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105話 非常識な突入

前回のあらすじ「突入作戦決行!!」

―薫達がパーキングエリアに着く数分前「カフェひだまり・店内」マスター視点―


(現在、バスは……)


 テレビでは先ほどからバスジャックのニュースが中継も含めて流れている。


「物騒ね~……ねえマスター?」


「そうだな」


 カウンター席でコーヒーを飲んでくつろいでいる常連のばあさんがテレビに視線を向けたまま俺に話しかけてくる。


「けれど……これだけの事件が起きたら例の妖狸、出て来るんじゃないかしら?」


「どうかな」


 俺はコップを拭きながら何食わぬ顔で答える。この後、登場するのが決まっている事を知ってるのがバレないように。


「でも……今、犯人達って近くにいるでしょ?それならと思っちゃうのよね。って昌ちゃんはどうかしたのかい?」


「うん?……何、気にしなくていい。昌も同じことを考えてるだけだよ」


「あら?昌ちゃん妖狸ファンなの?」


「まあ……な」


 一部の人々からは、きっと美女なお姉さまに違いない!ということで男女問わず妖狸のファンが出来始めている。妖狐も可愛いという事で同様だ。……まあ、昌の場合はただあいつらの心配をしているだけなのだが。


(このままだとバスは事故車両に衝突!果たして、乗客の運命はどうな……)


(あれ?妖狸じゃない!?)


 テレビのリポーターの声を遮るほどの女性の大声を聞いて、カメラマンが急いで、上に指を差してそれを見ている人々が向いている方向へとカメラを向けた。そしてそこに映るのは影。それは徐々に近づいてきてはっきりとする。


(妖狸です!妖狸達が馬に乗って現れました!)


 そして、妖狸……薫達はどこかのパーキングエリアの駐車場に着地した。あいつらなんであんなとこにいるんだ?すると泉が指を差している。その方向には女性の警察官。警察官は銃を取り出し二人に向けている。テレビはより近くで撮ろうと大急ぎで近づいていく。それによって何を言ってるのかが分かるようになっていく。


(今!妖狸が警察からの要請を受けて……)


 リポーターが聞こえた内容を伝えていく。


「警察官を空飛ぶ馬に乗せて突入するって……凄い事をするわね」


「そうだな……」


 これからあいつはどんな方法でこの事件を解決することやら……。


「それじゃ……下ごしらえするか」


「あら?今日は何かあるのかしら?」


「まあな」


 腹を空かせたあいつらが満足するような料理を作ってやらねえとな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―今に戻って「高速道路」―


 追い抜いたバスが近づいてくる……急いで準備しないと。


「鵺。大太刀」


 鵺が姿を変えて身の丈程に長くそして幅のある剣になっていく。


「妖狸?そんな大きくて大丈夫なのです?」


「ああ。これでも重量は変わらないからな」


「(準備はいい?)」


「問題無い。レイスは大丈夫か?」


「オッケーなのです!」


「(じゃあ……いくよ!!)」


 ユニコーンが全速力でバスに突撃していく。


「水破斬!!」


 黒い大太刀に水が超高速で鍔から切先へと刀に沿って流れて、その先端である切先からしぶきを上げている。見た目は普通に水が一定方向にただ流れているだけのように見えるが、実際は細い水が幾つも高速で流れている。簡単に言うと工場で使われているウォータージェットだ。しかも今回はユニコーンがいるためさらに水の中に魔法で作った堅く微細な氷が研磨剤として高速で流れている。


「(いい感じ!!)」


「……切る!」


 さらに、刀身の水のスピードを上げながら、そのままバス……の横を通り抜ける。その直前に振った大太刀はバスの天井を猛スピードで移動しながらも切断。そしてそのまま通り過ぎる。あまりの歯ごたえの無さに本当に切った?と思うぐらいだったが、僕たちの後ろでバスの天井が高速道路上に落ちて、火花を上げつつ不規則な動きをする。


「呪縛」


 あまりにも危ないので呪縛で押さえつける。


「一刀両断!お疲れ様妖狸!」


 そして労いの言葉をかけつつ、泉たちが僕の上を通り過ぎてバスへと向かっていく。


「また……つまらぬものを切ってしまった……」


 日本人なら誰もが知るであろうあの名台詞を言った僕は鵺を籠手に戻す。


「また?」


「……ゴメン。言いたかっただけ」


 レイスの疑問に僕はそう答えるのだった。だって…………男としては一度は言ってみたい言葉だったのだから。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「高速道路」泉視点―


 薫兄が切った屋根が地面にぶつかり火花を上げるが、それを薫兄達が止める。私が通り過ぎる際に薫兄達に労いの言葉を述べて、ユニコーンは作戦通りすぐさまバスの上へと移動する。


「上からって!!嘘だろ!!」


「(くらえ!!)」


 ユニコーンが魔法で水弾を発射して、こっちに銃を向けようとした男をノックダウンさせる。


「フィーロ行くよ!!スプレッド・アイスボール!!」


 そしてもう一人いる武装した男は高速の氷の連弾で無力化する。


「入って!!」


「え!?ここから飛び降りろと!?」


「早く!!バスを停めて!!」


「は、はい!!」


 お巡りさんがユニコーンから飛び降りてバスの通路へと無事に着地する。そしてそのまま運転席へと向かう。


「バスを停めなさい!!」


 銃を犯人に向けて、停めるように命令する。


「おい!分かってるのか?ここで……ぐふぇ!!」


 運転している自分に下手な事をするはずがないと思っていた犯人が何かを言い切る前に、お巡りさんが相手の脳天目掛けて見事なかかと落としを決める。動いているバスの中でよく決められるな……。そして、お巡りさんはすぐさまハンドルを掴み蛇行しないようにする。


「停める意思は無いと……」


そう言って、犯人の服を引っ張って運転席から引きずり落とす。


「何か言い切る前にやったッスよ……?」


「私はちゃんと言ったから大丈夫です。ってことで」


 そして、そのまま運転席へと座りブレーキを掛ける。バスはゆっくりスピードを落として停まる。


「ふう……」


「す、すげぇええ~~!!」


 乗客の一人が上げた声につられて乗客の人たちから歓声が上がる。どうやらケガしている人はいないようだ。


「く…くそ……」


 脳天にかかと落としを喰らった犯人が何かを言っているが、起きてくる様子は無い。お巡りさんはその犯人に近づき腰から手錠を取る


「あなたたちには色々な罪状がありますけど……ついでにシートベルト装着義務違反。あなた達の罪に加えておきます!」


 そう言って、犯人の両手に手錠を掛ける。


「……免許取り消しね」


「ふふ……そうね」


 そう言って、お巡りさんが笑みを浮かべる。


「きゃ!!」


 運転席にいた私達が後ろを見ると、犯人の一人がバスから飛び降りていた。


「しまった!」


「……いや。大丈夫です」


 お巡りさんの言う大丈夫。それはサイレンの音が知らせてくれた。それらは飛び降りた犯人を囲み逃げられないようにする。


「動くな!!」


 そしてパトカーから扉を盾にするようにして出て来たたくさんのお巡りさんが、バスから脱出した犯人へと銃を向ける。


「逃げ場は無いぞ!!」


「さんざん振り回してくれたな!!ヒャウィゴー!!」


 何か……テレビで見たような、何だかんだで突破するようなチャラいお巡りさんがいる。あんなお巡りさんいないと思っていたのに……。


「くそーー!!!!」


 犯人の前にはお巡りさん達、後ろは私達がいる。反対車線に逃げられなくもないが……それでもすぐに捕まるだろう。


「ぐぬ~~~~!!」


「せんぱ~い!!」


「楓!バスの乗客は!!」


「全員無事です!!犯人も取り押さえました!!」


 もう一人の気絶している犯人は男性の乗客達が手伝って押さえている。


「これで終いだな………」


 薫兄がお巡りさん達が作った壁を上から通り抜けて、私達の所へと来た。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「高速道路」―


「遅かったね?」


「あの切った天井を端にどかして置いた。危険だしな」


 そう言って、あたふたしている犯人を見る。その手には銃が。


「おい!これが見えないかまだ俺には……!?」


 その銃を前に出すと、それを一人の警官が見事な狙撃で撃ち落とす。


「俺には……で、何だ?」


「先輩……カッコイイ……」


 完全に打つ手の無くなった犯人。


「……こうなったら」


 犯人はポケットから何かを取り出す。まさか爆弾!?と思ったら手に持っているのは注射器……?


「おい!何をしている!!」


 警察の制止を聞かずにそれをそのまま自分の首へと刺し、中に入っていた黒い液体を注入する。


「まさか自決?」


「はあ…はあ…はあ~~~~…うっおおおおおおお!!!!」


 注射器を放り捨て犯人が大声で叫ぶ。すると……犯人の肉体が膨らんだ。


「え?」


「な、なんだ!?」


 どんどん膨らむ肉体。そしてついには服を破り盛り上がった筋肉が顕わになる。


「きしょくわる~~!!」


 チャラいお巡りさんが素直な感想を述べる。確かに気色悪い。ボディビルダーのようなキレイな肉体ではない。見た感じから異常と分かる筋肉の付き方をしている。


「はあ…はあ……あは。アハハハハハ!」


「ば…化け物……」


 バスの乗客達からも驚きと恐怖が混じった声が聞こえる。


「ねえ?妖狸。まさか…これ……黒い魔石? あのロロックが変身したように……」


「…な訳……ないはず……」


「で、でも……」


「そんなはずがあるわけ無いッスよ……」


 でも……今の科学技術でここまでの急速な肉体変化を起こせるものなのだろうか?そんな事を考えていると筋肉ダルマが走り出してパトカーのある方へと向かう。


「ウオオオオーーーー!!!!」


「止まれ!!」


 お巡りさんの制止の指示を無視してどんどん接近していく。そして……一人のお巡りさんが発砲して足に直撃した……はずだった。


「はじいたぞ!!」


「効いてないぞ!」


「ウオオオオーーーー!!!!」


 そして、お巡りさんが盾にしていたパトカーを持ち上げる。


「ユニコーン!!あの者たちの近くへ!!」


 持ち上げた瞬間、何をするかが予想出来たのでユニコーンに頼んでお巡りさんへと近づき。筋肉ダルマと向かい合う。


「城壁!!」


 持ち上げた車を投げるつける瞬間、鵺で壁を作りその攻撃を防ぐ。壁の向こう側では金属のへし折れたり潰れるような音が聴こえる。


「早くここから離れろ!!ここは妾たちがやる!」


 拳銃が効かない相手をお巡りさんに任せるなんて無理だ。


「レイス!ユニコーン!行くぞ!!」


 今回は討伐ではなく犯人の確保。未知数の相手に何が有効か分からないけど……。


「ま、何とかするか……」

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