姫、酔う
皆様、お元気ですか?エリーです。
生まれて初めて乗り物酔いを体験中です。
現在、ウインダムの王都へ全速力で向かっています。
朝になり、半分寝惚け眼の私をパティさんが引きずって馬車まで連れてきてくれた。
段々と遠慮が無くなっている気がするが、恐れられるよりはましだろう。
馬車は大きく、二十人ほどが乗れ、鋼で補強され速さや揺れなどを考慮してない頑丈な作りだった。
それが四台。
このサイズになると馬やロバでは牽けない。
それこそ象がゆっくりと牽くような大きさだ。
それに二台を縦列で繋げてある。
「さあさあ、これから王都へ救援に向かうよ。
準備ができたものから乗っておくれ。
女性陣は前の方から座って男は後ろの方からだ。
昨晩連絡したとおり朝は抜いてきたかい?
食べてしまった者は一番後ろに座るように。」
馬車の前でアキラさんが馬車に入るように促している。
朝御飯?食べる前にパティさんに捕まったので食べれていませんよ!
仕方がないので一番前に座り、出発するのを待つことにした。
「はい、皆乗ったかな?
これから全速力で王都へ向かうけど、昨日までの戦闘で怪我をして聴けんと判断した人は町に残るようにしてもらったからね。
あと、お腹が空いているだろうけど我慢してほしい。」
「あの、賢者様?何故朝を抜かなければならなかったのですか?せめて果物だけでも・・・」
女性兵の一人が質問をしてきた。
それは全員が思っていたことなのだろう。皆アキラさんの答えを待っていた。
「うん、それを今から嫌って言うほどに実感できるからね。」
にこやかに笑っているが、その笑い方は信頼してはいけない気がするんだ・・・
気かつけば、体が椅子に拘束の魔術で縛り付けられていた。
目の前には二匹の巨大な狼が現れたではないか。
ご丁寧に体には革でできたベルトが付けられており、俺達が引っ張るZE!とか言ってそうな目をしている。
体から洩れる魔力を見る限り、魔獣等よりも遥かに強い生き物なのはわかる。
わかるんだけど・・・馬車の中では殆どの兵士が怯えている。
一番五月蝿くなりそうな王子が別の車両って言うのが救いかもしれない。
「さあ、準備が出来たよ!出発だ!」
その声を合図に狼達が動きだした。
最初はゆっくりだった。
町の外へ向かい、人が避けていくのを確認しながら進んでいく。
誰もがこれで油断した。
町から出た瞬間、全速力で駆け出した・・・
時速200km/hは出ているかもしれない。
私はこの感覚を知っている。
前世の知識だが、これはジェットコースター・・・
町を出るまではゆっくりと、最初の坂を登るように慎重に。
出たら後は降るのと同じように加速するだけだ。
体は身動きをとれないほどの強力な拘束魔術。
辛うじて首から上が動くが、馬車の中は阿鼻叫喚の嵐である。
気を失っている人を出ている。
最悪、失禁してしまっている人が出ても悪く言えない。
予想できていたから良かったが、下手したら私もあちらの仲間入りだったかもしれない・・・
パティさんは早々に気を失った。
失ったって言うより自ら意識を手放した。
変に器用なことをしてくれる。
ルークは後ろの方で座って居るのだが、一人で笑っていた。
周りがドン引きしているが、止めようが無いので放置するしかない。
この惨状の原因は狼の背に座り、ケラケラと笑っていた。
この賢者、最悪なのでは!?
知っていますか?疲れきった状態で、体を固定され長時間激しい揺れを味わうと、普段酔わない人も乗り物に酔うって・・・
ここで負けるわけには・・・
人として、女性としてのそんげんがぁぁぁぉぉぉ




