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133話 強行出来ない訳

前回のあらすじ「色々食べた(精霊が)」

―「仲見世から少し離れた場所にあるお寿司屋さん」―


「なるほど。魔石の存在に異世界を謳っている集団……か」


「でも、なんかフワッとしていて確証が無いような?」


「そこなのですが……こちら」


 ソフィアさんがテーブルの上に置いておいた魔石の中で二つを指差す。


「火と風の魔石だな。それがこっちの世界に……いや、そのラエティティアが持っていたと?」


「はい。数十年程前に彼らが自分の言ったことが本当である証明として、これと似た物を人前で使って信者を増やしたそうです」


「こちらの人々からしたら奇跡の御術ですね」


「でも、こっちの技術があれば何とかなりそうなのです」


「手品ってあるッスからね」


 こっちに暮らす二人からしたらテレビでよくやっている手品と考えるのも当然かもしれない。


「精霊のお二人の言う通りです。私共もただのオカルト教団と認識していたのですが……数年前にある発見によって危険な団体ではと疑うようになりました」


「発見?」


「これを……組織の方から持ってきました」


 組織から……テーブルの上に置かれたのは銃弾、しかも全体が軽く緑色に光っている。


「まさか……魔石を使った銃弾なの?」


「三人はどう?感じる?」


 精霊三人娘が首を縦に振って答える。つまりこれが魔石を使った弾丸ということで間違いない。


「これはどこで?」


「聞いたことがありませんか?どこかの国が崩壊したニュース」


「ああ。そういえばそんなニュースが……ってことは」


「その国から見つかりました。その組織の関係者が裏で暗躍しているのも分かっています。そしてその関係者が……先ほどの怪しい二人組の内の女性の方でした」


 その情報を聞いて、各々感想が漏れだす。まさか国を転覆させるなんて、それってテロリストじゃないのかな?僕としては小説のネタが増えて嬉しい反面、いつ暗殺されないか心配になってくる。


「とにかくラエティティアも魔石を持つ集団で確定と……」


「そうなりますね」


 ソフィアさんはニコニコして答える。


「ソフィア?これって俺が大統領から聞いた内容以上の情報じゃないのか?」


「いえ?これは先日ですが大統領にも伝えましたよ。もう私達も彼らの援助に最大限の助力するために全て打ち明けてますから」


「……いいのか?結構、お古い組織だろう?」


「知ってるのに知らないふりしてたんですね?あなたもタチが悪いのでは?」


 二人がドラマの悪役がするような怪しい笑みを浮かべている。今、総理と大使の壮絶な駆け引きが僕の目の前で繰り広げられている。


「……少々、お尋ねしてもいいですか?」


「ユノ様何か?」


 すると、食事をしながら聞いていたユノが箸をおいて2人へ疑問になっていたことを訊く。


「薫はこちらでは平民の立場です。そして今日初めて、こちらの世界でかなりの権力を持つお二人と会談という立場になります。そうですよね?」


「ええ」


「そうなると初めて会った薫に全幅の信頼を寄せているということになります。わざわざ極秘の情報をこんなあっさりと話されるほどに……我々、王家の住人でも多少は疑ってましたよ?」


 ユノの視線がいつもと違い鋭い。言われてみればそうなのだが……あれ。疑ってたの?王様と初対面の時そんな風には見えなかったけど?


 ユノの質問に二人がしばらく黙ってしまう。沈黙の時間がしばらく経つといきなり二人が笑い出す。


「何かおかしい事でも?」


「いや。ユノ様のおっしゃる通りです……信頼しているのは彼らがあまりにも無欲だったからですかね」


「それは私もですね」


「薫達が無欲なのと何の関係が?」


 その意味は何となく……いや、僕としてはかなり分かる。すでに僕らの持つ色々な物の利用価値がヤバイのだから。


「……軍事への転用、レアメタルと言われる金属の不当販売とかか?」


 僕の考えていた幾つかをカーターが呟く。その言葉に皆が驚いている。


「カーターからそんな言葉が……」


「泉と良く魔法の練習の際にこっちの情報は聞いてたからな。金貨があっちではかなり高価な物になるのに売れないってぼやいていたしな」


 泉に皆の視線が一気に集まる。


「売ってない!!売って無いからね私!!というより薫兄が言ってたじゃん!売ると不味いって!カーターさんも変な事を言わないで下さいよ!!」


「すまない。ただ、そんな事をこちらでしていない二人だから信頼したってところじゃないのか?」


「それもありますね」


「それ以外にも?」


「まずは順を追ってから話しますね。最初に軍事転用と考えるならまず、噂の召喚魔法です。泉さんの持つ邪霊神セイレーンを敵国の海洋艦隊に使ったらどうなると思いますか?」


 セイレーンの能力を知っているこちら側の表情が暗くなる。どうなるかなんて分かっている。空泳ぐ魚の群れによって船を掴んで折れるまで叩きつけたり、大量の魚の群れの重さで無理矢理沈ませる。またはミラージュによる同士討ちという一方的な蹂躙、ミサイル攻撃で撃退したと思ったら今度は第二形態での一方的な串刺しによる殺戮。これがこの前のような港湾で使われたらゲーム設定通りに町一つを潰し、大量の犠牲者を生み出す。


「もし、戦闘機に対して薫さんたちの雷の召喚魔法である雷霆・麒麟を呼んだら?」


「いや?それは問題無いんじゃないのか。雷なんて車と同様に表面を流れて……」


「二井。その雷を槍状にして光の速度で何十発も敵に撃ち込める巨大な銃弾としたらどうする?しかも麒麟自身は光の速度で動けるとしたら?トドメに雷という巨大な悪魔を丸焼きにするレーザー砲を放つとしたら?」


「……ご愁傷さまだな」


 警視総監である二井さんが僕を見てくる。うん。明らかに危険人物ですよね僕たち。


「そしてポーションなんていうほとんどのケガを治す薬。ハイポーションに関しては無くなった腕さえも治してしまう。そしてそれをアイテムボックスに大量に詰め込んで、皆さんの実力なら戦場の第一線に補給もできる」


「そんな戦争なんて……」


「あくまで戦争で使うならこんなところです。もっと実用的な考えなら主要人物だけの暗殺を考えてみましょうか?一人の魔法使いが魔石によって無限起動が可能なAI搭載型の小型バトルドローンを無数に連れて来たら?」


「……恐怖ですね」


「他国が妖狸を注視するのはそこにも関係します。あれで普通の服を着て一般人に紛れていたら分かりませんし、どんな装甲車に乗っていたとしても獣王撃で車ごとぶっ飛ばされるかペチャンコにされる。それはまさしく最強の暗殺者です。しかもその暗殺者は空を飛んで逃亡できますしね」


「しないですよ!?」


「あくまで軍事として悪い事に使ったらですよ。……それで次にですが極秘に魔石を使った発電所が無数に日本で作られたとしたらどうなると思います?」


「総理である俺の前で言うのか?それを?」


「だからこそ彼らに全幅の信頼が出来るという物では?」


「それもそうなんだが……」


 総理が目を瞑り、首を下に向けて大きなため息をつく。すると今度は総理が話始める。


「もし、そうなったら一気に他国からの石油の輸入量が減るでしょうね。そうなったら石油を多く輸入している中東が日本以外に売るために値段を下げる。逆オイルショックが起きてアメリカもその余波を受ける……ってところですか?」


「まあ、考えられる仮説の中の一つですね」


「さらに、彼らに頼んでレアメタルをグージャンパマからこっちへ持ち込んだり、笹木クリエイティブカンパニーで作ったアクアゼロによる工業用水からのレアメタルを回収をしたりして他国へ輸出。日本は貿易で儲け、世界の物価には影響を及ぼす」


「それによって経済も荒れるでしょうね♪」


「……とまあ簡単にはいかないだろうが、彼らにはそれだけの力がすでにあるってことさ。しかし、この約半年間の行動を見ると、グージャンパマでは各国の迷惑にならない程度に適度に仕事をして正当な報酬をもらっているし、こっちでの活動は基本的に無償。笹木クリエイティブカンパニーから言われなければ、魔導工学によって得た研究成果による利益も要求しない有様」


「総理の言う通りで、これだけ無欲な人達なら問題無いかと……それに」


「それに?」


「お二人に何かしたら、グージャンパマの全ての国を敵に回し、かつあちらへと行く通行手段も無くなる。仮にお二人を亡き者にして依然と変わらない世界にしようと企んでもこっちへ来れるあちらからしたら意味の無い事、しかもそれが魔族となる者達ならこの世界は滅亡の危機になるでしょうしね」


 そう言って、ソフィアさんは一回お茶を含む。そして少し気持ちを落ち着かせた所で結論を述べてくれた。


「という訳です!既にお二人には絶対的なアドバンテージがあるのです。それこそ逆に私達に何かしらの要求をしてふっかける事が出来るくらいにです!」


「つまり……手遅れ?」


「はい♪」


「そういうことだ。もし対策を打つなら君とカーターとサキ。この三人が出会った直後を潰さなければいけなかったってことだ」


 ソフィアさんと総理が同時に返事をする。すでにこっちの世界を知ったグージャンパマの人々を止める事が出来ない以上、今さら僕たちに何かしようとしても意味が無いってことか。


「それなら薫達に媚びを売って、より多くの利益を得た方が得策という訳ですね?」


 ユノに訊かれた二人は黙って頷いた。


「それなら念押しですが……今、私は薫とお付き合いさせていただきます。もし彼の身に何かあったらビシャータテア王国はそれなりの対応をしますので」


「分かってます。お二人がラブラブなのは先ほどから分かりましたから」


「こちらも法を犯さなければ、手は出しませんよ」


 分かりました。とユノは言って僕の方へと笑顔で振り返る。


「……へ?付き合っているのか?」


 すると二井さんがその言葉に反応する。


「はい。何か?」


「ユノ様。お訊きしたいのですが……ご年齢はおいくつで?」


「17歳ですが?」


「……薫さん?」


「してないですから!!ちゃんと法を遵守してます!!」


「警視総監さん。そもそも薫兄はすでにお互いのご両親の許可をもらってるので何があっても問題無いです!」


「泉は黙ってて!?ややこしくなるから!」


「二井の言う通り、30代の男性が17歳の未成年を……そう言われると確かに気になるよな……」


「だろう?」


「ふざけないで下さいよ~~!!」


 いきなりこんな話をされた僕は、さっきまでのシリアス展開を返せ!と二人に対して怒るのだった。

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