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第十波『信長の庶子』

その他、読んだ作品

『はぐれ精霊医の診察記録 ~聖女騎士団と癒やしの神業~』……内容は面白味を感じるが、タイトルから想像できるものとは方向性が異なる。

『魔術学院を首席で卒業した俺が冒険者を始めるのはそんなにおかしいだろうか』……コメディタッチに進むがシリアス要素も今後増えそうではある。タイトルだけ見ると傲慢な主人公かと思うが案外そうでもない。

『斎藤義龍に生まれ変わったので、織田信長に国譲りして長生きするのを目指します!』……目標は長生き。新たなタイプの戦国物。信長に仕え始めたりしない限りは今後を期待する。


  本日のタイトル

『信長の庶子』


  著者:「壬生一郎」様



 ジャンル:架空戦国記



 タイトル評価:5.0(最高5.0)

 簡潔、かつ的確な表現。この作品を表すにあたり完全無欠のタイトルといえる。

 過不足なし、言うこともなし。

 「信長の庶長子」の方が詳細に表しているが、やや語呂が崩れキリが悪い。本タイトルの方が優秀である。



 あらすじ評価:4.0

 明解だがやや簡素に過ぎるか。過分はないがもう1つほど加えられていても良かった気はする。

 素材を伏せるには仕方ない部分もあるかもしれないが、数多の気を惹けるかというとやや味気ない。

 とはいえ過分に過ぎたるよりは断然良い。



 世界観評価:4.5

 難題といえるが上手く乗り越えている。

 本来、史実という実在する舞台を用いると世界観を一から作り直す必要はない。

 が、この作者は独自の考察と作品設定により元あった世界を改変・構築しなおすという荒行に挑んでいる。

 史実というのは一部をいじれば他に影響を及ぼし途端に矛盾が生まれてしまうため、整合性のバランスが極めて難しい。その点、この作者はすさまじいバランス感覚と知識量を有しているといえる。

 最高点に0.5不足した理由はまだ明かされていない部分が多い事によるもので、減点ではなく後に加点するゆとりを持たせたことによる。



 文章評価:4.0

 いわゆる大河的な表現に近いか。

 重厚な歴史物といえば当時の口調を再現した文体になるが、この作品はその点で比較的軽めとなっている。

 いってみれば現代人の口調に近く、万人にとっつきやすい書き方である。

 ライトノベルとしては的確であり、それでいて深い見識に基づかれた表現が多々用いられてる為、感心させられる部分も多い。

 最高点に1.0不足した点はルビのなさに尽きる。これほど優しい文章を書けるのなら、比較的読みの難しい語句にはルビを振った方がよかった。

 戦国時代以前の人物名や法号、官職、書物などは歴史に詳しくない人ならば読めない割合が高いのではないだろうか。

 例えば「吉乃」などは「よしの」と読むのが現代一般的であり「きつの」と正しく読める人は予め知っている人だけだと思われる。



 内容評価:4.5

 ジャンルとしては戦国・ファンタジー・歴史・文芸だが、ミステリーな要素も盛り込まれている。

 それを書いてしまうとネタバレになるので詳しくは表さないが、とにかく情報の開示タイミングと量の調節が上手い。

 そして大いに感心すべきは作品の更新頻度から見てわかるように、恐らく相当量、もしくは既に完結までを書き貯めしてあると思われる点である。

 世界観評価でも触れたが、史実を再構築すると5年後10年後、ひいては100年後に致命的な矛盾が発生することがある。

 その矛盾を見つけて駆逐するには最後まで書ききってから改めて精査するなど、膨大な労力と緻密さを要求される。

 そういった意味で、将来的な不安を受ける事なく素直に読み進められるのがこの作品の最も優れたる長所だろうと感じいるばかりである。

 また先述と同じく残り0.5は今後のゆとりであり減点ではない。



 総合評価:4.5

 戦国物としては最高評価といってもいい程の出来栄えに感心止むことなし。

 戦国物といえば成り上がりという概念を打ち壊したる作品ともいえる。

 総評として多くを語るには未だ情報が足りず、かといって称賛しないわけにもいかない高い完成度である。

 感想など書いている場合ではない!と高揚させられ、ただ純粋な一読者として今後を期待せざるを得ない良作であると断言できよう。

 

作品リンク

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n0921ed/



いつの間にかリンクがhttpからhttpsに変わっているようなので、前投稿以前のものも張り直します。

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