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132話 浅草散策

前回のあらすじ「総理とエンカウント」

―「仲見世通り」―


「まずはお団子!特に有名なきび団子ね!」


 泉がそう言うと僕の鞄の中にいるレイスが、オー!と言って手を上げている。他の精霊も同じことをしているのだろう。


「ふふ。楽しそうですね」


 異国の女性がこっちを向いて初めて喋りかけてくる。


「ええ。それで……こちらの方は?護衛とも違いますよね?それに……テレビで見たことがあるような?」


「ああ。こちらの女性は……」


「ご紹介が遅れました。私はソフィア・ウィリアム。今はアメリカからの大使として日本に常駐しています。どうぞよろしくお願いいたしますね……妖狸さん♪」


「……アメリカにはバレているんでしたね」


「ああ。それに今回の件で協力も仰ぐために紹介したかったしな」


「協力ですか?」


「総理。そちらは私から」


 泉に皆の案内を任せつつ、僕たちは目的の店へと歩きながら話を聞く。


「あなた方の身の安全です。すでにご存じだと思いますが、各国が妖怪を名乗るあなたがたを血眼になって捜しています。そこで日本と協力してどうにかしようと思います」


「具体的には?」


「情報共有と操作ですね。今、日本にいるスパイに嘘の情報を流していかにもここが怪しいという具合で……まあ、後は頃合いを見て情報の開示ですかね」


「え?それは……」


「皆さんが不利になるようなことにはしません。率直に申し上げて私達も魔石の交渉をしたいですしね。ただ……世界の仕組みを変えるだけの力のある魔石をいつまでも公にしないというのは混乱を生みかねないので……」


「徐々に情報を流して、他国にそれに対応できるように働きかける?」


「まあ、だいたいそうですね。この魔石のせいで国家バランスの崩壊。それを起因とした戦争、経済の大混乱。起きそうなことは幾らでもありますね。だからこれらが起きないようにかなり早い段階で多くの国に公表。世界規模の組織を立ててこちら側の魔石を管理をする」


「上手くいくんですか?」


「分かりません。なんせ数十年規模で考えていますから。まあ、異世界と魔石の各国への公表は2、3年以内と考えていますけど。それ以上は伸ばすと調査中とか通用しなくなってきそうなので」


「なるほど……」


 まだあちらの世界を見ていないのにここまで計画を立てているなんて、無計画に付き合っている僕とは大違いだ。


 ソフィアさんと総理の考えに感心する僕。ふと、冗談混じりであることを訊く。


「(……ちなみにですけど、よくある秘密結社とか裏の世界を牛耳ている組織とかは大丈夫なんですか?)」


 僕は小声で総理とソフィアさんに訊いてみる。というよりそんな組織が本当に実在するのか確認してみたかったというのが本音である。


「(ああ。大丈夫です!その幾つかある組織の一つに私、幹部として所属していますから!)」


「「(え!?)」」


「(ふふっ。だから安心して下さい。大統領も私の組織も全力で抑えますので)」


 総理も思わず驚く衝撃のカミングアウト。そして妖艶な笑みを浮かべたソフィアさんを見て、思わず僕と総理は顔を見合わせるのだった。


 果たしてこれは真実なのかどうか……まさに、あなた次第なのだろう。というより、これが本当なら僕たちの事を知っている人物って意外に多いのかな?それに、ここ小説のネタにしたら気付かないうちに裏で消されるんじゃ……。そんな考えを頭の中で巡らせていく。


「薫兄達!お団子は何を食べる!」


 そんな、話をしていたら、どうやら目的のお店に着いていたようだ。


「ひとまずこの仲見世を楽しみませんか?難しい話はそれからとうことで」


「……そうですね」


 ふうー。とため息をつきながら同意する総理を見て、僕も首を縦に振るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ1時間後―


「満喫したのです♪」


「抹茶ソフト……お茶の味が濃くて斬新だったわ!」


「あの滑らかな食感も良かったッス!」


 精霊三人娘がお喋りをする。あの後隙を見て、僕の持つ鞄に集まってお喋りを楽しんでいる。総理はカーターと泉に話を聞いて、ソフィアさんはコンジャク大司教と会話をしている。そしてユノは……。


「ふふ……♪」


 いつも通り鞄を肩にかけていない僕の腕に抱き付いています。女性の胸って柔らかいな……。周りの男共から羨望の目が……あ、はい。そこの鼻から血を流している女性は百合の方ですね。ご苦労様です。


「お父様たちにもお土産が出来て良かったです」


「まあ、あれを全部、食べるのは……ね」


 レイスたちが立てた予定で食べると、お腹がすぐに一杯になってしまうのでお土産に出来る物は全てそれにすることにした。


「精霊三人娘は全て食べたのには驚きだけど」


「流石に私もどこにはいってるのか疑問ですね…………それはそうとして、この後はどうするのですか?」


「えーと……この後、どうしますか?」


 僕は前で話をしている総理にこの後の予定を尋ねる。


「うん?ああ、それなら予約しているお店がこの近くにあるから、そろそろそこへ向かうとしよう。その中ならゆっくり話が出来るしだろうしね」


「わかりました。それではそこまでたっぷりデートを楽しみましょう♪」


「デートって」


「じゃないのですか?」


 そう言って、ユノがこちらの顔を覗いてくる。うう……眩しすぎる!思わず顔が赤くなりそうだ。あ、そこの人ハンカチを口で引きちぎらないで下さい。


「薫が頬を赤くすると余計、イジメたくなるというか……」


「どんどん悪さをしたくなるッスね」


「なのです」


 精霊三人娘が変なことをいっているが今はしないで下さい。その後、目的の店に着くまでユノと僕はそのままつかの間のデートをするのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「仲見世から少し離れた場所にあるお寿司屋さん」―


「おう。来たか!」


 仲見世通りから外れた路地裏にあるひっそりと暖簾がなびいている少し古そうなお店。中へ入ると高級感を思わせる内装、そして店主とお客さんが一人いた。


「ああ。それと……お前、酒を飲んでるならこっちに来て案内してくれ」


「俺は非番だからな。今日は久しぶりに昼間から飲みたいんだ」


「まったく。警察代表として来てもらってるんだからな?」


「え?警察代表?」


 このお酒を飲んでいる白髪男性が?


「ああ。君が妖狸か。私は二井。警視総監だ」


「うわ。凄い……。って、あの?」


「店主には事前に話している。俺とこいつ。そして店主は高校時代の悪友なのさ」


「お前が頼むから、店員には休みを出して今日は俺一人だ!で、何にする?」


「お前がオススメするネタで握ってくれ。特にこの6人にはこっちの魚のネタとか分からないからな」


「こっちって3人じゃないのかい?」


「6人だ。この鞄に後、3人いる」


 総理が僕の鞄に親指でを使って指差す。その鞄から精霊三人娘が頭だけをひょっこりと出す。


「ははは!そういえば妖狸は妖精を連れているのをすっかり忘れてたぜ!」


「私達は精霊よ。それでテーブルの方に座っていいかしら?」


「ああ!今回は特別だ。テーブルの上に座ってもらっていいぜ!」


「ありがとうなのです」


 そして、僕たちはそのまま、幾つかのテーブルに別れて座った。


「それと息子とその連れも来るからよろしくな」


「ああ。それじゃあ握っていくぜ」


「頼む……じゃあ、食事しながらこれまでの経緯を話してもらっていいかな?」


「はい」


 僕はお寿司を食べながら、カーターたちに会ったあの日からこれまでの事を詳細に話した。他の皆も時折話に混じって説明をしてくれた。すると。


「こんにちは。薫さん」


「ユノ様、お疲れ様です」


 別の場所で説明をしていた紗江さんたちも休憩の為にやってきた。当然、総理の息子である榊さんも。


「お疲れ。父さん」


「何。ただぶらりと店を巡っていただけさ。それよりそっちはどうだ?」


「ショックが多すぎて皆、頭を抱えていたよ」


「そうか……まあ、当然と言えば当然だよな」


「……誰と話をしてたの?」


「経済界の重鎮だったりどこか研究所のトップとか……俺の知り合いでかなり口の堅い数名を集めた。後はアメリカの方からも……な」


「信頼できる方々ですよ?」


 ソフィアさんがお茶をすすりながら答える。その中にあなたが所属する秘密結社の会員は何人いるのか……。そんなことを考えていると別のテーブル席に紗江さんたちが座る。


「今後、笹木クリエイティブカンパニーは最先端の魔導工学の研究施設になる事はとりあえず決まったよ」


「そうか。開発した商品は全てジョークグッズで売る気か?」


「そうですね……まさか、特許出願する訳にはいかないですから。ちなみにダミー会社と海外のサーバーを経由したりして、我が社が売ってるというのがバレないようにしてるのでご安心を」


「紗江さん……すごいですね」


 泉が紗江さんのやっていることに驚いている。紗江さんがやってることは会社の経理以外に会社の悪質なデマの処理とか情報セキュリティ関係も担当していたりする。


「あ。それで薫さん。問題が1つあるんですが……」


「来た?」


「はい。外国人の男女二名が薫さん宅と泉さんの家に来ました。庭師と工事作業員に扮した従業員が確認してます。連絡して警察の人もすでに巡回してくれています。それとこれがその二人ですが、薫さんの見た方々ですか?」


 紗江さんがスマホを取り出して画像を見せてくれる。そこには、ひだまりで見たあの二人だった。


「ラエティティアの奴らか……それとも」


「ヘルメスかですね」


「その……ラエティティアっていうのがヘルメスとまた違う組織ってことですか?」


「その説明をしてなかったな……ここにいる全員に聞いてもらいたいんだが……ソフィア?」


「はい……それでですが……」


 そこから今度はソフィアさんによるラエティティアの情報がこちらにもたらされるのだった。

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