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99話 一方の笹木クリエイティブカンパニーは?

前回のあらすじ「予定されていたイジリ」

連休&100話記念として+2話を土曜の夜に投稿します。

―薫がデートしてるのとほぼ同時刻「笹木クリエイティブカンパニー」直哉視点―


「これより……会議を始める」


 この場にいる全員が作業を止め、静かにこちらを見る。


「……何、ゲンドウポーズしてるんですか社長」


「ノリだ……」


「はいはい……それではこれより会議を始めます。今回の議題は新商品の開発、そして対魔族の武器開発をしていきます。各国の賢者さん達もよろしいですか?」


 全員が頷くなどして、異議なしの意思を示す。


「それでは……まず、我が社の新商品の開発ですが、事前に皆さんに提案したブレスレット型翻訳機、そしてメガネ型言語変換機とします。こちらはカシーさん達が薫さん宅の魔法陣の調査より分かった言語変換の魔法陣を用いて開発をしていきます。何かご意見や質問はありますか?」


「はい!今回は2種類の開発ですが……どっちを優先します?」


「それは多数決で決めようと思う。我々、技術者からすれば未知の情報が載っている本の内容が理解できるメガネの方がいいのだが、会社としての売り上げ何かを考えるとブレスレットの方がいいという意見もあってな……これによっては冬のボーナスに影響するかもしれん」


 ガタッ……!


 ボーナス……その言葉に従業員全員が反応する。


「ちなみにですが……来月の皆さんへの夏のボーナスは、工業用水質浄化機材アクアゼロの販売によって多大なる利益を得ることが出来ましたので期待してください!」


 紗江さんの言葉を聞いて、従業員全員が笑顔を浮かべる。中にはガッツポーズをする者もいた。


「……という訳だ。ここにいるのは研究バカの集まりだが、各々欲しい物があったりすると思う。それも踏まえてどちらを優先するかを決めたい」


「しゃ、社長が偉く真面目だ……」


「今回の議題はかなり重要な物だからな。今回の内容次第では大分開発の方向性が変わりかねない。それと、偉く真面目。は余計だ」


「変な開発をして私を困らせているのが真面目ですか社長?」


 紗江から怒りにも似たプレッシャーを感じる。ここは早く話を次に持っていかねば……。


「ということで今回、どちらの開発を優先すべきだと思うかここにいる全員に意見を聴きたい」


「私達、賢者たちは眼鏡の開発で一致よ。とは言ってもそちらの都合もあるだろうからそこはしょうがないかしら」


「私も眼鏡ですかね……異世界の書物も勿論ですが、こっちの世界でも使えそうですし……」


「俺は……ブレスレットだな。それの売り上げが良ければボーナスも得られるし、眼鏡の方もよりよい物が作れそうだしな」


「私としても会社の経理からすれば同意見ですね」


「まあ、紗江さんはそっちですよね……俺はちょっと悩みますね……」


 様々な意見が出てくる中で榊も意見を述べる。


「俺もブレスレットの開発ですね」


「と、言うと?」


「ブレスレットの機能に会話以外でも伝わる機能を付けて、電話越しでも画面越しでも会話が成立するようにして欲しいんです。これからは必要になりそうですし……」


 その榊の一言に全員が、ああー……。となる。榊の言う通りで意外に不便なのだ。この会社は3つの工場で成り立っている。そして連絡するのに子機を使って連絡を取り合うのだが……電話では異世界の言語が変換されないので替わりに誰かが伝えたり、直接言いに来たりと不便だったりする。


「はい。とか、いいえ。とかは話したり聞いたりしてる内に理解できるようになったんですが……あっちの世界の独特な言い回しとか…」


 またまた全員が、あぁ~~……!と声を上げる。中には手を、ポン!と叩いて納得する者もいた。これはほぼ決まりだろう。


「ここにいる全員の反応からしてブレスレットで決まりか?」


「ですね……ちなみにブレスレットで賛成の方。挙手を」


 すると、見事に全員が手を上げる。


「では、ブレスレットの作成で決まりだな」


 私の言葉に全員が拍手で賛成の意思を伝える。


「それでは!今回の開発はブレスレットをメインに動きますので宜しくお願い致します!」


「それでは……次の議題だが……」


「兵器開発ですよね……これ」


「だな。だからこそ開発自体はここではなくあっちでやろうと思う」


「場所は?」


「そこなんだが……イスペリアル国が一番妥当か。こっちとしてはビシャータテア王国がいいんだが……ただ、それだとあっちにある他の国々も面白くないだろう」


「まあ……そうだな。ビシャータテア王国だけ美味しい思いをするのはちょっと」


 ここにいる賢者全員が首を縦に振った。


「え?カシーさん達も賛成ですか?」


「それは当然だ。あまり独占し過ぎるのは余計な軋轢を生むしな。しかもだ。我らの王は姫を薫とお付き合いさせることに成功したしな。これ以上は本当に争いを生みそうだからここは均等に利益が得るようにしたい」


 そのパワーワードに全員がワブーを見る。


「い、いつのまに!!」


「ちょ、抜け駆けは!!」


「すでに薫のご両親への挨拶も済ませている。問題無い」


「え?あ、あの?お姫様って確か未成年ですよね……え?」


「カシーさんそれホントなの!?薫さん……やる~!!」


「いやいや?言ってる場合?」


「そうか……で、話を戻すが」


「社長!?」


「そこはビシャータテア王国が誰よりも早く異世界との交流を成功させた成果だ。それぐらいの恩恵は当然、研究とは……誰よりも早く成果を出したものが第一人者を名乗ることができ、それによって受ける恩恵も多く受けることが出来る……そうではないか?」


 私のその言葉に全員が黙る。研究に限った話では無いが、アイデアを誰よりも早く形にした者が一番の利益を受けるものだ。この会社もそうやって何回か他社の開発の方が早かったために特許の申請を逃すこともあった。またはうちの製品と同じような効果を持つ機械にちょい足しして全く斬新な機械として売り出されて利益を奪われて悔しい思いもしている。


「確かに」


「ここにいる全員、協力関係ではあるがライバルでもある。今後の開発からインスピレーションを受けて自国の発展に用いる者もいるだろう。それ自体は悪くは無い。文明の発展には互いに競い合う事も必要だしな……」


「しゃ、社長……」


「だから今回、先を越されたと思ったら、ビシャータテア王国に負けないように研究し、それを形にすることだな……ただし、悪い事に使うようならここにいる全員が容赦しない……いいか?」


 全員が黙って頷く。ここにいる全員は研究仲間でありいいライバル……時には協力したり同じ研究で競い合ったりする。それが私の望むこの会社の形だ。


「まあ、魔石に関する研究を独占している我が社が言えた事では無いですがね」


「紗江……それは言うな。せっかくの雰囲気が台無しだ」


「そんなの社長らしく無いですからね」


「まあ~~……そうだな。ということで対魔族のための開発の話に入るぞ」


 全員、落ち着いた所で次の話に入るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


「う~ん。意外に困りましたね……」


「そうですね……」


 ホワイトボードには色々な案が出ている。当然だが、中にはこちらの世界の武器の名前も挙がっている。


「ただ、これが通用するかと言うと……難しいですね」


「ああ。そもそも魔石自体が優秀だしな。わざわざ武器にする意味が無い」


 ピストルやマシンガン。しかし、武器用の魔石を使えば例えば火属性なら火の球を何発も撃て、弾切れも使用者本人の体力次第。持ち運びも女性でもラクに運べる。反動も無い……。


「薫さんがピストルの弾を受けきってますしね……」


「それ意外にもあの巨大な悪魔の攻撃を受けて生きてるしな。防具としてはあれを超える物はそうそう無い」


「防具自体の開発は……変異種の討伐、そしてそれを使っての開発ですかね?」


「すでに悪魔から使える素材を入手している。それにソーナ王国では薫さんたちのお陰でゴリラチンパンジーモンキーの変異種、ユニコーンから素材を手に入れられたしな」


「……うらやましい」


 ワブーの言ったことに獣人の賢者がボソッと呟いた。そして、その隣にいるドワーフの賢者もその言葉に首を縦にコクコクと振って反応する。


「防具に関してはそれで今の所はいいでしょうね。ただ……武器。あの悪魔を倒せるとしたら……この爆弾かしら?」


 カシーの言ったホワイトボードに赤く丸された爆弾。開発は可能だろう。ただしパトリオットミサイルとかトマホークとかは……周辺に影響が大きすぎる。それに飛べる相手には避けられるだろう。グレネードランチャーとかが妥当か?


「核関係は完全に排除。毒ガス系、細菌系もこれは無しですね」


「そんな物をあっちでやってみろ。魔力による変異を起こして一人残らず死にかねないぞ」


「ですね……むしろ、これなら魔法使いの強化アイテムを作った方がいいかと」


「いや!それなら銃弾に魔石を使ってみたら……!?」


「コスパが悪いですね……」


「でも、なくはないかな……」


「開発としては……ありかもしれないですね。悪魔は無理でも対魔獣としては使えそうですし」


「それでは……武器はこれで?」


「……私に提案が1つある」


「社長。その案とは?」


「魔法陣だ」


「魔法陣?」


「薫が使った召喚魔法には魔法陣が必要だ。しかしそれを準備するには地面に書かなければならないし、人が入れるほどの大きな魔法陣が必要になる。しかも魔法陣を正確に覚えないといけない」


「それを簡単に出来る道具を作ると?」


「そうだ。あの召喚獣、麒麟は今後の戦いで必要になる。そして召喚魔法の訓練をしている賢者もこの意味が良く分かるんじゃないか?」


「確かに。それが可能ならかなり戦力増強になる……けど」


「どうやってそれを?」


「それでだが……こんなのはイケないだろうか?」


 賢者に前々から考えていてた案を話す。そして魔石のプロフェッショナル達である彼らからも、可能かもしれない。と言われた。


「それではマジック・ガン(仮)と魔法陣自動生成機(仮)の二つの開発を進めていきます。よろしければ拍手をお願いします」


 満場一致での拍手が起きる。これからの我が社の開発の方向性が決まった。梅雨ももう少しで開ける今日この頃……この夏は色々と忙しくなりそうだ。


「ふふ……本当に楽しませてくれるな……」


 私は和気藹々と話している全員には見えないように窓の傍に立ち、雨粒が付いた窓から暗くなった外を眺めつつほくそ笑むのだった。

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