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104話 突入前の下準備

前回のあらすじ「騎馬戦」

―「某サービスエリア」楓の視点―


「どうしてここで待機なんですか先輩?」


「分からねぇ。ただここで合流して欲しいという連絡だけだ」


「合流?SATとかですかね?」


「それなら俺達に構わず行くって。まあ……それ以外の誰かってことだな」


 県警に務めてから初めてのヘルメスの捜査。そして奴らがバスを奪い現在高速道路を爆走中との情報が入り、そのバスを先ほどまで追跡していたのだが……。


「お前がまさか大型の免許を持ってたなんてな……意外だったぜ」


「前の部署の関係で取ったんです。でも、大型免許を持ってるからって今回どんな意味が……?」


「さあな……。出来れば俺としては早く追跡したいんだがな」


「す、すいません先輩。私のせいで」


「しょうがねえよ。気にするな。しかし……テレビ局とかがもういるな……」


「そうですね」


 このバスが通過してしまったこのパーキングエリアで中継を行っているテレビ局のクルーとそれを遠くから見ている野次馬が多く見える。


「果たしてバスは……乗客の運命はどうなってしまうのでしょうか?」


「警察はどう対処を……」


 中継を担当する各局のアナウンサー達が必死にリポートをしている。


「……どう対処するかなんて俺が聞きたいぜ」


「乗客をヘルメスから全員無事に助ける……」


 金品のためなら人殺しなんて何とも思わない考えを持つ奴らから人質を助ける……。それがどれだけ無謀な事か……しかも、相手は銃に爆弾も所持している。無限にあるわけでは無いが、どれだけあるのかも分からない。


「そんな魔法のような事が出来る奴らなんて……いたな」


「妖狸ですか?」


「まあ、ありえねーけどな」


「というと?」


「ほら。あいつらってあの町限定で出現してるだろう?近いとはいえここまで来るんか?」


 私達のいるここから妖狸が出現中の町まで車でだいたい1時間程。飛べるとはいっても結構な距離だ……が。


「……でも、テレビ局はそれに期待しているみたいですよ?」


 私は一人のリポーターに指を差す。


「この近くには妖狸がいる町があります。もしかしたら彼女達が……」


「いや無理だって。高速で走るバスにどうやって……」


「あ!ねえ!あれ!ほら!!あれって妖狸じゃない!?」


 すると、野次馬の一人が空へと指を差した。私達もその方向へ向けると確かに何かがこっちへと近づいて来ている。


「……嘘だろ」


「それに、何か人にしては大きいような……」


 それがどんどん近づいて、詳細がはっきりしていく。


「妖狸だ!妖狸が来たぞ!!」


「妖狐もいるんじゃねぇかあれ?」


「って馬だよなアレ?」


 馬に跨った妖狸と妖狐……いや。アレ馬なの?角が生えてるけど?


「まさか、ここに降りる気かアイツら?」


 先輩の言う通り、このままだとバスを追うのではなくここに降りてくるコースだ。しかし、何のために?そんなことを思っていると彼女達が駐車場に着地した。周りからは妖狸妖狐コールが聞こえ、スマホを構えて写真や動画を撮っている人もいる。しかし、彼女達はそれに気にすることなく、というより注意深く彼女達を見ていると何かを探しているようにも見える。


「あ!あの人じゃない?」


「……そうみたいだな」


 馬?に乗った妖狸達がこっちへ近づいてくる。


「お前ら!大人しくしろ!」


 そう言って先輩が銃を構えている。私もそれを見て慌てて銃を構える。彼女達は悪者相手に活躍しているが爆風で火を消したり、人をグーパンで錐揉み回転させて重傷を負わせることの出来る危険な奴らだったのを忘れていた。


「ちょ!待って!!話を聞いてないの!?」


「話?何の事だ!?」


「楓という女性警察官をここでユニコーンに乗せるという話なのだが?」


「楓は私ですが……って、まさか合流する相手って!?」


「乗って!早くバスを追いかけないと大変なことになるんでしょ!?」


 私の前で一匹の馬……ユニコーンが乗りやすい姿勢を取ってくれた。


「いやいや!え!どういうこと!?」


「ちょっと待て……」


 妖狸が携帯電話で誰かと話している。その後、ボタンを操作して携帯をこっちに向けた。


「(二人共聞こえているか!聞こえているなら無線を取ってくれ!)」


「その声………ほ、本部長!」


 私達はすぐに無線を取り出す。


「(偶然にも彼女達に捜査協力を頼めた。楓!すぐに彼女達とバスを追いかけ、バスを安全に停車させて欲しい!今いる捜査員の中で唯一大型免許を持ってるお前しか頼めない!)」


「待ってください!彼女達は一応……」


「(分かっている……。しかし、危険性ならヘルメスの方が高い。それにもしこのままこの先の事故現場にバスが衝突したら大惨事になる。それならヘルメスを止めるのを優先させる!)」


「いいんですか!?」


「(責任は私が持つ!乗客の命を救え!それが我々の何よりも優先する事項だ!!)」


「……分かりました」


「早く行くのです!」


「……先輩」


「俺もパトカーですぐに追いつく!頼んだぞ!」


「了解!」


 私が乗ると、ユニコーンは立ち上がりそのまま空へと駆け上がっていく。


「今、捜査員の一人でしょうか?妖狐に乗る馬に乗って空へと飛んでいきました!」


 そんなレポーターの声を後にして、どんどんユニコーンのスピードが上がっていく。


「しっかり私に掴まってて!」


「あ…ああ!」


「追いかけるッスよ!」


 小さい妖精がいる……。それを見て、夢を見てるのかな私?と思って頬を抓るが……痛い。そして、おもむろに下を見下ろすと……。


「高い……」


 さっきまでいたパーキングエリアの車がミニカーに見える。私は落ちないように妖狐に両手でしっかりしがみつくのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「バス内」人質視点―


「大人しくしろよ!!」


 バスジャックしているやつらがこちらに銃を向けて言ってくる。隣にいる彼女が俺の手を両手で握りしめてくる。今日は彼女と二人で楽しい旅行の予定だったのだが、こいつらはバスの運転手を銃で撃ち、バスから引きずり降ろした後、そのまま俺達を人質にバスを出発させた。そして……今に至る。運転席に近い所に座ってるせいでこいつらの話声が丸聞こえなのだが……。


「くそ!どうする!?」


「このままだとこの先で起きている事故で止まっている車に衝突するな…………チャンスだな」


「おい!?まさかぶつかる気か?」


「そうでもしなければ逃げられないだろう?それに()()もある」


「……だな。上空にはヘリが飛んでいる。それに大きい爆発とか火事でも起こして煙で俺達の姿を隠さないと逃げられねえしな」


「マジかよ……」


「しかも……場所がいい。周りは山だ……これで火災を起こせれば、山火事の消火作業なんかで追う人数を減らせるかもしれねえ」


「ああ~~分かったよ。そうしたらの持ってる爆弾をこの車両に取り付けて盛大に爆発させてやる!」


「人質、一人残らずだな」


 ……狂ってる。ニュースで聞いてはいたが本当に何でもするんだなヘルメスって奴らは。ふと。奴らの話を聴いていた俺の手をさらに彼女が強く握ってくる。それに気づいて振り向くと目には大粒の涙が……くっそ!どうにかできないのか!


「……やばい」


「どうした?」


「ラジオで……今、妖狸が現れたらしい」


「……は?」


「俺達をこんな目に合わせた原因を作ったアイツが?」


「変な馬に警察を乗せて、こっちに向かってるらしい……」


「な!なんで警察が!?ど、どうする!?」


「落ち着けよ。そもそも高速で動くこの鉄の箱をどうやって止める気だよ?」


「それは……」


「……おかあさん。お馬さんが空を飛んでるよ」


 後ろを振り向くと、その声を出したのは近くにいた親子だった。父親がすぐに子供の口に手を当てて、ヘルメスの気を逆なでしないように静かにさせようとする。しかし、ヘルメスの一人がそれに気にせず窓の外を急いで見る。


「……嘘だろ!」


 俺も彼女と一緒にこっそりと窓から外を見る。そこには高速道路から少し浮いた所を走っている頭に角を付けた白馬。そしてそれに跨る仮面を付けた女性。


「妖狸だ……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「高速道路上」―


「何とか追いついたな」


「(この位の距離朝飯前だよ♪それにコレ遅くない?)」


 ユニコーンの速力はすさまじく追いかけていたパトカーをあっという間に追い抜き。前方を走っていたバスの横に並んでしまった。


「凄いのです!!」


「あわわ……!」


「お巡りさん……大丈夫?」


 泉がお巡りさんに声をかけている。その顔を見ると明らかに元気がない。というより恐怖で顔が引きつっている。


「……うちらこれに慣れてるからいいッスけど、初めての人には正直きついと思うッスよ」


「だ、大丈夫…人質が待っている……この位で…!」


「……早急に片を付けるとしよう」


 あまり遅くなると、バスよりお巡りさんの方が根を上げてしまいそうだ。


「ど、どうやってバスに侵入する気だ?バスの上に着地するとかか?」


「本部長からある程度は壊してもしょうがないというお墨付きをもらっている……妖狐。進入路は妾が作る。確認したら突撃しろ」


「Yes!my majestic!」


「……無駄にいい発音だな」


「なら……アラホラサッサーッス!」


 こんな時にボケをかます泉たちに呆れつつ、僕たちはさらに加速してバスを追い抜きさらに距離を取る。


「ユニコーン……昨日使ったアレいくぞ」


「(スイハザンだよね。それでどうするの?)」


「それは……」


 ユニコーンとレイスにこの技でどのような事をするかを最終確認する。


「いいか?」


「オッケーなのです!」


「(いつでもいいよ!)」


「よし!作戦開始するぞ!」


 ユニコーンが僕の声を聞いて高速道路上に降り、すぐさまバスの方へ振り向いて走り出す。……水属性魔法。水破斬の適用範囲に近づくために。

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