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110話 港町ダゴン防衛戦

前回のあらすじ「薫が真相を知るのはまだ早い」

―「アオライ王国・港町タゴン」―


 転移魔法陣のある建物から外に出ると港町が一望できる。本来なら港町と透き通るような青い海を拝められる所なのだろうが……町は火と煙、海は船の残骸が浮かんでいる。


「酷いのです……」


「うん」


 町からは悲鳴や怒号が聴こえてくる。


「町は他の魔法使いや兵に任せて下さい!皆さんは魔獣を!!」


「今回、相手する魔獣って……」


 アオライ王国のオアンネスの兵士さんの言う魔獣……海の方を見るとそこに見えるのはお馴染みのイカの足。ただその太さが木の幹程の大きさを除けばだが。


「クラーケンッスね」


「それ以外にもいるわよ。ほら。あっち」


 カシーさんに言われてそちらを見ると、亀?らしい魔獣が船を噛み砕いていた。大きさは某映画のあれと同じか?


「アダマンタイトだな。アイツの甲羅はかなり堅いぞ」


「あっちもだ……」


 今度はカーターの見てる方を見ると、そっちには蛇みたいなものがその体を巻き付けて船を壊す。


「シーサペント……他にも色々いるわね」


 ゲームでお馴染みの海の魔獣のオンパレードである。しかもどれもこれも大型である。


「とりあえず、魔獣に攻撃を加えつつ住人を避難させましょう!」


「分かった。それじゃあいくよ!!」


 そして、空を飛べる人たちで海にいる魔獣との戦いに出る。とはいっても僕たち以外に飛べるようになったのは各国の賢者だけだが。


「幾つかに分かれましょう!」


「それじゃあ、私はカーターさん達と行くよこの前のファイヤーストーム使うかもしれないし」


「そうね。頼りにしてるわよ泉、フィーロ!!」


「任せて下さいッスよ!」


「それなら、私はシーエ達と行くわ。連携を取りやすいから」


「分かりました」


「それじゃあ……僕は……レイス!水連弾!!」


 僕は咄嗟に背後から来るそれに攻撃を仕掛ける。しかしそれは簡単に避けられて、接近を許してしまう。そしてその黒い剣で切りかかってくる。


「鵺!籠手!!」


僕 は鵺を籠手にして、それを片方の籠手で受けて、もう片方でカウンターを仕掛ける……がそれも避けられる。


「はは!まさか避けられるなんてね!」


「シェムル……」


「覚えてくれていたんだ?」


「まあね……」


 周りにいた全員が武器を構える。魔獣より危険な存在に対して全員の緊張感が高まる。


「しかし面白いね勇者って。そんな形の変わる武器なんて初めてだよ!」


「……僕たちはこいつと一緒かな」


「なのですね。魔獣は皆にお任せするのです」


「おい?四天王をお前達だけで相手にする気かよ!!」


 マーバの言う通り無茶なのだが……避難とかを考えるとこうなってしまう。


「いいから……まあ、死なないように頑張るからすぐに応援に来て」


「僕が邪魔しないと!?」


「雷連撃!!」


 雷が連続してシェムルに落ちていく。相手はこの前の戦いもそうだが素早く回避率が高い。でも、さらに速い雷はそうもいかない。僕が唱えた瞬間に避けているが、雷が翼や腕をかすめる。


「……まさか。こんなに速いなんてね」


「皆!行って!!」


 その声を聞いて、多くの兵士は逃げ遅れた人々に避難へ町へ、泉たち魔法使いと賢者はそれぞれの魔獣を相手に全員が散開する。そしてシェムルは何もしないでそのまま浮いたまま僕を見る。


「邪魔しないの?」


「いいよ。どうせこの数の魔獣をどうにかできないと思うし。それより、オモチャと遊びたいんだよね……」


 シェムルはそう言って、ボルグ火山で見せたあの邪な笑顔を浮かべる。


「薫……」


「レイス。皆が来るまで頑張ろう」


「来るといいね……まあ、無理だろうけど!!」


 そして、僕とレイスはシェムルとの戦闘に入るのだった。


―クエスト「港町ダゴン防衛線」―

内容:港町ダゴンが大型海洋魔獣に襲撃されています!被害を最小限にしつつ事の鎮静化をして下さい!尚、報酬は倒した魔獣の数で増えます。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「港町ダゴン・海上」カーター視点―


「でやぁ!!」


 炎をまとった剣を勢いよく振り抜いて、すでにボロボロになっているシーサペントの胴体を切断する。


「すごいッス!!」


「フィーロ!あっちから来てる!!私達もいくよ!!」


「りょーかいッス!!」


 すると、後ろにいたユニコーンに乗った泉たちは雷を連続で落とす。それは海面に当たると周辺の魔獣にもダメージを与えている。ここら辺は陸から離れていて人もいないので、あれに被弾する者はいないだろう。


「海水は電気を良く通すからね!……そう考えると、ここで麒麟がいれば一瞬にして敵を一掃できたかも」


「でも、それを召喚できる魔法使いは四天王を単騎で相手してるところよ」


「サキの言う通りだな……」


 辺りを見回すと、すでに港へと上陸したアダマンタイトを複数の賢者が攻撃、すでに進行を止めている……が。


「数が多すぎる……」


 海には他のアダマンタイトが陸へと向かっている。陸上からの魔道具を使っての砲撃が行われているが間に合っていない。何せ魔獣の数は百以上にも及ぶのだから。


「しかも、大きいからサンダーでもたいしたダメージになってないかも」


 泉はそう言ってるが、あれはどう見ても大ダメージ、しかも雷による麻痺効果で多少なりとは侵攻を遅らせるという事が出来ている。


「くそ!俺も召喚魔法が使えれれば……」


 練習を重ねているが……上手く出来ない。賢者であるカシーもまだ時間がかかるといっている所からしてしょうがないかもしれないが。


「そうですね……使うにはもっと住人の避難が完了しないと……」


「そうね……ん?…え?」


 泉のその言葉にサキが疑問を浮かべる。その時、クラーケン達が触腕を伸ばして攻撃を仕掛けて来たのでそれを俺達は避けて遠距離から魔法で反撃をする。クラーケンが触腕を引いたところでサキが泉に尋ねる。


「泉?今、使うには。って言わなかった?」


「うん……ぶっつけ本番だけど……」


 二人の会話が噛み合っていない。するとまた、クラーケン達が魔法で水の弾を飛ばしてくるので、俺達はフランベルジュ、泉たちはブリューナクで一気に仕留める。


「泉。サキは二人が召喚魔法を使えるのか?っと訊いてるんだが?」


「え?使えますよ?」


「ただ威力が未知数ッスけどね……」


「使えるの!?」


「まあ、薫兄から聴いて練習したから……一応、形としても呼べたし……」


「いつの間に?」


「えーっと……この前、イスペリアル国でお風呂を使わせてもらった時にそこで……」


 ……あの麒麟みたいな物を風呂場で?そんな話をしているとまたまた残ったクラーケン達が攻撃を繰り出すので、泉達がサンダーで麻痺させたところで、フレア・カラミティで一網打尽にする。今までの俺ならこれでへばっていたのだが、薫から教わったアドバイスを元に魔法の訓練をしたおかげで、フレア・カラミティの使用後にくる今までのような疲労感は無く、すぐに次への行動が取れるようになった。


「まあ、その時は魔法陣も無くて、かなり縮小して呼んだんで、被害は無いですけど……」


「お風呂のお湯を一瞬にして空にしたッスよ?」


 どんな召喚魔法だ!?


「何でそんなのを風呂場で呼んだのよ!」


「いや~……シェムルとの戦いの後で、私達も強くならないとな~っと思って、ちょうど男湯に薫兄がいたから、アドバイスをもらいながら……」


 薫が監修した召喚獣……危険な気がする。


「それだから、後は避難が完了して水属性の魔法陣があれば……」


「……威力は?」


「恐らくは……麒麟と…同じ……?」


 曖昧な答えが返ってくる。


「完全体として呼んだことは無いから……本当に予定した動きを見せるかよく分からないんですよね」


「それなら使いましょう!」


 声のする方へ振り返るとシーエ達がいた。


「どうしてここに?あっちの方を片づけていたよな?」


「数が多いし……魔法陣も敷けないから陸地から攻撃と思ったんだよ!」


「それを伝えるために合流したってわけだが……」


「使えるのね!!あの麒麟以外の召喚魔法を!!」


 カシーが泉の肩を掴もうとするが、ユニコーンが危険を察して避ける。


「は、はい!使えます!威力とかはぶっつけ本番ですが!」


「このままだとこちらが不利だ。それならその魔法を使った方がいい」


「それもそうだが……薫達の事も考えるとその方がいいんじゃねえ?」


 マーバの見る方を見ると、遠くの海の上で黒い斬撃やら雷やらが交差し合っている。


「だね!薫兄の為にもさっさと片づけよう!!」


「それでだけど……召喚魔法を使う前にしないといけないことは?」


「とりあえず、術の範囲外に全員避難と魔法陣があれば」


「なら。それでいくわよ!シーエ!私達は陸地に戻って魔法陣を敷くわ!四人は他の賢者にこの計画を伝えて!!準備が整ったらいつものアレで知らせるわ!!」


 そう言って、カシー達と泉達は陸地へと飛んでいった。


「それじゃあ……俺達は魔獣を片づけつつこの計画を伝えるか……」


「ええ……ところで」


「どうかしたのシーエ?」


「いや……泉さんの召喚魔法って……どんな感じかと?」


「イスペリアル国の風呂場で湯船のお湯を空にしたそうだ……というか、マーバ。お前知ってるんじゃないか?」


「そういえば一緒にお風呂にいきましたよね」


 俺達の目線がマーバに向けられる。


「あ~……見た」


「それでどうだったの?」


「うん。超美人だった」


 その言葉に俺達は首を傾げる。美人?ということは人型?


「そして……怖かった」


「怖い?」


「というか何で抽象的な表現なのよ」


「思い出したくない……あれ。すっっっごーーく!!怖かったんだからな!!」


 美人で怖い?どんな召喚魔法だ?


「というかこの後見ることになるんだからそれを見てくれ!!あ、ちなみにどんな攻撃とかは私も知らないからな!!あくまで姿だけだからな!!」


「わ、分かった」


 あのマーバが心底嫌がっている。姿が美人で怖い魔法とは一体……。


「とにかく!行動を開始するぞ!!」


「あ、待ってマーバ。ちなみに名前は何なの?」


「ジャレイシン……セイレーンだぜ」


 ジャレイシンセイレーン。雷霆・麒麟とは違う召喚魔法。果たしてどんな奴が出て来るのだろうか。

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