表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/505

120話 ネタ晴らし

前回のあらすじ「闇の力を我が手に!!」

―「聖カシミートゥ教会・会談の間(仮)」―


「とりあえず今日の所はこんな感じでしょうか?」


「そうですね。今日はここでお開きにしましょうか……」


 コンジャク大司教が会議を終了の宣言をしようとする。


「コンジャク大司教。その前に私達の方もよろしいか?」


 すると、ギルド長の方々がそれを制止する。


「どうされましたか?」


「実は勇者殿と魔導士殿に……」


「魔導士?」


「泉さん達のことですよ。あの召喚魔法を使ったところを見た方々がそう名付けたそうです」


 ソレイジュ女王が答えてくれる。ああ……。そういえば、明らかに誰かに見られるであろう噴水広場で召喚魔法を使ったしな……。


「それで僕たちに何か?」


「あんたらにギルド証を発行させてくれねえか?冒険者ギルド、商業ギルドの両方だ」


「え?」


「なるほどな。確かにそれはあった方がいいかもしれない」


「ローグ王の旦那の言う通りだな」


「俺もそこには気が回ってなかったな……」


「サルディア王もですか?」


「ああ。今後、お前さん達があっちこっち行くようになるならあった方がいいだろうし、色々問題が出るだろうしな……」


「各国の王の言う通りです。勇者殿から回ってきた素材、変異種ワイバーン、ジャイアントオーク、悪魔にゴリラチンパンジーモンキーそれにユニコーン……それらの全ての回収に関わっているとのこと、ビシャータテア王国を懇意されていますが、一応どこの国に所属という訳でも無いとのこと……それならギルド登録していただきたいと……」


「でも、どうして?」


「四人は賢者クラス以上の魔法使い。そんな方から商業ギルドとしては直接、品を卸していただきたいというのがありまして……今までは王宮からだったので、その手順を簡略化するためですね」


「で、俺ら冒険者ギルドは他の冒険者の為だな。あんたらのようにどこにも所属していない強者がいるのに、それをギルドが何もしていないというのは……少々不味いからな。ギルドのクエストとかは受けてもらわなくて結構なんだが体裁だけは整えたい」


「なるほど……」


「ビシャータテア王国としてもなってくれるとありがたい。最近、各国の王から睨まれてるからな。ははは!!」


「薫と泉の両方を落としたからだろう!勇者がそっちの王女とお付き合いしてるって情報が入った後、どうやって泉の方をこっちにへと~~!!」


「私も良さそうな貴族の男性を選んで、お見合いの予定を……」


 ローグ王とシーニャ女王が落ち込んでいる……。僕たちの知らないところでそんなことが起きてるとは……いや、魔族が攻め入るかもしれないんだからそっちを優先しようよ?


「お二人の気持ちは商業ギルドの長として分かりますね。魔族との戦いが終わってからじゃ遅いんです!今からじゃないと!……ということで王家に儲けが独占されないようにお願いしますね?」


 このアオライ王国の商業ギルド長とんでもない事を言ってないかな!?いや、他のギルド長もその意見に頷いている!


「ちょ!!何、私の前でいってるのよ?女王の特権で異動させるわよ?」


「ほほう……オルデ女王そんなことを言っていいのですか?勇者様に何をしようとしたかご本人に……」


 え?何?まだ何かあるのかな?この女王は!?


「くっ!!」


「ゴメン。それは僕、知りたいかな?情報料としてどうだろう?最近、手に入れたミスリルを少しだけ卸すけど?」


「薫と同意見なのです。パートナーとして知っておきたいのです」


「まいどあり♪」


「ちょ……お前!ずるいぞ!」


「ふふ~ん。商売は早い物勝ちです!!」


 パァアン!!!!


 コンジャク大司教が盛大に手を叩く。するとそれを聞いた室内の人々が黙りそちらへと振り向く。


「皆さんお静かに。ここは教会ですよ!」


「「「す、すいません……」」」


「そうしましたら、今度、薫殿達にギルドへ立ち寄っていただき発行してもらうということでよろしいですかな?」


「場所は……」


「それならイスペリアル国でお願いします。各ギルド長も王族に取り次いですぐに来れますから……皆さんいいですかな?」


 コンジャク大司教の提案に、異議なし。とのことだった。


「それで時期は?」


「双方、近いうちに……」


「なら……俺の所のクエストを終えてからでもいいんじゃねぇか?そうすれば商業ギルドにも売りたい素材も出て来るだろうしな」


 ヴァルッサ族長がそう言う。という事は……。


「ということで薫。この後、少しだけいいか?お前さんに頼みたいんだが?」


「……分かりました」


 この後、少しだけヴァルッサ族長と話すのだった。 


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―薫が会議に出席した同日「都内」あるユーチューバーの視点―


「皆さん!おはよう。こんにちは。こんばんは!ユーチューバーのMAKOTOで~す!!今回は怪しい商品試してみようのコーナー!!はい!拍手!!」


 いつも通りの生放送を始める。今回は恒例企画の怪しい商品を購入して、試してみようというものだ。とんでもないパチモンだったり思いがけない一品に出会ったりと見てる側もワクワクするということで、最近では人気が出ている。このお陰で登録者数も最近10万を超えたばかりだ。


「今回の商品は……」


 まずは、あの黒ひげ危機一髪みたいに数人で遊ぶおもちゃを紹介。少し古いおもちゃで、大砲のトリガーを引いて引き金を引く。それを繰り返してクラッカーを鳴らしたら負けというものだ。生放送にはもう一人隣にいる相方とやっているので、互いにトリガーを引いてクラッカーが鳴るまで引き金を引く。意外にトリガーの音が大きくそちらにビックリする。クラッカーが鳴った時も視聴者からは、トリガーの方が大きいwwwとか、ちょっと面白そうかも。と中々高評価を得た。


 そして次の商品。ちなみにこれは大外れである!なんせネット上の説明文には、あなたの思いを伝えます。と一言。そしてその形はブレスレット……怪しい。持っていれば幸せになる壺ぐらいに怪しい。試しに同じ物を隣にいる相方に着けてもらってテレパシーで伝わるか試したがダメだった。


「次の商品は……アイ・コンタクト!!何でもこれを装着すると……私の思いが皆さんに伝わるという商品になりまーーす。価格は何と一万円!怪しい!怪しすぎる商品です!!皆さん!私の伝えたいこと伝わってますか!」


 そのまま、商品を説明していく、コメント欄には、伝わらん!!とか、ジョークグッズ!!、MAKOTOさ~ん!騙されてますよwww!!と予想通りのコメントが帰って来て満足する。


「え?なんだこのコメント?」


 相方がふと声を漏らす。それが気になり相方に訊く。


「どうした?」


「これ……」


 俺がそのコメントを見るとそこには、流暢なドイツ語を話されますね!!とか、ええ?パンジャーブ語??これで紹介動画なんて日本人に分かるの?と意味不明な事が書かれていく。


「なんだ……これ?」


 この後……この商品がとんでもない商品ということで有名になることを、その時の俺は知る由も無かった……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―生放送から数日後、お昼時から少し過ぎた「カフェひだまり・店内」―


「……おお~。凄いのです!私にも何を言っているのかが分かるのです!!」


 レイスがタブレット端末に映っている映像、そして音声で動画を楽しんでいる。その小さな腕には例のアイ・コンタクトという商品が装着されている。ちなみに、今の店内は直哉たちのために貸し切り状態にしていて、お客さんが来ないようにしている。


「紗江の予定通りだな。ふふふ。笑いが止まらんよ」


 そう言って、直哉が頼んだコーヒーを飲む。


「上手くいきましたね。通常通りの販売方法では上手くいきませんからね」


「本当にジョークグッズとして売り出すとは……紗江さんには驚きですよ」


「魔石に月の雫とか……表立って公表できませんしね。ジョークグッズとしてなら無理矢理売ることが出来ます!!」


「いや!?それで貫けるの!?この反応を見ると無理だと思うんだけど!?」


「まあまあ。これで薫ちゃんも収入が増えるんだからいいじゃないの」


 昌姉が直哉たちが頼んだ料理をお盆に載せてやってくる。そして、それを直哉の前に配膳していく。


「それはそうだけど……」


「そうですよ薫さん!すでに追加生産もしています!はあ……我が社が潤いますね……ふ、ふふふ……」


 紗江さんの表情がとてもうれしそうだ。いや?どこか怪しげな雰囲気を漂わせているような……。あ、黒い靄も見える。


「これもカシーさんたち賢者のお陰ですね。薫さん宅にある魔法陣の解析の結果、一部が翻訳魔法と判明しましたから」


 今回、発売されたアイ・コンタクトは機械などは使わずにほぼ純粋な魔法技術のみで作られている。ただし、外装などはこちらで手に入る物で制作、また魔法陣を削る際の作業は機械で行い大量生産できる体制を整えている。


 仕組みは核となる魔石は石座に置かれており、その周り、指輪とかだと腕と言われる部分に魔法陣が彫ってある。このリングに肌が触れている限り効果が適用され、言った言葉が電話越し、画面越しだろうが相手の得意な言語に自動翻訳される。逆に聞き手がこれを持った場合は相手の言った言葉が翻訳されるという魔法が施されているということらしい。また長時間、装着していても蒸れにくい仕様になっている。


「謎テクノロジー過ぎる!!ってすげぇ話題になってるよな……それ」


 マスターがグラスを拭きながら話すが、その通りであって、既存の翻訳機では出来ない……というかどうすればこんな事が出来るの?と話題になりつつある。


「ああ。すでに賢者達と協力して絶賛増産中だ。ただ、異世界転移魔法陣はまだ解析にかかるといってたな……どうにか、あの設置場所を我が社にも増やしたいところだが」


「あそこ一ヶ所ってのも、いざ何かあったら怖いよね」


「私もそう思うのです……あそこがなくなったらと思うと怖いのです」


 レイスにとっては故郷に帰れなくなるので当然の反応だと思う。おばあちゃんはそれも考えて、魔法陣を堅いコンクリートで土台を作り、そこに魔法陣を彫って消されにくいように作ったのだと思うが……。


「そうですね……今や、あの魔法陣が我が社の命綱ですし……」


「……薫さん」


「ん?榊さんどうかしましたか?」


「すいません……今度、私の父にあっていただけませんか?」


ガシャーン!!


 その一言に、聞いていたマスターが手に持っていたコップを落とす。


「マスター……違うから」


 すでに僕にはユノというお相手がいるのだ。そんな訳が無い。


「いや。すまん。お前を男とは思っている。その……榊の方がそういう……」


「違いますから!」


 榊さんが強く否定する。当然の反応だろう。


「それじゃあ……何故だ?」


「それは……」


「警察を操っていた黒幕。榊さんの父親ってこと?」


「な!?」


「え。榊さん?」


 マスターと紗江さんが僕の言ったことに驚く。昌姉は言葉にしないが驚いていた。唯一、何の反応もしなかったのは直哉だけだった。


「はい。薫さんの言う通りです……いつからお気づきに?」


「直哉がスパイが社内にいるってこの前、話してくれたんだ。異世界なんて話を証拠もなく信じられる訳が無い。だから……物的証拠になる魔石。社内であれをある程度自由に持ち運び出来る人……そして、あっちでカメラを回してたりして映像としての証拠も一緒に提出が出来る人っていったら、最初の訪問で一緒に行き、社内でそれなりの地位を持つ紗江さんか榊さんぐらいじゃないですか」


「ははは……なるほど。それもそうですね」


「それで……黒幕は誰なの?」


「私の父です。名前は菱川 翔也……」


「え!!ちょっと待ってください榊さん?その菱川って総理大臣の!?でも、苗字違いますよね!?」


「すいません。いつも母方の性を名乗っていまして……菱川なんて珍しい名前、悪立ちしますから」


「まさか……総理大臣とはな……」


 警察を動かしていたから大物とはおもっていたけど……まさかの内閣の首長……国のリーダーとは……。予想より大物だったことに僕は頭を抱える。


「それじゃあ、薫ちゃんの動向を逐一報告していたの?」


「ええ。薫さんが異世界と関係を持ち、その件で我が社に仕事を持ってきた時からですね……まあ、その時は父に、迷惑をかけるかもしれない。と話しただけですが」


「本格的に動いたのは……銀行の事件?」


「はい。あの時、父もヘルメスの事件に注意を払っていました。下手な要求をするかもしれないということで官邸で待機していたそうです。……しかし、あの事件は予定外の結末を迎えてしまった」


「こいつらがヘルメスの奴らをコテンパンに叩きのめす……か」


「あの時のヘルメスの装備は最新の装備でした。それこそSWAT、下手すると自衛隊を送るような相手でした。しかし、それをたった二人で……しかも、リーダー格の男は瀕死状態。それで父が、事件の起きたあの場所が私のいる会社に近い事に気付き……その際に全てを打ち明けました」


「なるほど。その後は薫さんの動向を監視して逐一連絡してたんですね。しかし……いくらなんでも唐突ですよね?」


「はい。訳がありまして……実はアメリカに一部感づかれまして……我が社が妖狸と関わってると……」


 榊さんが皆から多少、目線を逸らしつつとんでもない情報を暴露した!え!?


「はあ!?榊!それ早く言え!!我が社としてもそれは困るぞ!!」


「そうですよ!ここに来た怪しい二人組用に防犯は強化しましたが、国家、もしかしたらCIAなんか有名な諜報機関が関わるとなると!!」


「ちなみに、そのCIAからだそうです……」


「CIA?」


 レイスが、何それ?と目が点になっている。ちなみに、その情報を聞いたレイス以外の全員がフリーズしている。うわ~……。あの有名な諜報機関に目を付けられた?え?僕たち大丈夫なの?


「す、すいません。それと、その怪しい二人が所属するグループの名前とヘルメスについても話したいってことで……」


「なるほど。そろそろ隠し続けるのは無理と……それで、いつですか?」


「臨時国会が閉廷する……9月中旬頃なんですが……」


「そうしたら、アレが終わった後なのですね」


「何かご予定が?」


「泊まり込みでの素材確保の依頼があるんだ。ガルガスタ王国でね」


 この前の会議の後、ヴァルッサ族長から事前調査が終わり対象がどこにいるのかが絞れたということで、こちらに話が回ってきたのだった。ただし、それでも範囲が広いので数日の泊まり込みは確実になりそうである。


「それで、今度は何を捕まえるの?」


「ウサギだって……名前はムーンラビット」


「そういえば、十五夜が近いですもんね」


「いや紗江?それは関係ないと思うんだが?」


「でも時期的にそう感じちゃうわよね~」


「ウサギとは言っても相手は魔獣らしいので、一筋縄ではいかないと思うのです」


「レイスの言う通りだね。とりあえずはキャンプ道具を用意しないと……」


「分かりました。父にはそう伝えておきます」


「お願いします」


 素材確保に総理との会談……9月も慌ただしい日々が続きそうな予感である。


―クエスト「ムーンラビットは何見て跳ねる?」―

内容:ガルガスタ王国に生息する魔獣ムーンラビットを狩って素材を確保しましょう。泊まり込みが予定されるのでキャンプ道具は事前に用意しましょう!


「ちなみに今、言えばいいんじゃねえか?」


「私が知らないのと、急ぎでは無いということだそうなので……それと通常通り生活してて問題無いとのことです」


 急ぎでは無いに、普通に生活していい。……いいのだろうかそれで?僕は少しだけ考えたが、榊さんが詳しく知らない以上、諦めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ