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第十九波『真影の月』

  本日のタイトル


『真影の月』



  著者:「月野文人」様



 ジャンル:ヒール(回復)はないけどヒール(悪役)転生




 タイトル評価:1.5 (最高5.0)

 「真影」というのは王や天皇など、非常に高貴な身分の人物の写真であったり肖像画のことを言う。「御写真」と言い換えてもいい。

 そしてタイトルは「真影の月」。

 これを直接的に考えると「肖像画に描かれた月」もしくは「写真に写った月」であり、言い換えれば「偽物の月」となろうか。

 それに加えて真影という言葉の意味を考えると、月というのが高貴な物を指してなければならない。

 となると「月」というのは王や皇帝の暗喩か、「かぐや姫」ということも考えらえる。


 などと考えながら読み始めたが、何の事はない。

 登場人物がアーサー王物語の人名ばかりであった。

 となるとガウェインが太陽で、そのライバルが月。つまり主人公が月であり、将来的にガウェインを破って王になる話なのだろうと推察した。


 が、全く違った。どちらかというとアーサーを初めとする円卓の騎士達は揃って性悪の小物として描かれている。

 ガウェインに至っては……。


 タイトル自体洒落ているし、情緒もあって良質だとは思う。

 それだけに「タイトルの持ち腐れ」私はそう感想づけた。

 



 あらすじ評価:2.5

 適切、とは正直言えない。

 どうにもおざなりな印象を受ける。

 タイトルは考えているのに、あらすじは通り一辺というアンバランスさも評価を下げる一因となった。




 世界観評価:3.0

 世界観というものの評価に関しては基本的に非の打ちどころがない。

 世界の動き、というものがつぶさに想像できるような描かれ方をしている。

 こういう分野が好きで得意な著者なのだろうという印象を受けた。


 最高評価とするには「ゲーム世界」というものを表現し切れていなかった点が痛い。

 というのも、ゲーム世界転生でなくとも、異世界転生としてそのまま踏襲できる内容となってしまっているのである。


 ではゲーム世界と異世界の最大の違いは何か。

 それは「第三者の手によるシナリオ」の有無である。

 異世界ではそれぞれが自分で人生を動かしていくことができるし、先のことなど当然ながら誰にもわからない。

 しかし、ゲーム世界となると必ずそのゲームを作った人間、つまり製作者が存在する。

 そして登場キャラクターは、その製作者の意図によって動き、作られたシナリオに沿って行動する。


 ……はずだ。はずなのだが、内容を読んだ限り恐らく全キャラクターが製作者の意図しない行動ばかりとっている。

 そうなるともうゲーム世界という意義は崩壊している。

 特にヒロインが酷い。最初から明らかにプログラム外の行動をとっており、むしろヒロインが転生者と言われても納得できるほどの自由を得ている。

 ゲーム世界であるがゆえの縛り、というものがないのであれば、それはもう異世界転生であろう。



 文章評価:4.0

 誤字・誤用は除くとして、この点は素晴らしい。

 非常にハイレベルで会話のセンスに優れている著者といえる。

 心理描写に関しても拘って書かれており、キャラクターにしっかりと命を吹き込むことが出来ている。


 何より「サイドチェンジ」という、なろう小説家にありがちな安易な手法を一切用いてないのが高評価。

 そこをサボらないで書ききれるのは技術が高いという証明である。

 


 最高点まで届かなかった理由は一つ。

 伏線の張り方だけが唯一、致命的に苦手なのだろうという点である。




 内容評価:3.0

 全体をまとめておおざっぱに評価するのであれば4.0にしても良い。

 だが、細部まで見て評価するとしたら2.0である。

 ゆえに、間をとって3.0とした。

 

 まず、ストーリーは良い。独創的ではないがしっかりと作っていると思わせるような書き方が出来ている。

 だが、伏線の殆どを投げっぱなしたのが致命的。

 途中一瞬だけ現れた意味不明な2人の人物の必要性、それにエンディングに関しては評価できない程に酷かった。

 ゲーム世界であるというのに、恐らくゲーム上に存在しないはずの人物をエンディングとするのは明らかに不自然である。




 総合評価:2.5

 大枠はしっかりしているが、肝心な部分が足りてない。

 そんな印象を受ける小説である。

 言い換えると、外観は凄くオシャレで拘りぬかれた一軒家なのに、中に入ると内装の色彩や家具の種類がバラバラという感じだろうか。

 部分的にだけ見ると違和感はないのだが、全体を見ると違和感が大きい。そんな造りの小説といえる。

 アーサー王という題材は既に使い古され、数多の話で用いられているのでオリジナルを出すのは極めて難しいが、それだけに書きやすいというメリットはあるだろう。

 それを活かすのは著者の手腕次第であり、その点自体は上手くやったと思える。

 だが、そうでない部分でだらけてしまったのが何とも勿体ないといえる作品であろう。


作品リンク:

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n3539di/

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