短詩・独り善がり
【一人城】
爪を噛んでほぞを噛んで
あいまいに仕立てたケーキ色のドレスを画面内にて入刀すれば
どれほどに滑稽だろうと一人笑いを
こらえるのだここは どうせ誰も見ていないだろうが
隔離された部屋の中 眼球運動が安定するのはここだけだ
ゔぁあちゃるとにらめっこして一日を過ごす
不思議と孤独を感じないものだ
それはここが城だからだ
満たされた空間では孤独も感じようもない
そこでは『自分』だけが絶対なのだから
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【ぬくもり】
ぬくもりとはなんだったか
たしか誰かの肌の温度のことだったか
なぜ自分の肌の温度ではだめなのか
欲することがないわけでもないが
そうかそんなに感じたいのであれば湯舟にでも浸かればいい
それで私は満足なのだが
それは違うと誰かが言う
心の芯から渇きとこごえを消し去るものだと
彼か彼女かは言っていたが
それが無くとも我々は元気に日常を送っているではないか
喉が渇けば水を飲めばいい
こごえているならたき火をすればいい
それで全ては済むだろう
どうせ我々人間は
独りで生きて ゆくのだから
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【不協和音】
耳障りな声色で叫んでいるわけでもない
ただどうも自分は微妙に
旋律を崩してしまうらしい
いつも遅れて半音届く
合わせ方が分からないのだ
責められたって 咎められたって
できないものはできないのだ
それはそれで愉快だろう
なれば一人で弾こうじゃないか
無様で孤独な演奏を
独り善がりの独奏を




