空から女の子が降ってくる話
今日は晴れのち女の子
降ってくる女の子にご注意ください
彼女たちは降ってくる
おそらくは雲よりも高いところから
彼女たちは降ってくる
みな一様に天使の微笑を浮かべながら
彼女たちは降ってくる
群れを成して意味を成さずに
彼女たちは地面に達すると
破裂するわけでも潰れるわけでもなく
一瞬のうちに笑顔も体もぐにゃりとひしゃげて
あっというまに溶けてしまう
溶けた液体は赤黒く
どろりとしていて
時間がたつとひどい悪臭を放ちはじめて
やがて固まりこびりつく
しだいに雲が退きだんだんと空が晴れ行く
強い光をため込んだ太陽が顔を出すと
照らされてそれは再び溶け出す
あつあつのグミのように溶けて溶けて溶けて
そして固まる
女の子たちが降った後
町の人たちは掃除に追われる
壁や道路のこびりつきを
へらを使ってこそいで落として
みぞに詰まったかたまりを
シャベルで砕いて取り除く
最後に来るのは回収車
荷台にそれらを満載して
ゆらゆら揺れながら処分場へと走っていく
彼女たちは本当に降ってきたのだろうか
ただの幻想か錯覚ではなかったのか
もしかしたらそうなのかもしれないし
そうではないのかもしれない
ただ一つ言えることは
女の子たちが降りやんで
あとに残された赤黒いドロドロだけが
それらの存在した証拠だということ
この現象が起こりはじめて数か月
適応力の高い現代人はそれに慣れていった
異常はやがて日常に
誰も疑問を持たなくなった
なぜ彼女たちが降ってくるのか
原理も理由も謎のまま
えらい大学の教授も
物知りな学校の先生も
優秀な私の友人も
誰もかも分からないらしい
わけも仕組みも無いままに
今日も今日とて女の子が降る
私は今にも女の子が降り出しそうな空を見上げて
隣にいた母が
掃除が大変だわ
と愚痴の言葉を吐き出した
悪い夢はしばらく続きそうだ




