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目が覚めると見渡す限り何もない空間で、クラスメイト30名が横たわっていた。
そんな中一人、また一人と起き上がり、周りを見回しては途方に暮れて嘆いていた。
そして拓郎と義人のまた起き上がり、同じ様に周りを見回して、呆けて居た。
「なあ、俺達授業してたよな?」
「ああ、そのはずだが」
数学の授業中を受けていたはずなのだが、気がつけばこんな空間に投げ出されていた。
記憶をたどっても、何故ここに居るのかすら分からない。
「高校受験まで帰れるか?」
「お前現実逃避するなや」
拓郎は高校受験の事をふと思い出し、それだけ考え始めた。
訳の分からない状況に置かれ、ふと思いついたのがその事だった。
そんな拓郎の様子に呆れ、義人は拓郎の頭をこづついた。
「だってあと五か月だぜ?」
「いやいや、今の状況を見なさいよ、これ絶対に異世界転移の前触れだよ」
「…んな小説でもあるまいし、ありえん」
この訳の分からない状況に置かれ、異世界に転移などという夢物語の様な状況になるとは思っていなかった。
拓郎は否定しつつも心のどこかで小説などでもみたそんな物語になるのかもしれないと、仄かな期待は感じずにはいられなかった。
それほど受験勉強から抜け出したい気持ちもあった。
異世界に行ったら受験受けなくて済むかもしれないと。
「まあ、そろそろ全員起きるだろうし、そうしたら神カッコ仮定が語り掛けて来るだろ」
「このままの状況ならどうするんだ?」
「無いんじゃね? とは言い切れんが」
義人は今自分が立っている床に触り始める。
そしてうーんと唸り考え、手を床から離してから今度は靴で地団駄を踏む。
しかし地面からは音が一切ならず、義人はまた顎で手を当ててて悩み始めた。
義人はこの不思議な空間がなにか自分の中で探っている様だ。
「不思議な空間みたいだし、今の状態じゃ全く分らん、次の反応待つべ」
「お前、意外と冷静なのな」
義人はとても冷静であった。
こんな状況に置かれ、一切取り乱さず、冷静に今の状況を分析している。
拓郎はそんな義人の様子を不思議に思っていたが、前々から異世界転移や転生モノの小説の話をしていた事を思い出す。
それでこの状況に陥っても、異世界に夢を馳せてこれこそ、不測の事態に、特に転移した場合に起こる事をシミュレートしているのではないかと拓郎は思った。
「ステータスオープン、…駄目か出ない、魔法も……無理か」
「恥ずかしくないのか?」
義之は漫画などで得たネタを試している様だが、一切何も起きない様だ。
手をかざして唸ったり、次々と恥ずかしげもなく意味の分からない言葉を口にしていく。
時には呪文の様な物も呟いていた。
「よくある自分の中の魔力を感じて云々ってのをしてみたが駄目みたいだ、ポピュラーなアブラカタブラ系も駄目みたいだし」
「そんな簡単に魔法なんて使えるわけないだろ」
「だろうな、だがここにいるだけで、まだ自身の肉体に変化は無いって事が分かった、これは面白い」
「何が面白いんだ?」
何か分かったのだろう、義人は本当に面白そうに、口のにやけさせて笑っていた。
拓郎は少し不気味に思いつつも、義人の話を黙って聞く事にした。
「例えばだ、この状況ですでに魔法とか、ステータスが見えるなら、すでに肉体に変化が表れている証拠だ」
「へー」
「しかし、今その状態に無いという事は、まだ何もされてないという事だ」
「んで?」
「それだけだ」
それのどこがおもしろいのか分からないが、義人にとっては面白い事なのだろう。
そんな事を思っていると、男とも女とも分からない、澄んだ声が響き渡る。
『貴方達を異世界へ向かってもらいます。ですがすぐに息絶えては困る、力や魔法などの能力を授けましょ。
敵を倒し、世界を救うのです』
その言葉のみで、その後に続く声も一切無かった。
周りのクラスメイト達はすでに全員起き上がり、様々な反応をしていた。
歓喜する者、打ちひしがれる者、怒り猛者、押し黙る者、反応は様々である。
拓郎は、現実味も無いこの状況に、まるで対岸の火事の様な気持ちで居た。
傍らにいる義人は無表情であった。
「お前嬉しくないのか?」
「うーん、微妙だな」
「なんでだ?」
異世界オタクな義人なのだ、異世界に行くとこ言う事に歓喜していると思っていたが、少しだけ不機嫌そうであった。
「いくつかの可能性が潰された、つまらん」
「なんだその可能性って」
「SF世界じゃないって事とか、いろいろさ」
「まずSF世界ならそれほど力は必要ないだろ、今の現代でさえボタン一つや、操縦技術でなんとかなるだろうし」
「荒廃した未来ならどうだ? 廃墟街に居る謎の生物を相手に魔法とかで戦うとか」
「それは、まあそうだな、…ってと色々可能性があるって事か。
異世界ファンタジーとか、未来系のSF世界とかばかり思っていた」
義人は極端で、こてこての中世ファンタジー世界や宇宙船飛び交うSF世界ばかり想像していたのだろう。
それに義人は、そんな世界に行ければいいなという願望もあったから、思考が凝り固まっていた。
「後はバトルロワイアル系の可能性あるぜ」
「あるだろうが、多分それは普通じゃないか?」
「普通?」
「だってこのクラスの連中と異世界だぞ、絶対に何か起きて殺し合いが起こる」
お世辞にもこのクラスはまとまりが良いとは言えない。
虐めもあるし、女子の態度が無駄にデカく威張り散らしていたり、陰口ばかりで、まれに女子同士で争いがおこったり、男子には不良が居たりと、褒めるところは少ない。
先生達も苦労しているクラスであった。
「そもそも、法律がある下で育ってきた奴らが、法の違う世界で真面に生きて行けるか?
勉強でストレス貯めてる連中が力を手に入れてみろ、次第に環境も違う事でさらにストレスが溜まるだろ、そんな状況でタガを外してみろ、大変な事になるぞ」
「あー、よくあるネタの」
「そうそう、クラス転移ネタとしては十分だ」
「ヒエラルキーもあるし、確かに微妙だな」
上下関係もあり、異世界に行き力を手に入れたらさらにその関係が激しくなる事間違いなしであることは、想像に難くなかった。
「あ、上下関係で思い出したが、そうだ聖女ネタはどうだ?
クラス転移聖女とか面白そうやん」
「それは女同士で醜い争いになりそう」
「そうそう、それ思ってたんだよ、面白そうじゃね?」
女子に派閥がある、上辺だけでは仲がよさそうな状態でも、裏で陰口を言ったりとあまり仲はよろしくない。
異世界に行けばそれが顕著に出るはずだ。
あの陰険とした関係が浮き彫りになる事に、拓郎は少しだけ興味を持った。
ただ陰ながら見ている事前提ではるが。
「俺はそんな殺伐としているのは嫌だな」
「じゃあ王道ファンタジーとして転移した場合どうするんだ?」
「んー、よくあるネタは召喚した城に居る王族が敵ってオチかな、というか絶対にそうだろ」
「その心は?」
「だって異世界の問題を俺達がやらなくちゃならないって事だぜ、切羽詰まってやるのか、一石を投じたいのか、どっちか分からないけど、どっちも要は鉄砲玉だろ?
しかも召喚されて力がついているって分かってるならまずはその力を自分たちに向かないようにしないといけないじゃん」
「契約とか隷属とかしてってか」
「そうそう」
「じゃあ貰った力で吹っ飛ばすか?」
しかし義人は首を振った。
それではダメだ、もっと頭を使えと目で訴える。
それに拓郎は首を捻り考え口にする。
「…俺達の力がまだ弱いからとか?」
「せやで、いきなり強いって展開もあるかもしれんが、まだそんな力は無いって思ってる」
「じゃあどうすんだ?」
「相手が何か身に着けたり、調べるって言って魔法とか魔術を使う際に拒否しつつ、脱走か説得して城から出るか」
「それってさ、説得失敗したり、城を出た後も大変じゃね?」
「そりゃそうだよ、そのまま残っても碌な事ないだろうし、残るよりはマシと思ってる」
「…ハードだなぁ」
異世界召喚そのものが面倒な事と思うしかない。
その事に拓郎は気が付いてため息をついた。
「次に」
「まだあるのかよ」
「あるさ。
俺達を利用して魔王を倒せってのも本当に倒して良いか困る所だ?」
「魔族に困ってるなら、倒すしかないんじゃないか?」
「お前、魔族イコール悪になりすぎじゃぞ。
広い心を持って物事を見ないと仕損じるぞい」
「何様だよ」
「ほっほっほ」
爺のように喋る義人を見て拓郎は笑いそうになった。
しかし言われてみれば魔族が悪と決めつけている、そんな自分が居ると拓郎は気づいた。
「亜人とか異種族とか、そういうのは居るが、それを悪として見るのは絶対に良くない。
人間主情主義とかそんなところに呼ばれたなら、他から見れば俺達が悪者だ」
「ほー、確かに」
「それにさっきの神ぽい奴のセリフ、あれは悪としか言ってなかったしな」
「言われてみれば」
「それによ、もしかしたら人間同士のいざこざかもしれない。それに俺達は兵として呼ばれたとか」
「…それは、異世界に行って人間同士の争いに巻き込まれるとか、嫌だな」
モンスターの相手ならいざ知らず、人間相手に戦争をするとなると、精神的に滅入ってしまうだろう。
「他には何もないのか?」
「そうだなー、後は、平和な世界に飛ぶとかそういうのもあるか」
「敵って言ってただろ? それは無いんじゃない?」
「おいおい、神カッコ仮の言っている事を鵜呑みにするのか?
絶対にしちゃいけない事だぞ」
「何故?」
「お前、よく言っているだろ知らない人について行っちゃだめって。
もし平和な所に出て、あれは魔族だって攻撃したら大変な事になるぞ、人間というだけでそれ以降人間が狭い思いしたり」
「あ、あーあー、なるほど」
「神仮定は邪神とかそんな神で、混沌を望んでいるとかさ」
「はいはい、把握した。
そうか、その可能性もあるのか」
「そんなんじゃお前異世界だからすべてを疑ってかからないと生きていけないぞ」
「ぐぬぬ、確かに」
自分の無知さ加減が悔しく、得意げにしている義人に少し腹立たしくも、『異世界の事だけ』に対しては尊敬し頼れる頼もしい人物と認めるしかなかった。
これから常識の通じぬ所でやっていくのだ、もう少し義人と話て仮定話を聞きたいと思って、拓郎は話を続ける。
「それで、今度は王族とかに呼ばれなかったときの話をしようぜ」
「お、乗って来たな、よし来た」
「最初に危ない所に飛ばされたとか、そういう場合」
「諦めて生き残る事を模索する」
「…、えー?」
思わず拓郎は耳を疑った。
頼もしかった義人から頼りない答えが返ってきたのだ。
「急に頼りなくなったな」
「だってそうだろ? そんなところに投げ出されて、真面に生きていける気がしない。
サバイバル経験は一応あるけど、異世界でそれが通じるかどうかも不明だしな」
「サバイバル知識はあるんだ…」
「こんな時の為に覚えてるだけだ」
そこは感心したが、同時にその努力を勉強などに向ければいいのではないかと思った。
「それにもしかしたら文明の無い世界で、魔物だけが居るって可能性も」
「うわ、ロマンも無いなそれ」
亜人や異種族が居てこその異世界と思っていた拓郎である。
それは義人も同じであった。
「人間しか居ないっても萎える」
「俺も。しかし異世界って言っても色々仮定すると多いもんだな」
「そりゃな、ジャンルは多いが、目に当たってない、話とするとつまらないって世界観の物語だってあるはずだ。
だからこそ話をし始めたら人の数だけ話が広がってくんだけど」
「はあ、本当に、どんな世界に飛ばされるのかな?」
「んだな。
ところでお前はどんな世界に行きたい?」
義人に言われ拓郎は考える。
しかし答えはすぐに出ていた。
「ファンタジー世界なら、亜人とか魔族とか異種族が多い所、ハーレム作りたい、後楽できるほどの力があればなおよし、敵とか居なくていいよ、DBとか少年漫画とかそんな展開もノーサンキュー」
「欲望に忠実だな。
けど俺はファンタジーよりもSF世界かな」
「ファンタジー厨のお前がSF?」
以外な言葉を聞き、目を見開き驚いた。
拓郎の表情を心外そうにしながらそれに答えた。
「ファンタジーって言ったら完全に病原菌の世界じゃないか、ハーレムとかやばい事になるのが目に見える」
「…夢が無いな」
「夢だけじゃ生きていけない」
「けどよ、魔法で何とかってご都合魔法があるかもしれないじゃん」
「…まああるかもしれないが、娯楽はどうだ? 生活にも狩とかいろいろとあるし、内政も気になるしな」
「あー、セックスだけしてるわけにもいかんしな」
「だからこそSF、そして異種族が居れば完璧」
「…宇宙人とかって、タコみたいなのとか」
「そこは美少女で、ファンタジー系の出てくるのを祈る」
結局女性関係が一番駆らぬ二人であった。
しかし健全な男子なら仕方がない事だろう。
その事は二人が一番よくわかっていた。
「そういえば病原菌と言えば、帰って来た時に描写ないけど、検疫しないとくっそヤバそうだよな」
「検疫?」
「ほら、空港でやってる海外の病原菌持ってこないようにするやつ」
「ああー、あれか、確かに、感染広がったら一大事だからな」
「もし帰還できたそれが一番だろうな」
しかし、そこで拓郎は一つ思いついた事があった。
その事を教えると。
「異世界で得た身体能力が原因で監禁とか実験されたりしない?」
「なるだろうな」
「…詰んでるじゃん」
「そうだな、戻るって選択自体が詰んでる。
なんか不思議なパワーで元の時間軸に戻ったり、病原菌がなくなったりすればワンチャン、力を隠し持って普通の生活に戻れる可能性も。
まあ、それは異世界の刺激的な経験のせいで退屈な日々になりそうだけど」
「記憶がなくなったり力も無くなったりってのもあるんじゃないか? アニメで前そういうの見たし」
「ああ、そういえばそういうのもあるか。
けど決まって続編で戻った時後に現実で事件があったり、再び異世界に戻ったりしてるな」
「それは主人公って補正がついてるから…」
拓郎の言葉を聞いて、義人はハッとなった。
その変化に拓郎は驚き、恐る恐る尋ねる。
「ど、どうしたんだ?」
「忘れてた、俺達主人公って柄じゃない、それに現実に補正なんてあるわけないじゃないか…!」
「い、今更それか? 当たり前だろ…」
「おいおい、補正が無いと出会いも無いだろうし、そもそも俺達は顔の形が」
「おい、それ以上言うな」
二人の顔はせいぜい中の中くらいである。
可もなく不可もなくという顔の作りなだけに、よほど運命的な出会いをしない限り一目ぼれなどされないだろう。
しかしそんな補正もあるとは思えない、積極的に女性に話しかけて付き合っていくしかなかった。
しばらく無言で二人は何も言わずにいた。
「…ところでさ」
そして拓郎がその静寂を破り、義之に語り掛けた。
「俺達、まだ異世界に行かないんだけど」
「ん?」
「周り誰も居なくね?」
「…あれ?」
話に夢中で気づかなかったが、見回してみると、そこには騒いでいたクラスメイト達の姿が誰一人と居ない。
この空間に俺達二人だけしか居なかった。
「…やばくね?」
「やばいっていうか、なんで俺達だけ残ったんだろ?」
その疑問に答える人は居ない。
「…ステータスオープン、……ファイア、ファイヤ、ウォーターカッター、ウインドスラッシュ………」
「やめろよ、何もならないんだろ…」
義人が一人何かならないかと必死に魔法を使うそぶりをしたり、自身のステータスを確認しようとするが、何もおきなかった。
「ログイン、ログアウト、ワープ、テレポート、帰宅、登校、FTL……」
「ゲームとかでもSFでもないだろ」
「…これは詰んだ」
何を言っても何も起きない。
このまま取り残されるのかと思い、不安に思った拓郎が叫ぶように語り掛ける。
「異世界に飛ばないなら元の世界に戻せー!!」
すると反応があった。
目の前の空間が歪み、小さな女の子が現れたのだ。
白いワンピースを身に纏い、金髪の長い髪をゆらゆらと揺らし宙に浮いている可愛らしい女の子だ。
いきなり現れ、驚き拓郎は尻もちをついた。
方や義人は驚いたものの、一瞬目を見開いただけで、すぐに顔を元の冷静な状態に戻していた。
「精霊だったか」
「精霊じゃありません」
義人の言葉を凛としたしかし幼い声が否定した。
「神でもないんだろ?」
「…」
少女はムッとなり顔を少しだけだが歪める、義人への答えは一切なかった。
その仕草を見れば二人が想像している神の姿からかけ離れた存在であり、力を持った俗物的な何かにしか見えなかった。
拓郎はその事に気づかないが、義人だけは気が付いていた。
「して、俺達は異世界に行けるのか?」
「……、貴方達から危ない感じがするからダメ」
幼い子供のように言うと、ぷいっとそっぽを向いた。
精神も見た目と同じ様であった。
「貴方達は元の世界に戻す、それが一番良いと判断した」
再び向き直ると、手を前にかざして俺達の方に向ける。
すると二人の体は無重力空間に居るかのようにふわふわと浮かび始める。
「ちょっとそれは無いんじゃないですかね、読んでおいてこんな――」
「え、え、え、異世界は!? というか俺達なんでここに呼ばれ――」
抗議する二人であったが、少女はその言葉に聞く耳を持っていない。
そして二人の姿がこの空間から掻き消えた。
「…知ってる教室だ」
「知らない天井ですらない」
二人は謎の白い空間から、何時もの見知った教室へと戻って来た。
周りには誰も居ない、ここに居るのは二人のみだ。
「時間もあっちでくっちゃべってたくらいしか経ってないし」
「…ステータスオープン、オプション、コマンド、スキル、装備」
義人は再び口に出し確認し始めた、しかし何も起きなかった。
拓郎は周りを見回し、廊下やグランドから声が聞こえてくるのを確認し、今が授業中であることを思い出した。
時間の経過もたいしてしていない。
「……そういや授業中だったな」
「そうだな…、あ」
「ん?」
「通報しようぜ!!
それと検疫と、後は戻ってきた奴らに復讐する為に、人を殺して精神がおかしくなっているとか、病原菌まみれとか、異世界における過程を大人に吹き込む!
そして監禁生活を送らさせてやるぜ!!」
「…お前意外と嫉妬深いのな」
「当たり前だ! せっかくの異世界が不意になったんだぞ!」
「…お前と話してて、異世界に行かない方が幸せなんじゃないかって思い始めたぞ俺は…」
「夢が無い奴め」
「…お前、さっき俺に言った事覚えてるか?」
義人の暴走を眺めつつ、拓郎はその後を追って職員室に向かった。
説明を最初信じてくれる人が殆ど居なかったが、行方の知れぬ人々がいる状況を見て信じるほかなかった。
ちなみに、数日検疫の為に隔離されたが、未知の菌を発見される事は無く、解放された。
マスコミにも騒がれたが、受験を受ける頃には噂も消え、二人は何の障害も無く受験を受ける事となった。