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127話 ホットサンドで一息

前回のあらすじ「雷刃は結構な拷問技」

―「ガルガスタ王国・サルーシャ村」―


「……う…ん?」


 僕が目を開けると、隣のベットで泉。チェストにある小さいベットではレイスとフィーロが寝ていた。それを見た僕はゆっくりと起き上がり、周囲を確認する。


「そういえば……ここで休ませてもらったんだっけ……」


 昨日の事を思い出した僕はベットから起き上がり、巫女服ではなく普通の服に着替えて外へと出ていく。


「あ、勇者様。おはようございます」


「よう」


 外に出ると見張りをしているラブカさんとゴルゴッサさんに遭遇する。


「おはようございます。それでどうですか?」


「異常は無いですよ。それと一部の冒険者と兵士達がやってきて、見張りに回っているのでもう大丈夫かと」


「そうですか」


「お。起きたかい?」


「おはようございますヒパーニャさん。朝ご飯は?」


「まだだよ。それで……」


「作りますよ」


「助かるよ!あんたがいるうちは異世界の上手い料理をしっかり食べないと!」


「お姉ちゃん!」


 走ってくるかケモ耳少女……昨日、助けた子がこっちに走ってくる。


「お姉ちゃん?何するの?」


「これから朝食を……」


「菓子パンみたいに美味しいのを作るの!?」


 ケモ耳少女がキラキラとした目でこっちを見てくる……どうしよう。ここでこの子の分も作ると他の人たちも来るだろうし……かといって、このキラキラと光る期待の籠った目を前に作らないというのも……。


「ダメなの……?」


「うーーん。材料がね……」


「じゃあ、何か使えないか訊いてくるの!」


 そう言って、住人が避難場所にしていた一際大きい家である村長宅に走っていってしまった。


「……どうするんだい?」


「材料次第かな……」


 すると、今度は村長も一緒にやってくる。


「すいません。私共の分も作っていただけると聞いて……」


 ……何か話が大きくなっている!ど、どうする!?


「でも、材料が……」


「それなら、こちらはどうですか?」


 村長がそう言うと、ケモ耳少女が抱えていた物を見せてくる……卵に干し肉……チーズに食パン……え?


「なんでこのパンが?」


「私共の村では小麦栽培をしてまして、それを使ってこのようなパンを作っています」


「あ~……これここの村のパンだったんだね。アレンジしやすいパンで有名だね」


 これなら……朝食のメニューとして考えてたアレを……。


「どうなの~?」


「いける!これならこっちの一部の食材も使えば!」


「お願いできますかな?」


「できればお手伝いがいると助かるんですが……」


「分かりました。そうしたら村の女衆に手伝わせましょう」


「ありがとうございます!そうしたら……」


 僕は村長さんにやって欲しい事を伝えて、朝食の準備に入るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから一時間後―


「ふぁ~あ~……おはよう薫兄」


 私服に着替えた泉がこっちへやってくる。


「おはよう。二人は?」


「ここにいるのです……」


「ねみぃ~……」


 泉の肩からひょっこりとレイスとフィーロが出て来る。


「それで……どうしたのこれ?」


「いや……色々ありまして……」


 僕の眼前では、村人たちが美味しそうに朝食を取っている。僕はそれを見つつ手に持っているホットサンドプレートを休みなく動かし、ホットサンドを大量生産している。


「私も手伝うよ」


 そう言って、泉もホットサンドプレートをアイテムボックスから出す。


「何で持ってきてるの?」


「焚火で肉まんをホットサンドしたかったの……」


 さらに市販の肉まんをアイテムボックスから出す。そういえばちょっと前にアニメでやってたな。


「で、ホットサンドの中身は?」


 泉がエプロンを着て、コンロの前に立つ。


「タマゴと干し肉にチーズを細かくして、マヨネーズにコショウと塩で味付けして混ぜた物を挟んでるよ」


「これね……じゃあ、それを食パンに挟む作業をすればいい?」


「うん。お願い」


「すいませーん」


 泉と話をしていると、コンロの前に兵士と冒険者グループの人がいた。


「こちらで朝食を作ってもらっていると聞いて……」


「今、焼きますね」


 僕はパンにバターを塗り、それをプレートに置いて具材、そしてまたパンを置いて挟み、それを火にかける。


「薫兄」


 泉が用意できた物も受け取り二つ同時に火にかける。およそ1~2分程片面を焼いたらひっくり返してもう片面を焼く。その間にバターの焼ける匂いが辺りに充満していく。待っているグループの人たちを見ると、まるで子供のような目でこちらを見てくる……その中でトラの獣人だけは獲物を狩るような目で見てくるのは怖いんだけど?いや、そんな血眼で見つめないで欲しいんだけど?そんなことを考えつつ、プレートを開けて焼き加減を確認する……よし!これを皿に……。


「どうぞ」


「ありがとう!」


「俺も!」


「順番でお願いしまーす!」


 僕たちは協力してホットサンドを増産する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―焼き続ける事1時間後―


「終わった~~……」


「お疲れ様なのです」


「大盛況ッスね」


「そうだね……あ~お腹空いた!」


 完全に眠りから覚醒したレイスとフィーロの手伝いもあって、何とか全員分の朝食を作り終えた。


「とりあえず、僕たちの分を作ろうか……」


「でも、具材が……」


 用意した具材は確かにすでに使い果たした。それはホットサンドを大量生産してる時に気付いていたので僕のアイテムボックスから出した具材ですでに準備済みである。


「卵とベーコン……塩もみしたキャベツにマヨネーズそして溶けるチーズ……」


「あ、それ勝利の方程式!絶対美味しいパターンだ!」


「うまそうッス!」


「おいしかったのです!!」


「レイスは実食済みなのね」


「よく朝食に作ってくれるのです」


 僕はそれらパンで挟んで焼いていくのと同時に水を魔法で沸騰させてインスタントコーヒーを入れる。


「よし出来た!」


 僕たちは腰かけられる場所に座り、遅い朝食を取る。


「あ~……ホットサンドとコーヒー……いいね」


「うまいッスね……」


 泉とフィーロがまったりとした雰囲気で朝食を取っていく。


「……壊れた個所とかの修理をしてるのです」


「そうだね」


 すでに朝食を終えた村人は農業に出たり、ドレイクに壊された家の修理をしたり仕事を始めている。


「にゃあ~」


 声のする方を振り向くと、カーバンクルがホットサンドを物ほしそうに見つめてくる。


「あ~……君も食べる?」


「にゃあ!!」


 僕は食べている物をちぎってカーバンクルにあげる。カーバンクルは勢いよくそれを食べ始める。


「薫兄。カーバンクルに分けると足りないよね?肉まんも焼こうか?」


「うん」


「じゃあ、コンロ借りるね」


「りょーかい……ってあれ?」


 泉が仮説の台所へと向かうのを見送って、すぐさまカーバンクルへと振り向くとさっきまで食べていたカーバンクルがいない。食べ終わってどこかにいったのかな?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―お昼過ぎ「ガルガスタ王国・サルーシャ村」―


「それじゃあ、あたいらは帰るとするかね」


「皆さん!この度は村の為に、本当にありがとうございました!」


 村長が深々とお辞儀して礼の言葉を述べる。それと同時に見送りに来た他の村人もお辞儀をする。朝食を終えた後、少しだけ村のお手伝いをした僕たちは既に必要量以上のムーンラビットの素材、さらにドレイクの件の報告もしないといけないということでここから王都に戻ることになった。ちなみに巫女服にお着替え済みである。


「どういたしまして!大変だと思いますけど頑張って下さい!」


「はい。勇者様たちも」


「お姉ちゃ~ん!」


 すると、村の奥からケモ耳少女たちが二人がかりで大量に光る何かを持ってやってくる。


「ルビーちゃんがこれって」


「ルビー?」


「にゃあ~」


 ケモ耳少女たちの足元からカーバンクルがひょっこりと現れた。ああ。名前をつけたのね。


「ルビーちゃんにお願いされて集めて運んだの!」


「え?おいおいこれって……」


「カーバンクルの額にある魔石じゃないっすか!!しかもこの量!!」


 大きいざるに山盛りの魔石。


「ゴリ……これ金貨何枚?」


「一個金貨100枚として……だいたい5000枚か?いやそれで足りるのか……な」


 ヒパーニャさんがそれを聞いて放心する。ユニコーンの角に続いて、新しい聖獣の素材とは。


「どうするのです?」


「少しだけもらって、後は村の復興資金かな」


「もったいない!!新しい武器に魔道具……いや、これを機に冒険者を引退して男を……」


 手を震わせながらヒパーニャさんが力説する。


「そうだね。犠牲になった人の家族も大変になるもんね……」


「どうするッスか?」


「それなら私達、ヒパーニャさん冒険者グループ。そして村。3等分というのは?」


「レイスの言う通りそれがいい。ねえ?」


 僕が訊くと泉たちが頷いて、レイスの意見に同意してくれた。


「はあ~……ホントに欲が無いね~……ここでごねたらあたいらが悪党になっちまうじゃないかい」


 ヒパーニャさんはそう言いつつ笑顔だった。ゴルゴッサさんもチューサーさんも同じでこの意見に同意してくれた。


「ルビーはそれでいいの?」


「にゃにゃ!」


 当の本人も尻尾を左右に振って、ご機嫌そうな雰囲気をしている。どうやらいいみたいだ。僕たちはカーバンクルの魔石を3等分にしてお礼として受け取る。


「お姉ちゃーーん!ありがとーーう!!」


 助けたケモ耳少女たち、そして村人たちが手を大きく振っている。僕たちはそれらに対して負けずに大きく手を振りながら、村を後にするのだった。


「……良かったね!お姉ちゃん!」


「お姉さまッスね」


「言わないで!!どうしようか困ってたんだからさ!!」


―クエスト「ムーンラビットはなにを見て跳ねる?」クリア!―

報酬:ムーンラビットの素材一式、ドレイクの素材一式、カーバンクルの魔石20個程。ドレイクの素材は後でヴァルッサ族長から受け取りましょう。

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