姫、巨体から離脱する
巨体が大きく揺れ始める。
頭を落としてから静止していたが、ベルンディッテの呼び掛けにより動き出した。
私もその場に立っていられず、戦斧を回収して飛び降りる事にした。
降りて巨体の全身を確認すると、体を動かしているのてはなく全身が震えて肉が波打っている。
力士の体が震えているようにしか見えない・・・
「エリー大丈夫か!?」
「あら、王子生きてらしたんですね?」
「アレくらいでは死なんよ。」
「しかし、アレは一体何が起こっているのか・・・」
周囲を確認してみると、大分人が減ってしまっているが、見知ったら顔は全員健在のようだ。
「少し不味いことになりそうだね。」
「アキラさん。」
「賢者様。」
「見てごらん、アレの首があった辺りを。」
そう言われ、首のあった場所を確認すると、真っ赤な紋様が光っている黒い卵のような物が出てきていた。
その上にはベルンディッテが立っている。
紋様が強く光ったと思ったら、巨体の肉が一気に卵に向かって集束を開始した。
集まっているようだが、その質量が一転に集まるのてはなく、卵に飲み込まれていく。
異様な光景だが魔術がある世界だ、ワリト疑問に思う人は少ないのだろうが、働けユークリッド幾何学。
「なるほど、今までの体を吸収して、あの中で再構成してるのか。」
「何一人で分析して感心しているんですか!?止めないんですか!」
「無駄だと思うんだけど、やってみるかい?」
「お願いします!!」
多分、全員の総意だろう。
アキラさんは仕方ないと言った感じで魔術の展開を開始する。
アキラさんが魔術を使っているのを近くで見るのは初めてだが、詠唱が何を言っているのかが全く分からない・・・
前世の言語は4つ程の修得しているのだが、どれも当てはまらない。
こちらの言葉は人間の言葉と、神樹の森の獣人の使う古い言葉は知っているがどれとも一致しない。
でも、魔術が起動しているから何処か正式な言葉なのだろう。
「フレイムピラー」
最後に一言、私達の分かる言葉で魔術の名前を唱えてくれた。
地面から柱状の炎が現れ空に浮かぶ黒い卵を焼き尽くす。
ベルンディッテは・・・あ、飛び降りてた。
あのまま焼けてくれればよかったのだが。
「駄目だね、やはりやるだけ無駄だった・・・いや、産まれるのを早めてしまったかもしれないね。」
「それはどういう事ですか、賢者様!」
「僕の魔術が全部吸われてしまったよ。
ほら、出てくるよ?」
炎が尽きると、黒い卵は地面に落ち、殻が割れた。
そこからドロリと黒い液体が溢れ外に出てくる。
殻を叩き、中に居たものがゆっくりと立ち上がる。
大きさにして2.5mはあると思われる大柄な男だ。
筋肉質で肩幅もあり、オーガかと見間違えてしまいそうな体をしている。
肌はベルンディッテと同じ浅黒いが、全裸だ。
産まれたばかりなので仕方がないが、全裸だ。
私の目は御従兄様に隠されて何も見えないが、全裸だった。
「こぉんのぉ、バァカがぁぁ!」
ベルンディッテが産まれてきた男の頭を叩く。
私を吹き飛ばした蹴りだったが、彼は微動だにせず、ベルンディッテが居ることに気が付くだけであった。
「オハヨウと言うべきか?ベルナル・・・ド?」
「今はベルンディッテって名乗ってる。先ずは服を着ろ!服を!」
「はて?なぜ全裸なのであろうか?服をもらえないだろうか?」
「くぅぁぁぁ!!世話の焼ける奴だなぁテメェはぁぁ!!ほれっ、コレでも着てろ!!」
なんなんだろう、この空気・・・




