないわ。とりあえず進んでみましょう」


 地下の施設にある木……その枝は壁にはりつきながら広がっている。まるでホラー映画に出て来る……。


「まさか!この木って!」


 すると蔦が私達に襲い掛かってくる。それによってカイトは腹を突かれてその場に倒れる。


「くっ!侵入者排除用のトラップってことかしら!?」


 私は木に向かって特製の銃弾を放つ。が、貫けずに樹皮でその勢いが止まってしまった。


「うそ!風の魔法によって貫通力を高めた特製弾よ!?」


 ありえない。普通の木ならこれで……


「きゃ!!」


 いつの間にか足にしがみついていた枝に体を持ち上げられる。さらに他の枝が両手を縛りあげていく。


「な、なにする気なの!?」


 すると、木の樹皮が変化していき目と口が現れる。


「これって……」


 聞いた話では凶悪な植物とされている魔獣。一度捕まったら最後、死が待っている魔獣。


(ミリー大丈夫ですか!?ミリー……)


 落ちた通信機から声が聞こえる……ごめんなさいアリーシャ様。どうやら私は……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから数十分後「笹木クリエイティブカンパニー・地下通路入り口前」―


「すごいのです!」


「なんでこんなものがあるの?」


 笹木クリエイティブカンパニーに到着すると、そこにちょうど橘さんを含むお巡りさんたちが来ていた。少しだけ橘さんと話をした僕はカシーさんたちと橘さんたちに施設の見回りを任せて、直哉たちと一緒に倉庫の入り口まで来た。扉を開けて灯りを点けると、そこには下へと続く階段があり、辿った先には扉があった。


「いや。なんとなくカッコイイから?」


「じゃなくて、ノリで私のいない間に作ったんじゃないですか!」


 そう言って、紗江さんがハリセンで直哉の頭を勢いよく叩いて吹き飛ばす。事務所の近くにある倉庫がまさか、地下への入り口になっていたとは……。


「それじゃあ……」


「あ、待って下さい。解除しますので」


「解除ってそのパネルでですか」


「いえ。これはダミーです。一応、センサーは切れるんですがカメラは切れたふりをしてそのまま撮影します。本物はこっちです」


 そう言って、灯りのスイッチの横の壁を紗江さんが軽く叩くと機械音を放ちながらキーボードとパソコン画面が出て来て何かを入力し始める。ここはどこぞのSF施設ですか?


「ふふん!監視カメラ以外にに赤外線センサーに重量センサーなどなどを仕掛けてあってだね!作動したら警報が鳴る仕組みだよ!」


「何ここ?国家機密でも扱ってるの?」


「紗江が言っただろう趣味だと。まあ今はグージャンパマの素材とかを置いてあるから機密と言えば機密だな」


「それでさっき言った大問題がこの先で起こったのです?」


「ああ、複数のセンサーが奥の部屋で何かを感知。数人でその部屋を確認したところマダーウッドとなる魔物がいたって訳だ。うるさいから反応があった部屋だけセンサーは切ってるがね」


 マダーウッド。ウッドとは言っても植物では無く植物型魔獣と言われる存在らしい。移動は不可能なので、根付いて普通の木としてその場に留まり、近づいてきた獲物を襲う習性を持っている。今回そのグージャンパマの素材の中に、そいつの種子が混ざっていたらしくここにあっという間に根付いてしっまったそうだ。


「……ねえ?その際に地下の扉って開けっ放しで慌てて逃げたの?」


 階段の先にある地下の扉をよく見て見ると、少しだけ開いている。


「いいえ?安全の為に閉じることを徹底してます。それは今回の件でも……あれ開いてますね?」


「おかしいぞ?最後に出たのは私だから閉じたはずだが……」


「……原因が分かりました。この地下に誰か侵入してます。そのどこかの誰かがダミーのパネルを操作した形跡がありました。時間は……数十分前」


 僕は鵺を籠手にして構える。


「あの女性だね」


「今度は私も手伝うのです!」


「……いや。その必要は無いかと」


 ディスプレイを見つめている紗江さん。


「紗江。それはどういうことだ?」


「監視カメラの映像を確認したのですが……例の奥の部屋に入っていきました。……つい数分前に」


 僕たちは急いで階段を降りて、一番奥の部屋へと向かうのだった。

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