幼馴染み
いきなり突飛もない事を言われた愛莉はその場に少し立ち何かを考えてる。
そして愛華は湊翔の方を見つめて少し強ばった顔をしていた。
「あなた…」
「誰?なの?」
愛莉は少し湊翔と距離を取り湊翔の様子を伺っている。
「おっおいアイハわりぃオレの説明が全然足りてなかったちょっと待ってもらえねぇか?」
すると愛莉は腕をのばしこちらに向ける。
「もう一度言います。あなたは誰なの?」
愛莉は湊翔を敵視しているようだ。
「愛莉オレだよ!!湊翔だよ。」
「説明するとしたら難しいんだ!だから少し待ってくれ!愛莉落ち着いてくれ」
湊翔は愛莉の警戒に動揺を隠しきれないでいる。
「容姿はミナトなのに明らかに言動や行動おかしいじゃない」
「愛莉信じてくれオレは…」
湊翔が愛莉の方に近づきながらそう話すと
「動かないでって言ったでしょ?」
「ランバノー!!」
愛莉が言葉を発した瞬間
湊翔の足元に紋章の様な丸い小さな円が出来た。
その瞬間何かに体を巻き付かれる感覚に襲われる胸の辺りから足の膝までに肉眼では確認出来ないが何かが絡まってる感覚だ。
湊翔はそのまま身動きが出来ない状態になった。
「おいっちょっ動かねぇ…なんだ!?」
湊翔は焦りを感じながら身動きが取れないことにたじろんでいる。
「やっぱりここだと力が弱いわ…」
そう呟きながら愛莉は
「あなたが誰か分からない以上こうするしかないの、悪いけど」
「愛莉信じて貰えないのは分かるが少し待ってくれ、オレも頭の生理がまだ出来てねぇんだ」
いきなりこの世界に来て、混乱するのも無理はない。
逆に愛莉も知っているミナトの様子がおかしい事が分かり同様が隠せない状況だ、
「何もする気はないしオレはお前と話したいだからこれを解いて貰えないか?」
湊翔は愛莉に懇願する
「本当にミナトって言う証拠があるの?私もミナトって確信が少しでもあるならこんな事はしないわよ」
愛莉はそう答える。
だが湊翔はこの世界での生活をした事がない。
なので当然ここでの愛莉とミナトとの出来事や関わり方、思い出はないのだ。
湊翔は絶望に似た感覚を持ち始めた…
(おいおい全然分かるわけねぇだろオレ今ここに来たんだぜ…どうしろって言いうんだよ)
二人は感情の持ち方は違えど二人見つめ合ったままだった
そんな時。
窓から緩やかな風が部屋に吹き込んでカーテンを少し揺らした温かくて優しい風だったこの世界でも四季などあるのかなと感じさせるほど心地よい風。季節で表すと春の風だ
「お前の背中、腰から下に掛けて紋章がある…」
湊翔は何が起こったのか分からない。
頭の中にとっさに映像のような物が浮かんできたのは間違いない。
それは切ない顔をした愛莉の背中それをオレはただ見ていた。
その映像を思い浮かんだまま湊翔は伝えた。
その瞬間。
体を拘束していた何かが解けて行く感覚がある
足の痺れが治っていくようなそんな感覚に似ていた。
「やっぱり…本当にミナトなの?」
「だからさっきからそう言ってるじゃねーか」
完全に湊翔から体の自由を奪っていた感覚は消えた
「ふぅ痛かったぜ」
「ごめんそんなキツくした覚えはなかったんだけど」
「痛いのも嫌いじゃないけどなー」
そんな冗談を挟みながら湊翔は屈伸運動を少しする
「腰の紋章…か」
湊翔は何となく呟いてみる
「腰の…その紋章の事はミナトにしか見せた事ないから…えっとだからミナトって確信したっていうか…」
愛莉はなんだか困った様に腰の事を話す。
湊翔はその紋章の事を深く聞くのはダメだと思いその話しを逸らすかのように
「じゃぁ質問していってもいいか?」
と愛莉に確認をとる。
「うっうん」
「何から話そうか…」
そう言って湊翔はまず自分がこの世界に来た事を伝えなければと思った。
「落ち着いて聞いてくれよ…実はオレ湊翔だけどお前の知ってるミナトではないんだ…」
「何を言ってるの?」
愛莉は多分皆そう答えるであろう回答をする
「まぁ聞いてくれ。オレも俺自身びっくりしてる、オレは湊翔なんだが別の世界から来た湊翔なんだ」
愛莉はとにかく湊翔の話しに耳を傾けようと黙って聞いてる。
「昨日の夜眠りに着いたオレは夢を見ていた温かくて優しい天使の歌声のような…ってそんな事はどうでもいいがそれから目が覚めるとここ王都モイラ…だっけか?この世界で目覚めた訳だ」
湊翔は昨日の事から順を追って話す。
「全く知らないこの場所に来てオレは愛莉に会った名前を知ってるのはオレが来た元の世界でも愛莉と言う美人な女の子はオレと幼馴染みだからだ。そうしたら愛莉はオレの事を昔から知ってると答えたでも、ここに居る愛莉はこの国に居る愛莉つまりこの世界の愛莉だった」
頭の中が混乱しそうになるのを必死に抑えて話を続ける
「オレは湊翔ではあるが愛莉がよく知るミナトではないって事なんだ、そこでオレはこの世界に召喚されたと考えた何でそうなったのかは分からないがオレはー。」
愛莉が我慢出来なかったのか話を重ねて来た
「ごめんっ!もしそれが本当だとしたらこの世界のミナトはどこに行ったの?」
「オレもそこまでは分からない、色々考えてみたがこの世界でのオレという人間が存在しているならオレの元の世界でミナトが召喚されてるかもしれない…それか…あるいは…」
「あるいは?」
愛莉は追って会話を辿る
「それか…オレがこの世界に召喚され元の俺はどこにも居ない可能性もある」
愛莉は下を向いた。
暫く沈黙が流れ湊翔も軽率な発言だった事を自覚する。
湊翔が別の世界から来てここの世界のミナトはどうなったか分からないそれはミナトの生存が分からないのと一緒だ…
アイリもよく知ってるミナトの行方が分からないとなると不安もあるだろ…
湊翔は自分の発言を後悔した
「すまん。」
それしか言葉が出せなかった
「ううん。いいの事実だとしたらしっかり聞いておきたいし、可能性は他にもあるとしたら気持ち大分楽だから」
愛莉はどことなく寂しそうな顔から少し気持ちを切り替えようとしたのか口を固く一瞬結び顔を上げ話しを続ける
「でも…えっと…湊翔…くん?」
「いやっ湊翔でいい。オレもアイリって呼んでるが大丈夫か?」
「あっうんそれは大丈夫だよ。じゃぁ…湊翔は何で私の紋章の事…知ってたの?その話しが本当だとしたら湊翔の元の世界の子も腰に紋章があるの?」
「いや元の世界のアイリにそんな紋章はなかったさっき身動きが取れなかった時頭の中にとっさに映像が浮かんできたんだ…」
「映像…?」
事実頭の中にその時の感覚と映像が浮かび上がった。
それが何なのかなんでその腰に紋章があるのか…なぜアイリはそんな切ない顔をしていたのかそれは湊翔にも全く分からない事だったがアイリにその詮索は今はしない方がいいと思った。
「だとするとこうも過程が取れる事にならない?」
アイリはもぅ一つの推理を立てた
「元の世界の湊翔とこっちの世界のミナトが一緒になった…」
アイリの推理も一理ある。
だがそうなるとこの体の人格は何故湊翔なのか…あるいはいつかもう一人のミナトが出て来るのか…
謎が謎を呼ぶ展開に二人共考え込んでしまう。
先に声を発したのはアイリだった
「ただ…」
「思いあたる事があるの…」
アイリはそう呟く
「思いあたる事?」
湊翔は顔をあげアイリの言葉に耳を傾ける
「そう…この前ミナトと一緒に外に出てた時夜だったんだけどミナトが空を見ながらこう言ってたのあんまり聞き取れなかったんだけど…」
一拍置いてアイリはこう答えた
「たしか…」
『俺自身ここに…居たいんだがそれはもぅ出来ない事なのかもなヤツらには逆らえない…』
アイリは少し黙って
「一人言みたいに小声で言ってたから聞き取れなかった部分もあって…私も気になってどうしたの?って聞いたんだけどミナトは笑顔で大丈夫だからって」
「深刻そうな顔だったからミナトから話してくれるのを待とうと思ったんだけど…でもそれがこの事と直接関係あるのかは分からないんだけどね」
アイリは少し笑顔を見せて湊翔にそう伝える。
湊翔はこっちの世界のミナト自身には何か前触れみたいな事があったのか…
それとも別の何かがミナトにはあったのか…
考えてもその言葉だけじゃ何も分からない。
「あっ…あのぉー」
アイリが覗き込む様に話しかけてきた
「おっおぅ…どした?」
湊翔は少し驚いた感じで答える
「湊翔が居た世界の私ってどんな感じなの?」
アイリは少し興味があるみたいで煌めかせた大きな瞳でこっちを見つめてきた
「うーんしいてゆうなら…母親みたいな?そんな感じかな」
「面倒見がよくてしっかりしてて気が強くてこうなんて言うか一緒に居て凄く落ち着くんだよな」
湊翔は淡々と愛莉の事を話す
「こっちのアイリと本当に似てるなまぁ一つ違う所があると言うなら」
「言うなら?」
アイリも話を急かす
「こっちのアイリの方が積極的な気がする」
そう言いながら湊翔は悪い笑みを浮かべる。
「なっ…どぅいう意味?」
すかさずアイリが湊翔にツッコミを入れる
「あーでも見せてやりたかったかなー…そっくりだぜ?ってか一緒写真とかありゃなー」
そぅ湊翔がブツブツ言っていると湊翔は異世界召喚の目覚めを覚ましてくれて今まで全然気にしなかったベッドの上の物に気付く。
「スマホ…も異世界召喚されてたんだ…」
「オレの体だけじゃないんだな…」
「でも何でだ?」
湊翔は不思議そうな顔をしたままスマホをいじる。
そしてアイリの方にスマホを渡す
「この人がオレが居た世界の愛莉だ」
そう言って渡した写真は二人で撮った何気ない学校帰りの写真だいきなり人の携帯奪ってパシャリの一枚だが湊翔はお気に入りだ。
「本当に…」
「本当に異世界から来たのね…」
アイリがそう呟く。
「やっと信じて貰えたか…」
湊翔は少し落ち着いた感じだ
疑われてたので内心これでも信じて貰えなかったら本当に異世界最初に床ペロしてたと思いながらだったら最初からスマホを見せればもっと信じて貰えたんじゃないか…とそんな発想は出て来なかった。
「ミナト…」
そうアイリがポツリと呟いてたのには安堵した感情と春の様に吹く優しい風と暖かな日差しの中の湊翔には届かなかったーーー。