姫、新たなる敵を見る
目隠しが取られた時には男はズボンと長く黒い外套を纏っていた。
「んで、テメェは誰になるんだ?急いで汲み上げてきたから誰か何て把握出来てねぇんだ。」
「うむ、いつもながら生き急いでいるなベルナルド。
いや、ベルンディッテか。
俺はゴライアスと名乗るべきなのだろうな?」
「あ~・・・よりによってお前か・・・、その口調からしてお前だよな・・・」
「不満なのは分かるが、折角の復活なのだから祝ってくれても良いではないか神父殿。
そして、丁度我等が怨敵の一人が居るではないか。」
「人が増えるのは良いことだなぁ、よく来てくれたゴライアス。」
男がこちらへと向かい、柔和な笑みを浮かべた。
軽いやり取りをしているが、先程から伝わってくる威圧感が尋常ではない。
こちらを向いたら瞬間に、背中から汗が溢れだした。
穏やかな印象だが、何かが違う。
「やあ、諸君。
俺の復活に立ち会ってくれてありがとう。
俺は嬉しいよ。君達にも我が神の祝福があらんことを。
そして、何故君が居るのだろう?」
風が吹いた。
後ろから衝撃音が鳴り響く。
横に誰かが来たので見てみたら男が居た。
先程の会話でゴライアスと名乗っていた男だ。
更に音の発生源である後ろを見ると、城壁に誰かが吹き飛ばされていた・・・
アキラさんである。
「いやいや、突然で申し訳無いね。
私を殺した仇が居たのでついつい感情に身を任せてしまったよ。
申し遅れた俺の名はゴライアス、イブ神魔教団の司祭をしている。入団したい人は気楽に話してくれ、一から十まで面倒を見てあげようどはないか。」
アキラさんが吹き飛ばされだけでも衝撃的だったのに、この男は息一つ乱れていない。
ベルンディッテよりも強い・・・
「おや、どうしたのかね?そんな顔をされても俺は読心者では無いのでね、言葉で表してくれないかね?」
「バァカ、コイツらの中で一番ツエェ奴が吹っ飛んだんだ、驚いてんだよ。分かれバァカ!」
その場に居た全員が動けずに居た。
全員が本能で理解していた。
動けば殺されると・・・
「全く・・・殺した相手とは随分だね・・・
正確にはアラタが君を倒したはずなんだけどね・・・」
「ふむ、死なぬか。そうでなくては面白くない。」
「僕としては面白くも何も無いんだけどね。
20年前に殺したはずのお前達が何故蘇って来ている?
もうお前達の神は居ないんだぞ?」
会話が蚊帳の外である・・・
説明を求む。
「ああ、確かに君達が我が神を殺した。
正しく神殺しの為に喚ばれた勇者だった。
だからどうしたのかね?
俺達の信仰はその程度では不滅なのだよ。
俺達が想い、祈り、感謝すれば信仰は生まれる!
ならば、新たなる信仰が生まれ、新たなる神は誕生するのだよ!
それには器が必要だ!信仰心を持ち、信仰を受け、全てを受け入れる器が!!」
復活したアキラさんが問いかけると、ゴライアスは荒ぶり捲し立てるように語り始めた。
「確かに、空席となった神の座にはいずれ新しく産まれた神が着くだろう。
だが、お前達の復活は関係ないはずだ!」
「否!!新たな神が産まれるのを待つのではいかんのだ!それでは遅すぎるのだ!!
それでは俺達の信仰心が薄まり消えてしまう!
ならば、誕生を早めねばなるまい?
故に、素質ある者を集め、心と魂を抜き、その器に信仰心を入れる!そうすることによって、新たなる神の器として基礎が出来上がる。
そして・・・」
「バァカ!喋りすぎだ!!」
「ぬぅ・・・」
荒ぶっていたゴライアスをベルンディッテが叩き、止める。
予想外ではあるが、奴等の目的が分かった・・・
そして、奴等が狂っていることも・・・




