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126話 ドレイク戦

前回のあらすじ「カーバンクルみーつけた!」

―「ガルガスタ王国・ムーンラビットの生息地(西側)」―


 ハグハグ……!!


「ほら。ゆっくり食べていいから……はい。お茶」


 僕は魔道具の水筒からコップへとお茶を注いで、ケモ耳少女へと渡す。


「ありがとう!お姉ちゃん!」


「……どういたしまして」


 僕、男!とツッコミたいところだが、何かあったのだろうボロボロの子供たちに言う気にはなれなかった。あの後、ポーションでケガを治療して、意識が戻った所で簡易的な食料として念のために持ってきていた菓子パンを与えたのだが……。


「……美味しそう」


 ヒパーニャさんがその甘い匂いに連れられて口から、ジュル!と音を立てている。僕はアイテムボックスからメロンパンを取り出す。


「どうぞ」


「サンキュー!!」


 ヒパーニャさんが袋を開けてメロンパンを一口食べる。その瞬間、目をキラキラさせながら、少女たちと同じように勢いよく食べていく。


「こんな甘いお菓子食べたの初めて!」


「うん!」


 再びケモ耳少女たちへ振り向くと、二人が互いに顔を合わせて笑顔を見せる。そこにカーバンクルが近寄ってくるのが見えたのだろう。食べていたパンをちぎってカーバンクルにあげて、その後二人してカーバンクルを撫で始めた。


「いや~和むッスね……」


「尊いわね……」


 次は双子コーデもありね……。と泉たちから何か不穏な言葉が聞こえたような……。


「そうっすね……」


「お前が言うと犯罪っぽいんだよ!」


 ヒパーニャさんが泉の言葉に相槌を打っていたチューサーさんのお尻に強烈な蹴りを入れる。その見事な蹴りに、チューサー!タイキック!という年末お馴染みのワードが出て来た。チューサーさんはお尻を押さえてその場でうずくまっている。


「け…けつが割れるっす……」


「安心しろ最初から割れてる……それで、お前らはどうしてこんな所で倒れてたんだ?」


 ここでゴルゴッサさんが話を戻した。ゴルゴッサさんに訊かれたケモ耳少女たちは食べる手を止めて話始める。


「わたしたち、村の近くにある花畑でランデルっていうお花を摘んでたの。そうしたら魔獣に襲われて……」


「いつもはあんな怖い魔獣なんて出ないのに……それにこれも持ってたの」


 一人のケモ耳少女がそれを見せる。紐で括り付けられているそれは細長く中央に小さな魔石が嵌め込められている。


「これって?」


「これは魔獣除けの道具だよ。うちらが狩っていたムーンラビットの骨を使って作るんだ。この辺りでは上位の魔獣であるムーンラビットの匂いがする場所に、他の魔獣は近寄らないんだよ」


「それでも近づいたってことは、ムーンラビットより危険な奴って事ですか?」


「そうなるね……」


「それで逃げ続けたら、この子に出会って助けてくれたの」


「炎を出して強いの!」


「そりゃ運がよかったね。聖獣カーバンクルに遭遇できるなんてね」


「カーバンクルって言うんだ!」


「ありがとね!」


 そう言って二人がカーバンクルを抱き上げて頬ずりする。その後、話を訊くとカーバンクルに助けられながらここまで逃げられたが、一晩中逃げてたせいで体力が尽きてあそこで倒れてたということだった。


「お二人に訊くのですが……どんな姿をしてたのです?」


「大きいトカゲだったの……でも、四つん這いじゃなくて後ろの足だけで立ってて……」


「それで……飛んでたの」


「ドレイクだと!!」


「ドレイクってやばい奴じゃないっすか!!」


「王都に連絡しないとね……」


「それってワイバーンッスか?」


「ワイバーンより小型で火は吐かない。サイズ的には成人した男性より一回り大きくかつ集団での獲物を狩る奴らだ。いつもなら山の方に住んでるんだが……時々、草原までやってきて、獲物であるムーンラビットを狩ることがあるんだが……」


「シュウウウ~~……!!」


 毛を逆立たせてカーバンクルがある方向を向いて警戒する。すると遅れてヒパーニャさんも耳をそちらに向けて警戒する。


「マズい……どうやらおいでなすったようだ……」


 何もない草原。空を飛んでいるそれは嫌でも目立っている。それを見たケモ耳少女たちはお互いに抱き合って体を震わせている。


「俺の先制攻撃で怯ませるっす!そうしたら……」


 ドレイクがどんどん近づいてくる。皆が武器を取り、臨戦態勢を整える。


「雷撃」


「サンダー!」


 ちょうど射程距離に入ったので空から雷を落として、撃墜させる。


「……へ?」


 その場に落ちたドレイクがよろよろと立ち上がる。


「鎌鼬!」


「ウインドカッター!」


 そこに、泉たちがまず風の刃を飛ばして胴体に傷を負わせる。そして僕たちは接近して鵺でその長い首を切断。頭を失ったドレイクの体はそのまま崩れるように倒れた。


「単体ならワイバーンよりマシだね」


「そうッスね」


「でも飛んでいる以上は脅威だよ。あれは」


「飛べるだけでも、困り物なのです」


 しかも、あれが集団となると厄介な相手かもしれない。


「……そういえばあんたらがいたんだったわ」


「あれ?ドレイクの討伐ってAランク相当のはずなんっすけどね……」


「それより強い悪魔を狩ってるんだから……まあ、問題なんてないな……」


 近づいてきたヒパーニャさんたちは武器を下ろして、僕たちの事を呆れた目で見てくる。


「お姉ちゃんたち……すごい!!」


「雷がピシャーン!って」


「そうだねー……すごいねー……お伽噺の魔法だもんねー……」


 ヒパーニャさんがケモ耳少女たちへ適当な相づち打っている。まあ、しょうがないか……うん?


「他は?」


 集団でいるはずのドレイクなのに他がいない。


「そういえばそうだな。ドレイクは集団行動が基本のはず……」


「そういえばっすけど。この二人は村の近くの花畑でドレイクに出会ったって……」


 チューサーさんの言葉に全員がある最悪なシナリオを思い浮かんだ。


「あんたらの村はどこだい!?」


 ヒパーニャさんが地図をその場に広げて二人に尋ねる。


「え?えーと……」


「サルーシャ。村の名前しか分からないの」


 ヒパーニャさんは、十分だよ!と言って地図を見始める。


「今はここだから……あっちだね」


「急ぐぞ!!」


「この子達はどうするっす?」


「僕たちが乗せるよ!来て!ユニコーン!」


 僕と泉はユニコーンをその場に呼ぶ。ケモ耳少女たちはその姿に感激しつつ、すぐに乗ってくれた。


「いくよ!!」


 そしてヒパーニャさんの声と共に村のある方向へと、僕たちは走らせるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後「ガルガスタ王国・サルーシャ村」哀れなドレイクの視点―


「この建物は死守しろ!!」


 堅イ殻ヲ持ツ不味ソウナ男共ガ何カヲ叫ンデイル。手ニ、チクチクスル変ナ道具ヲ持ッテイルガ……


「ギャアーー!!」


「うわぁー!!」


 尾ノ一撃デ簡単ニ吹キ飛ブ。弱イ。ソノ守ル物カラ食料ガ我ヲ見テ怯エテイル。実ニ美味シソウダ。


「ギャア!」


 アッチニイル奴ラガモウスグデ食ベラレルカ。シカシ、アッチハ男ヤ老人バカリデ美味クナイ。ヤハリ食ベルナラ。若イ女性ヤ子供。今ココニ隠レテル奴ラニ限ル。


「ギャアー?」


 誰カ来ル?後ロヲ向クト馬ニ乗ッタ。変ナ奴ラガ……。


「ギャアーー!!!!」


 仲間ノ一匹ニ何カガ突進シテ、仲間ノ上半身ガ吹キ飛ブ……今、何ガ起キタ?


「ギャ、ギャアアーー!!」


 猛烈ナ光ガ起キタ瞬間、仲間タチガ黒焦ゲニナリ地面ニ堕チテイク。ソコニ馬ニ乗ッテタ奴ラガ降リテ仲間ノ息ノ根ヲ止メテイク……何ダ?何ガ起キテイル?我モ急イデ空カラソレニ攻撃ヲスル。


「鵺、城壁!」


 スルト、何カ黒イ物ガ目ノ前ニ出来ル。尾デ砕コウトスルガ砕ケナイ。


「アイスランス!!」


 声ノスル方ヘ振リ向クト体ニ堅イ何カガ当タル。ガ、大シタ攻撃デハ無イナ。ウルサイ蠅ヲ落トス為ニ、スグサマ尾デソレヲ叩ク。


「きゃ!!」


 直撃……シタノカ?ソレニシテハ……。


「なんてね。グラビティ!!」


 我ノ体ガイキナリ地面ニ押シ付ケラレル!何ダ?一体何ガ!?ソレニコノ声ハ一体ドコカラ!?


「ギ、ギャガガ……」


 立チ上ガロウトスルガ……動ケナイ。何デダ?何ガ我ヲ押サエテイルノダ!?


「黒刀!」


 倒レテイル我ノ体ニ何カガ刺サル。シカシ、コノ程度ナラ……。


「雷刃……放電!!」


「ッギャアアアアーーーーー!!!!!」


 痛イ。痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ…………体……ガ…ヤ、ケ……。見、エタ……オ……ナ……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ガルガスタ王国・サルーシャ村」―


「ふー……」


 黒刀をドレイクから抜く。どうやら仕留めたようだ。


「薫!後ろなのです!!」


「呪縛!」


 後ろから不意打ちしようとしたドレイクを呪縛で地面に落とし拘束する。


「うおおおおーーーー!!!!」


 そこにゴルゴッサさんが猛ダッシュで近づき、ドレイクの頭を巨大な斧でカチ割る。そこから血が噴き出し。ゴルゴッサさんの体を赤く染める。


「ウインドカッターっす!!」


 チューサーさんが杖を振って地面に立っているドレイクに攻撃。しかし、ダメージはあまりなく、チューサーさんに攻撃しようと体の向きを変えた。


「姉御!!」


「ほらよ!!」


 そこに、ドレイクの視界にはいらずに無音で近づいていたヒパーニャさんがドレイクの片目をナイフで潰す。


「ギャアーー!!」


「チビメテオ!!」


 目を潰された痛みで悶えているドレイクにすかさず泉たちが上からアイテムボックスから出した小さい鉄の玉を超高速で落とし、その体に穴を開ける。


「もういっちょッスよ!!」


 それを4,5回程繰り返すと、ついにドレイクはその場に倒れ込み、動かなくなった。


「まだくるぞ!!」


 ゴルゴッサさんの方を振り向くと、飛んでいるドレイクがこっちに向かって体当たりを仕掛けようとしていた。


「ユニコーン!!」


「(はーい!!)」


 近くに待機していたユニコーンを呼んで跨った僕は、レイスと一緒に体当たりを仕掛けるドレイクへと近づいていく。


「ギャアーー!!」


こっちへと体当たりを仕掛けるドレイク。


「水破斬!!」


 僕たちは水破斬を発動させて、体当たりを仕掛けて来たドレイクを一刀両断にする。左右に分かれたそれはそのまま地面に激突し、ちょっとした轍を作りながら止まった。


「終わった?」


「みたいだな」


 ドレイクはまだいたのだが……仲間が大勢やられたのを見て逃げてしまった。


「追いかけた方がいいんじゃ!?」


「大丈夫だよ泉。これだけ派手にやられたんだ。あいつらが仲間を呼んで来るってことはないよ」


「むしろ、ここが危険だと伝わって他のドレイクも来なくなるかもしれないっすね」


「それならいいんだけど……」


「でも警戒は必要なのです」


「おーーい!!」


 僕たちが話をしていると鎧を着た冒険者らしい男性がこっちへと走ってくる。


「ラブカかい!とんだ災難だったね!」


「助かりました!ヒパーニャさんたちが来てくれるなんて!」


「こいつらにお礼を言いなよ。ほとんどのドレイクはこいつらが落として、あたいらはトドメを刺しただけなんだからね」


「皆さん……本当にありがとうございました!おかげで被害を最小限に止めることが出来ました!」


「犠牲者は?」


「最初に襲われた者達が数名……それと重軽症者が十数人程」


「そうですか……」


 何人かが死んだのは残念な話だ……でも、落ち込んでいる暇は無い。


「ポーションとハイポーションを持っています。ケガ人なら治療できます。」


「助かります!!あいつらとの戦いでポーションが尽きてしまっていたので」


「姉御!!俺はこの事をギルドに報告する!」


「頼んだよゴルゴッサ!!国の兵士にも来るように伝えてくれ!!」


「了解!!」


 ゴルゴッサさんはすぐさま馬に乗って、走り去っていった。


「夜になるのに一人で大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。ここら辺はうちらの庭だしね!……それよりだ。明日の昼にはこっちへ兵士も来るだろうからそれまではうちらで警戒するよ。ラブカもいいかい?」


「分かりました!すぐさま他のメンバーにも伝えます」


 そのまま男性は教会へと走っていった。


「助かりましたぞ」


 すると、今度は別の方向から老人の獣人が他の獣人を連れてやってくる。村の中でも一際、向こうの大きい家に隠れていたようだ。


「私はこの村の村長をやっている者です……なんとお礼を……」


「気にしないで下さい。困った時はお互い様ですから。それよりケガ人はいませんか?ポーションを持ってるので治療できますよ?」


「助かります。すぐに治療が必要な者の確認を致しますので……スマンがすぐに確認してくれ」


「はい!」


 一人のケモ耳男性が大きい家に戻っていった。


「すいませーん!この子達の親御さんいないっすか?」


 チューサーさんがカーバンクルと一緒に近くで待機してもらっていたケモ耳少女たちを連れて来た。すると、すぐさま家族がやってきて、抱き着いたり、ケガしていないか確認したりと無事だったことを祝った。


「薫!こっちに来てくれ!!」


「はーーい!行こうレイス!」


「了解なのです!」


 彼女たちが無事に親御さんの所へ戻れたのを確認した僕たちは、ヒパーニャさんが呼んでいる教会へと走りだすのだった。

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