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詩集  作者: 矢作 日和見
15/20

短詩・独り善がり


 【一人城】


 爪を噛んでほぞを噛んで


 あいまいに仕立てたケーキ色のドレスを画面内にて入刀すれば


 どれほどに滑稽だろうと一人笑いを


 こらえるのだここは どうせ誰も見ていないだろうが


 隔離された部屋の中 眼球運動が安定するのはここだけだ


 ゔぁあちゃるとにらめっこして一日を過ごす


 不思議と孤独を感じないものだ


 それはここが城だからだ


 満たされた空間では孤独も感じようもない


 そこでは『自分』だけが絶対なのだから


 ---------------


 【ぬくもり】


 ぬくもりとはなんだったか


 たしか誰かの肌の温度のことだったか


 なぜ自分の肌の温度ではだめなのか


 欲することがないわけでもないが


 そうかそんなに感じたいのであれば湯舟にでも浸かればいい


 それで私は満足なのだが


 それは違うと誰かが言う


 心の芯から渇きとこごえを消し去るものだと


 彼か彼女かは言っていたが


 それが無くとも我々は元気に日常を送っているではないか


 喉が渇けば水を飲めばいい


 こごえているならたき火をすればいい


 それで全ては済むだろう


 どうせ我々人間は


 独りで生きて ゆくのだから


 ---------------


 【不協和音】


 耳障りな声色で叫んでいるわけでもない


 ただどうも自分は微妙に


 旋律(ハーモニー)を崩してしまうらしい


 いつも遅れて半音届く


 合わせ方が分からないのだ


 責められたって 咎められたって


 できないものはできないのだ


 それはそれで愉快だろう


 なれば一人で弾こうじゃないか


 無様で孤独な演奏を


 独り善がりの独奏を

 

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