表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩集  作者: 矢作 日和見
PR
5/20

空から女の子が降ってくる話



 今日は晴れのち女の子

 降ってくる女の子にご注意ください




 彼女たちは降ってくる

 おそらくは雲よりも高いところから


 彼女たちは降ってくる

 みな一様に天使の微笑を浮かべながら


 彼女たちは降ってくる

 群れを成して意味を成さずに




 彼女たちは地面に達すると

 破裂するわけでも潰れるわけでもなく

 一瞬のうちに笑顔も体もぐにゃりとひしゃげて

 あっというまに溶けてしまう


 溶けた液体は赤黒く

 どろりとしていて

 時間がたつとひどい悪臭を放ちはじめて

 やがて固まりこびりつく


 しだいに雲が退きだんだんと空が晴れ行く

 強い光をため込んだ太陽が顔を出すと

 照らされてそれは再び溶け出す

 あつあつのグミのように溶けて溶けて溶けて


 そして固まる




 女の子たちが降った後

 町の人たちは掃除に追われる

 壁や道路のこびりつきを

 へらを使ってこそいで落として

 みぞに詰まったかたまりを

 シャベルで砕いて取り除く

 最後に来るのは回収車

 荷台にそれらを満載して

 ゆらゆら揺れながら処分場へと走っていく



 彼女たちは本当に降ってきたのだろうか

 ただの幻想か錯覚ではなかったのか


 もしかしたらそうなのかもしれないし

 そうではないのかもしれない


 ただ一つ言えることは

 女の子たちが降りやんで

 あとに残された赤黒いドロドロだけが

 ()()()の存在した証拠だということ


 この現象が起こりはじめて数か月

 適応力の高い現代人はそれに慣れていった

 異常はやがて日常に

 誰も疑問を持たなくなった



 なぜ彼女たちが降ってくるのか

 原理も理由も謎のまま


 えらい大学の教授も

 物知りな学校の先生も

 優秀な私の友人も

 誰もかも分からないらしい



 わけも仕組みも無いままに

 今日も今日とて女の子が降る

 私は今にも女の子が降り出しそうな空を見上げて


 隣にいた母が

 掃除が大変だわ

 と愚痴の言葉を吐き出した



 悪い夢はしばらく続きそうだ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ