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123話 キャンプ

前回のあらすじ「ミルクの安定確保」

―それから数時間「ガルガスタ王国・野営地」―


 あの後、数時間かけてユニコーンを走らせて今日の目的地である野営地に着いた。周辺は広々としたキャンプするにはうってつけの芝生ぐらいの草木しかない。ちなみに日は傾き始めている。


「誰もいないっすね」


「となると、ここにいる全員で交代での見張りだな」


 ここにいる人数は7人。


「じゃあ、僕とレイス、泉とフィーロで見張りかな?」


「そうだね。あんたら魔法使いだからそれがいいだろう」


「俺は一人でいい」


「じゃあうちは姉御と一緒にっすね」


「じゃあ、これで4組が出来るから……この砂時計が落ちたら交代ってことでいいかい?」


 ヒパーニャさんがポケットから取り出したのは、あっちでも見かけるような普通の砂時計だった。


「小さいけど、全部落ちるのに大分時間のかかる砂時計なんだ。4組だったらこれでイケる」


「それって魔道具なんですか?」


「ああ。比較的、安く手に入る魔道具だよ。なんせ用途がこのためだからね」


「そうか……こっち時計がないんだもんね……」


「時計?」


「僕が付けてるこれ。これで今の時間が正確に分かるんだ」


「え?マジ?」


「うん。」


 僕はヒパーニャさんたちに時計の仕組みを教える。


「はあ~……魔石を使わないでそんな事が出来るなんて……」


「すげぇ~っす……」


「そしたら……今回はそれも使って見張りするとしようか。順番になったら貸してもらえるかい?」


「いいですよ」


「そしたら、野営の準備します?」


「そうだな……日も暮れてるしな」


「だね。じゃあ、立てるとしようか!ゴリ!チュウ!」


 二人がいい返事してテントの設置を始める。ヒパーニャさんも焚火の準備を始めている。


「じゃあ……私達もしようか」


「だね」


「私も手伝うのです!」


「うちもかんばるッスよ!」


 僕たちもアイテムボックスからテントを出して設営を開始する。


「あんたたちのテント……大分デカいけど大丈夫かい?」


「まあ……多分?」


「手が必要なら言ってくれっす!」


「分かりました!」


 僕たちはそう返事してテントを組み立て始めるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから1時間後―


「……あんたら本当に初心者?」


「え?どうしてですか?」


「手慣れた様子で大型テントを組み立てて、泉の方はイイ椅子でゆったりしながらの編み物、薫の方は豪華な食事作り……」


「あ、ヴァルッサ族長から皆さんの分もお願いされたので準備してますよ。今日はシーフード焼きそばとコンソメスープです。お昼食べて無いから多めにしときますね」


 アイテムボックスからクーラーボックスを取り出す。凍結の魔法により食材の冷凍が可能なので事前にあっちの台所で下ごしらえして準備をしてきた。いつもなら炭を使って調理するのだが、捨てる場所とか問題になると思い、持ってきた火の魔石をバーベキューコンロに入れている。


「ああ、ありがとう。それは助かっ……じゃないから!」


「え?もしかして魚介類ダメでした?」


「そうじゃな~~い!!いや、むしろ魚介類なんてこの辺りだと高級だから嬉しいぐらいさ!……そうじゃなくて!あんたら初心者なんだろう?なんでここまで手慣れてるんだい!?」


「家族とよくキャンプしてたので……ここ最近してなかったけどね」


「体は覚えてるものね……」


「うちらも多少手伝ったッスけど……ほとんど必要なかったッスね」


「そうなのですね」


 子供の頃から泉の家族と一緒にキャンプに行っていた。その際にテントの建て方とか、キャンプの楽しみ方とかを教えられている。泉の両親が死んでから一度も行ってなかったが……問題無かったな。


「ここで仕上げの追いごま油……と」


 アツアツの鉄板の上にごま油を振りかけると、周囲に香ばしい香りが漂う。


「お、いい……匂い……」


「そうっすね……ここ最近、いい物食ってなかったなっすね……」


「そうだね……って!あんた魔獣が近くにいるかもしれないのに匂い……!」


「あ、大丈夫です。この魔道具使ってるので」


 この魔道具を買った理由は、野営の際に調理の匂いは魔獣を呼び寄せたりして不味いかな?っと思い買ったのだった。


「そういえばそんな物があったね。それなら安心……なんだけど何か納得いかない」


「そういえば薫兄?洗い物とかどうするの?ここだと洗えないでしょ?」


「これ」


 泉に訊かれた僕は上下にタンクのついたシンクをアイテムボックスから取り出す。


「何これ?」


「この上部タンクに水を入れることで蛇口から水が出るようになっていて、さらに、この右ハンドルのへこみ部分にこの魔石をはめるとお湯になる機能付き。で、汚水は下のこのタンクに溜まるから、事前に浄化の魔石を入れて溜まったら取り換え用のタンクと交換。その間に汚水の溜まったタンクは蓋をして、汚水が浄化されたら流す仕組みなんだ。」


「いつの間に用意したッス!?」


「この前、紗江さんに新商品の提案したら作ってくれて、そのお試し品。改善する箇所があったら言って下さい!って」


 僕たちも一応、笹木クリエイティブカンパニーの社員ということで今後の事業展開を考えた際にこのようなシンクを作れないかを紗江さんに提案。これを改良すれば水道が整って無い場所でも簡単に洗い物が出来る。ということで開発してみた。ただし、洗い物用の水をどこから調達するか、また、サイズが大きいのでこれをコンパクト収納するにはどうすればいいか。とか色々課題の多き品である。まあ、そこらへんは魔法使いでアイテムボックス持ちである僕たちには関係ない。


「何?この野営?」


「ご、豪華っす……」


「ああ……」


 ヒパーニャさんたちが驚いている中、最後の仕上げとしてきざみネギをかけて……。


「完成と。泉!テーブルお願い」


「はーーい」


 泉が椅子から立ち上がり、大きめのテーブルに椅子をアイテムボックスから出す。そこに僕は料理を配膳する。


「それじゃあ、夕食にしましょうか」


「「「……ああ」」」


 先ほどからツッコミ続けていたヒパーニャさんたちは何も言わず椅子に座るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―夕食後―


「ああ~……」


「っす……」


「幸せ~~……」


 用意していたデザートも食べ終わり、ヒパーニャさんたちはすっかりくつろいでいた。


「アイスクリームなんて用意してたッスね?」


「溶ける心配があるから初日じゃないといけないけどね」


「でも、美味しかったのです♪」


「薫兄の特性アイスクリームだからね」


「あれ……あんたが作ったんかい……緑のアレも良かったね……」


「抹茶アイスは初挑戦だけど上手く出来てよかったかな?」


 僕は食器の片づけをしつつ答えていく。ちなみにレイスがお手伝いしてくれている。


「そうえいば薫兄?ときどき思うんだけど……」


「うん?」


「何で異世界の小説ってプリンとかアイスクリームとか良く作ってるんだろう?」


「素材がシンプルだから……じゃないかな?材料がほぼ一緒だし」


 プリンもアイスクリームも基本的な材料は砂糖に卵、牛乳、香りづけにバニラエッセンス。後は生クリームを使うかどうかで滑らかさが変わるぐらいだ。ちなみにこれらもイスペリアルの料理教室で教えていたりする。


「そのせいか、最近ではビシャータテア王国だとプリンとアイスクリームを売っているお店も出始めてるのです」


「何!?あれが売ってるお店があるの!!こっちには何で無いのよ!!」


「さ、さあ……そこは?」


「プールで食べたチーゴが入ったあのアイスも良かったッス!暑い季節にピッタリだったッスよ……ヘックシ!」


 皆でお喋りしているとフィーロがくしゃみをする。ガルガスタ王国の季節は今は夏季なのだが、ここは高原地帯のため夜は涼しい。


「そろそろ夜も本格的ってことかい……そろそろ気合入れて見張りしますか!」


 ヒパーニャさんが頬を叩いて気合をいれる。


「……そうだな。で、誰が最初にやる?」


「私達でいいですか?途中で起きるとか出来なそうで……」


「そうッスね」


「そうしたら、次はアタイ達かな?」


「なら、俺はその後がいい」


「なら、私達は最後なのです。薫はそれで大丈夫なのです?」


「うん。むしろ朝食を作るのに、ちょうどいいかも」


「じゃあ……焚火の準備して後はそれぞれ就寝ということで構わないかい?」


 ヒパーニャさんの意見に皆が賛同する。


「……で、泉たちにお願いがあるんだけど」


 ヒパーニャさんが手を合わせてながら、泉に訊いてくる。


「……なんですか?」


「そっちのテントに泊めてくれないかい?あっちだと狭くて!」


「いいですよ!私たちのファミリー用でかなりデカいやつなんで」


「助かるよ!」


 そう言って、ヒパーニャさんが寝具を泉のテントに持ち込んでいく。


「今日は……広々として眠れるっすね……」


「そうだな。それに……気が楽だ」


 ヒパーニャさんたちのテントは大きいので1つ。そこに男女が一緒に寝そべるというのに二人は抵抗があったみたいだ。


「……あ!でも俺、薫さんの……」


「チューサーさん?変な事したら……薫兄に木に吊るされますよ?」


「……やっぱりやめとくっす」


「ゴメン。今のうちに仕留めていい?何か身の危険を感じたから……」


 僕はコキコキと盛大に指を鳴らす。


「お前……いくら女性っぽいからって男だからな?」


「そこは妄想だけで……うっぷ!!」


 そんな話を聞いたヒパーニャさんがチューサーさんの首にするどいチョップを喰らわして気絶させた。


「さっさと寝ろ!!」


 チューサーさんを乱雑にテントの中に放り投げた。


「すまないね……」


「もし、何かあったら焼いていいですか?」


「……煮てもいいからね」


 ヒパーニャさんから正式にお許しが出たので、チューサーさんがもし何かした場合、僕は彼を美味しく上手に焼けました~!にすると決めるのだった。


「そういえば……背中から道具を出して本当に焼こうとしていた主人公いたな……」


「あーー!!鉄バットとかフライパンも出してたッスよね!?あの漫画、泉と一緒に読んだんッスけど面白かったッス!!」


 まさかフィーロが僕が子供の頃に読んだあの古い漫画を知っているのに、僕は少し驚くのだった。

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