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130話 ギルド証

前回のあらすじ「ギルド内で絡まれる」

―「イスペリアル国・冒険者ギルド内の客室」―


「ムーンラビットの素材……丁寧に剥ぎ取られてますね……」


「この牙を使えば、魔石用の武器を作るのにちょうどいいな」


「魔石はムーンラビットだから風属性の魔法を入れてもらったほうがいいな」


「ってか!ドレイクの素材は!?」


「あれは……」


 僕たちの前で各国のギルドマスターが素材の取引をしていく。決して多いとは言えない素材数だが各ギルドマスターが白熱した買取合戦をしているため、大分、時間がかかっている。


「すごいね……」


「そうッスね」


「うん」


「この位は普通なのですよ?前にドラゴンの牙が出た時は殴り合いで決まったそうなのです」


 なるほど。これでも平和ということか。


「なつかしいわね~。その時は私がいただいたけど♪」


 全冒険者ギルドの代表であるグランドマスター、ゼシェルさんはソファーに深々と座り、お茶を飲んでゆったりとしている。いや、あなたですか殴り合いで勝った人は……見た目はそう見えないんだけどな。


「いいんですか?参加しなくて?」


「うーん……まだ、嬢ちゃん達が倒した悪魔の素材が大量にあるのよね……あれ。ここで捌いているから、ムーンラビットは他のギルドに回すわ」


「ゼシェルと同意だね」


「カルクさんもですか?」


「ええ。商業ギルドのグランドマスターとは各ギルドの状態を考慮して適正な価格と配分を心掛けないといけない存在ですから。この前の悪魔騒動での素材の利益が出ているので今回は他に回そうかと。それに今回の一番のアレはかなり慎重に扱わないといけないですから……」


「カーバンクルの魔石ッスね」


「ヴァルッサ族長に訊いたんですけど、これを見たのはかなり久しぶりだって言ってましたけど……」


「確か……ガルガスタ王国の前王を捕える際に砕いたはずよ。それでもし、値段をつけるなら……一個、金貨200枚からでしょう」


 その値段を聞いた僕たちは手に持っていたカップを落としかねないほどに驚いた。


「セイクリッドフレイムという強力な魔法をすでに内蔵済み。これを無暗に市場に出したら大変な事になるわね……カルクはどうする?」


「ええ。それで冒険者ギルドで預かって、Aランクのみ所持可能ということにしたいのですが」


「このムーンラビットが終わったらね。他に人も文句は無いと思うわよ?」


 ゼシェルさんはそう言って、白熱する素材の買取風景を眺めるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―1時間後―


「いや~!いい買取をした!」


「ドレイク……欲しかった。ガルガスタ国の奴らズルいだろう!」


「いや。あれ2日前に倒されて解体中だからな?」


「となると……素材は後で薫さん達に渡る。売るとなれば一番近い私達のギルドに!!」


「「「ビシャータテア!お前ら利益上げ過ぎなんだよ!!」」」


 ビシャータテア以外のギルドマスターたちが立ち上がり目に涙を浮かべながら力説している。中には血涙をガチで流しているけど、あれはドルコスタの……冒険者のギルドマスターだっけ?こう人数が多いと分からなくなる。するとゼシェルさんが手を、パンパン!と叩いて会話を止めた。


「まあ、色々話があるとは思うけどそこまでよ。それでカーバンクルの魔石は先ほど話したように、全てのギルドに均等に配布。Aランクの資格がある者に対して販売または貸出するでいいかしら?」


 他のギルドマスター全員がそれに同意する。商業ギルドだと持て余すとのことで、カーバンクルの魔石は冒険者ギルドで管理・販売してもらう事で決まった。


「そして……最後に冒険者ギルドランクにSランクの追加、そしてこの4人へのSランク認定のギルド証の発行。反対意見あるかしら?…………無いようね」


 ゼシェルさんがエグゼクティブデスクに近寄り、その上に置いてあった何かをこちらへと持って来る。そこには2枚のカードとそれを小さくした同じ枚数のカード。


「それじゃあ、全冒険者ギルドの承認を得られたため、これをあなた方にお渡しします」


 僕たちはそれを受け取る。カードはでかでかと大きな一文字が左端に書かれており、これがSランクの意味なのだろう。


―薫は「ギルド証(Sランク)」を手に入れた!―

内容:冒険者ギルドの依頼を全て受けることが出来ます。また、ギルドマスターから直に依頼が来ることもあるので、手が空いているようなら引き受けてあげましょう。


「これは悪用されると大変だから無くさないようにしてね。それと再発行の際には銀貨1枚がかかるから要注意よ」


「分かりました」


「やったー!私もこれで上級ハンターの仲間入りだー!」


「いや。それゲームッスから……」


「これってアイテムボックスに入れておいてもいいのです?」


「ええ。魔法で加工はされいるけど、アイテムボックスには入れられるわ」


「じゃあ……薫。お願いします」


「分かった。僕も入れとこう……」


 僕はレイスのカードを受け取り、アイテムボックスに収納する。


「という訳で、今日の集まりは以上で~す。お疲れさまでした♪」


 ゼシェルさんの終了宣言を聞き、ぞろぞろと部屋を出ていこうとする。


「あ、すいません。ちょっと待って下さい」


 僕はアオライ王国の商業ギルドのマスターを呼び止める。


「あ。あれですか?」


「はい……」


「……それでどれほど?」


「こんな所でどうです?」


 僕は米袋サイズの大きなミスリル鉱を出す。


「え?こんなにですか!?」


「多かったですかね?」


「いえいえ。多い分につきましては、不穏な動きがあったら逐一お知らせするということで」


「よろしくお願いします」


 そして僕とアオライ王国ギルドのマスターは小さく笑い合う。


「何か、邪悪なオーラが見えるね」


「いい買い物をしたのです!」


「レイス……顔が怖いッスよ」


 その後、アオライ王国のギルマスから聞いた情報には、男としてこれをやられたらヤバイ!というような物もあったので、あの女王には用心しようと心に決めるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―薫達がムーンラビットを狩っている最中「某マンション・拠点」ミリー視点―


「まさか……」


「どうしたの?」


 私はダンベルを置いて、汗を拭きつつカイトに何があったのかを訊く。


「あのお店にいたウェイターなんだけど」


「何?あの子に一目惚れ?あなたそんな趣味が……」


「違うって!あの子、笹木クリエイティブカンパニーの社員だった」


「へ?だってあの子。あのお店でアルバイトしてるって」


「これ」


 パソコンには、笹木クリエイティブカンパニーの従業員名簿が載っており、そこに彼の名前と写真が載っていた。


「それともう一人。こっちも同じ日に入社になっている……あのバスジャック騒ぎの後でね」


「それって……」


「恐らく、体型と髪から考えて妖狸の方がこの薫で妖狐は泉という女性だろう。つまり妖狸は女性に扮していたってことだ。すると最初の事件もこれで納得のいく仮説が立つ」


「まさか、いたの?この薫って子は」


「ああ。行員が、連れ去られた女性のような男性がいる。って話をしてくれたからね。恐らくは」


「とっさに妖狸に変装して、やってしまったと?」


「ああ。だから世間には急に現れたような感じになってしまったのだろう。そして妖狸の変装道具は……」


 そう言って、カイトがアイテムボックスから飲み物を出す。


「こんな風に収納したんだろうね」


「魔石はネックレスとかに嵌めて違和感のないようにしたりすれば警察のチェックも擦り抜けられるということね」


「そうだ」


「……ねえ?」


「うん。何だい?」


 カイトが飲んでいた飲み物を口から外す。


「つまり、ドローンを出した時点で私達のことバレたんじゃないのかしら?」


 私は指を、パキパキと鳴らしながら怒気を込めた口調でカイトに尋ねる。


「……いや。大丈夫だよ。そんなことで……」


「ドローンを聞いた時、いい反応してたわよあの子?」


「…………」


「どうするのよ!このバカカイト!!」


「いや!ちょっとタンマ!!だって分かるはずが!!」


「問・答・無・用!!」


「ああーー!!!!」


 私はカイトをパワーボムで床に叩きつける。


「ふう~……」


「殺す気か!!」


 カイトが頭を擦りながら体を起こす。全く頑丈な体である。


「どうするのよ?」


「アイ・コンタクトという魔道具がすでに販売された。海外のサーバーを通したりペーパーカンパニーを使用したりして出所は具体的には不明だけど……間違いなく笹木クリエイティブカンパニーだろうね。そして妖狸と妖狐も何者か断定出来た。となるとすることは一つ」


「いよいよ侵入してトレース作業ね」


 私はクローゼットから例の物を取り出し、それを目の前に構える。スコープの先にはカレンダーが見える。


「魔法使いに出会ったらこれでやるわ」


「出来るのかい?」


「油断してプロテクションをかけてなければ楽勝よ。体に風穴を開けられるわ。まあ、鉢合わせはしないでしょ?」


「当然。リスクは回避するものだからね。っと連絡か」


「……二人共?聞こえますか?」


 カイトがパソコンを操作するとアリーシャ様の声がしたので慌てて、こちらの顔が見えるような位置に立つ。


「それで進捗は?」


「妖狸と妖狐らしき二人の住所が分かりました。準備が出来次第、侵入します」


「そうですか。なら、お願いしますね」


「「はい!」」


「……これで、やっと我々ラエティティアの悲願を叶えることが出来る」


「やっとスタートラインですね」


「ええ。そうね」


「……では。期待してますよ二人共?」


「「は!」」


 私達は右腕を胸に当てて敬礼するのだった。

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