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10話 戦闘終了とこれから

前回のあらすじ「フルボッコだドン!」

―戦闘終了から数時間後「ビシャータテア王国・ベルトリア城壁 個室」―


「……」


 目が覚める。石造りの天井だ。首を動かすと机の上に変わった形……地球儀のような照明器具がほんのり光っている。


「目覚めた?」


 声のする方を見ると赤色のロングヘアーで眼鏡をかけた女性がいる。……誰だろう?


「あなた倒れる直前を覚えてるかしら?」


「えーと」


 確かスパイに捕まって脅されて城壁から飛び降りて、それからアンコウ男に変態行為されてそして……。


「変態野郎3人組をボコボコにしたところまでは」


「そう。それなら大丈夫そうね」


 誰だろう? 確か城壁の中にこんな女性はいなかったはずだけど……。ぼんやりとした頭でそんなことを考えてると扉がノックされる。


「どうぞ」


 扉の方を見るとカーターとサキ、そして初めて見る精霊がいた。


「薫! 良かった目が覚めたのね」


「うん。ついさっき起きた所だよ。心配してくれてありがとうサキ」


 体を起こし僕は返事をする。


「全くよ! 話してる最中に急に倒れるんだもの。本当に心配したわ」


「俺達も悪かった。あれだけの大怪我してるのに直ぐに手当てするべきだった」


「全くよ。彼が倒れた理由は急激に血を失ったことによるものよ。ポーションをもってきて良かったわ」


「返す言葉も無い」


「しょうがないと思うぞカシー。今さっき戦闘の様子をソーナの兵士から聞いてきたが口々に彼女の戦闘に称賛または恐怖を覚えたとかそんな感じの物だったぞ」


「彼女じゃなくて彼よワブー。まあ間違える気持ちは分からなくないわ……。この子を見ていると自分に自信がなくなるもの」


「そうだったな。男だった…」


 カシーにワブー…。今話してるこの2人が例の賢者さんだったのか。聞いてる限りは何か危ない人だと思ったけど普通の人のようだ。


「とりあえず目覚めたようだし、彼が使った武器について詳しく自分は聞きたい所なんだが」


「それよりも彼の世界について詳しく聞くべきじゃないかしら。シーエから少し聞いたけど何でも世界中の情報を調べる事ができる物があるらしいわ」


「それはそれで興味深いな。フフフ……。全くこれだけワクワクしているのはいつ以来だろう」


「ええ。私達は遂に異世界に足を踏み入れることになるわ。ああ……。いくら時間があっても足りないわ。とりあえずこの子からじっくり聞かないと……」


 そう言って、ハイライトの無い目でこちらを見る。表情は恍惚していた。カシーさんの僕を見る目が明らかに獲物を見る目だ。前言撤回。やっぱり危ない人だ。


「大丈夫よ。私達は危ない人じゃないわ。ただ未知の技術や文化等に興味があるだけなの」


「僕の心を読んだ時点で十分危ない人だよ!! というか魔法には人の心を読む物もあるの!?」


「そんなのないわよ薫。この2人が異常なだけよ」


「酷いわねサキ。この子を見て何となくそう思っただけよ」


 そう言って僕に近づいて、僕の顔に手を当てながら自分の顔を近づけてくる。触りかたが凄くいやらしい。助けを求めてカーターに目を向けたが顔を赤くした状態で外される。意外に君ってうぶなんだね!


「ああ……。この子の肌スベスベしてていいわね。とても私より年上の男性には見えないわ。あちらの世界の男性はこんな感じなのかしら……。香りも甘くて凄くそそられるわ」


 耳元でそんな事いわないでよ!!うわ。これ凄く恥ずかしいんだけど!?


「顔赤くして本当に可愛いわ。研究対象として実に……」


「いい加減にしなさーーい!!」


 サキが見事なドロップキックをカシーさんの頭にくらわせる。


「やり過ぎよ!」


「コホン……サキの言う通りだ。薫がかなり引いているぞ」


 た、助かった……。カシーさんはサキのドロップキックを食らい床に倒れている。パートナーである精霊はお馴染みの展開だな。みたいな顔で見ている。なるほど。研究対象を目の前にするとこんな風になる人なのか。


「引くというより、あまりにも怒涛の攻めで驚いたというか……というより戦闘はどうなったの?」


「ああ。そのことだが」


 カーター達の話を聞くと僕がアンコウ男たちをボコボコにした所で戦闘は終了したらしい。というのも相手の作戦が僕を人質に取ることで降伏させようという考えだったらしくあの戦闘は僕の誘拐から注意を引くための作戦だったらしい。しかし、誘拐された僕が見事な手際(だったらしい?)でその3人を倒し、僕の右腕から血を流しながら、悪魔のような笑顔(?)で戦う姿は相手からしたらかなり狂気じみたものだったらしい。


「……少し恐怖を煽る戦い方をしたけど、そんなに怖かったの?」


「自分の思う美少女が血をべっとりつけて、笑顔を浮かべながら凶器を持って人を襲う姿を思い浮かべてみろ」


「うわ……。なにそれこわい」


「だろ」


「それでソーナの兵士の奴等、あの時全員が戦意喪失したらしいぜ」


 話をしていると扉の方からシーエさんたちがやってくる。


「倒れる前に話した通りですが、戦闘に長けているものからしたら薫さんの動きはとても精練された物でした。それでいて笑顔で戦っていれば……まあ、そんな感じです」


「まあ、上手い言葉が思いつかないのは分かる気がするわ。とにかく薫の戦闘はそれだけ異質だったの」


「ええ。そんな訳で満身創痍で恐怖で戦意が折れた敵は素直に降伏を認めたというところです。因みにあの3人は牢屋に閉じ込めておきました。まあ、あの催涙スプレーとかのせいでまともな行動はできないでしょうが」


 最初に倒したスパイの連絡が途絶えたのを知ったアンコウ男は、精霊を使ってもう一人のスパイから情報を聞き出していたそうだ。


「事前に警備態勢の情報を知り、奴が見張りの時に精霊を使って連絡を取り合っていたらしい」


「情報を知るために随分念入りなことね。わざわざ2人もスパイを送るなんて」


「回復したザックを尋問したが他にもスパイがいるということは知らなかったそうだ。恐らく本命のスパイはギャザーなんだろう。」


 あの変態野郎の名前ギャザーって名前だったんだ。そういえばアンコウ男の名前……何だったんだろう?


「他にもスパイがいるかはあの3人が回復してから尋問してみます。まあ、頭を捕った以上、今さらいても何も出来ないでしょうが」


「とりあえず、一安心ってことでいいのかな?」


「そうですね」


 良かった。また拉致られる心配は無さそうだ。


「そうだ。薫。これ返すぞ」


 カーターがそう言って催涙スプレーを僕に渡す。


「返すって……何か使ったの?」


「そんなの決まってるじゃない。ザックの奴涙目で全部話してくれたわ!」


 サキが満面な笑顔で言った。カーターを見ると苦笑いをしている。


「素直に話さない場合はこれを見せて問い詰めるつもりだったんだが……。まさかあれほど嘆願されるとは」


「ごめんなさい! 全部話すからそれだけは止めてくれ! って、いや~スカッとしたわ!」


 サキが嬉々して話す。


「……拷問はダメじゃないの?」


「暴力はせずにそれを見せただけなんだろう? なら、問題はない」


「サキちゃん。どこかSなのよのね」


「普段は優しいんだがな」


「……女王様?」


「「あ、分かる」」


 カシーさんたちが揃って納得する。


「あんた達何か失礼なこと言ってないかしら?」


「「「気のせいだよ」」」


 今度は僕も含めた3人で同時にハモる。


「……それで薫さんに確認したいんですが」


 シーエさんが神妙な顔立ちで僕に尋ねてくる。


「薫さんのあの武術はどうやって……」


 「どうやって」か。人生30年を振り替える。うん。振り替える……。


「だ、大丈夫か!?気分が悪そう……というより目がイッちゃってるぜ」


「目に光がないな」


「あはは……。気にしないでトラウマを思い出してるだけだから……」


「トラウマってそんなに厳しい試練だったのか!?」


「厳しく無いよ。それで僕の武術だけど色々やってたから特に流派とかないんだ」


「色々?」


「僕の昔話になるんだけど……。僕って小さい頃から変態とか痴漢野郎に襲われるんだ」


 うん? っと全員が頭を傾ける。


「それでね。襲われそうになって家や近くの店に急いで逃げるっていうのが僕の日常だったんだ」


「日常って……」


 言い過ぎじゃないか? とマーバが見てくる。


「1週間に1回は遭遇してたよ」


「どんだけの美少女だったんだよ!?」


「マーバのそのツッコミは置いとくよ。それで小さい頃からそんな奴等から襲われていたんだ。それでね。捕まって体を触られたりしたんだ。それでも上手く隙をついて逃げたりしてたんだ」


「大人とか誰かに頼らなかったの?」


「友達と一緒に帰ったり、親が迎えに来たり、後は警察……町の治安維持を守る人がパトロールもしたけど、あいつら僕が1人になった一瞬を襲ってくるんだ。まあ、そのうち一回がその警察だったんだけど」


「何かを守る俺達からすると許せない話だな。」


 シーエさんとカーターが厳しい顔になる。やはり国を守る騎士としては許せないのだろう。


「そんな事もあってさ。自分の身は自分で守らないといけないと思って……色んな格闘技や武術をある人に教わったり、独学で覚えたりして、素手だけじゃ危険だと思って護身用の道具を買ったり……。それで変態相手に実戦を沢山して……。そんなことしていたらこんな風になってたかな」


「た、大変だなお前も……」


「最終的には変態相手なら背後の気配とか読めるようになっていたよ。アハハ………」


「薫しっかりして!目が死んでるわよ!」


「実戦経験なら私達騎士並み。一定の人物オンリーで気配読める達人。どうりで薫さんが強い訳ですね」


「一度薫と手合わせ願いたいな。武器が無いときの戦い方を学ぶにはいいかもしれない」


「この子から学ぶ事が沢山ありそうで本当にいいわ~♪」


 人がトラウマ歴史を思い出しているのに、この3人はなんて能天気な事を言うのだろう……。


「お前ら少しは薫にフォロー入れてやれよ!?」


「やれやれだな」


 精霊組が優しくて少し癒される。もう涙が出そう。


「それだから相手の大将……アンコウ男にお尻を触られた時にそのスイッチが入って、そのままの勢いでヤっちゃったて感じかな。通常は無理」


「そうですか……。とにかく薫さんには色々借りが出来てしまいましたね」


「支援に敵大将の確保。そして私達への異世界の情報と物資の提供……。それなりの物を送らないといけないわね」


「それと薫を送り届けないといけないしな」


「あ! 今って!? ……えーと。まだ今日だよね……そういえば明日から仕事だった!」


「となると送っていかないとな」


「待って! まだ私達話を聞いていないわよ!」


 そう言ってカシーさんが僕に抱きついてくる。そ、その、う、腕に胸が当たってるんだけど!? しかも大きい!?


「それなら明日異世界に行って話を聞けばいいんじゃねの?」


「そ、その手があったわね! そうよ。ここの魔法陣を王都に用意して……。それにこれはこれで研究対象だし……」


「カシー。今日の所は少し話を聞くだけにして魔法陣の調査をしないか? それで明日は異世界の視察をすればいいと思うが?」


「そうね。魔法陣があれば問題ないものね。ああ……。見る物、考える物が沢山あって時間が全然足りないわ!」


「……そうだね」


 僕は思わずカシーさんの意見に同意する。考えること。調べること。僕にも沢山出来た。最初は小説のネタ目的だったけど異世界の行き来の話を聞いて、その中で僕の先祖が関わってるかも知れない。これをあっちで調べるのは僕の役目だろう。両親は何か聞いていないかな?もし聞いていないなら何で伝えなかったのだろう? 後は異世界の人たちと交流するのに僕1人だと限界だから協力者が欲しい……というより精霊さんたちもいるんだから場所も考えないと……。


「薫。大丈夫?」


 考えていた僕にサキが声をかけてきた。


「あ、うん。大丈夫だよ」


「そう?何か考えこんでいたから気になったんだけど……」


「僕たちの世界でも調べないといけないことが出来たからね。それにこれからの事を考えると他の人たちとも会わせたいし」


 とりあえず。今日はゆっくり休んで明日から頑張っていこう。これから色々忙しくなりそうだけど、ワクワクしてきた!


「シーエ~。これから忙しくなるんじゃね?」


「そうですね。けど、とりあえず私達がやることは決まっていますよ」


「何なのさ?」


 シーエさんが自信満々に笑顔を浮かべながら言う。


「今回の事件の後始末と報告、書類の作成です」


 それを聞いた全員が見事にズッコケるのであった。

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