姫、覚悟を決める
血で出来た足跡を辿りながら、私はこの犯人を考える。
この世界は前世の知識とは違う物が沢山ある。
前世は亜人は存在していなかったようだが、なぜかそう言った知識は豊富に入っている。
ただ、前世の認識だとゴブリンやオーク、オーガ、リザードマン、トロール、水棲人種などは魔物として扱われていたようだが、ここではエルフやドワーフ、獣人等のように人として認識されている。
つまるところ、人の形をして意志疎通が出来れば人として認められるのである。
では、この足跡は何なのか?
人と似たような小さな足跡と、大きな足跡。
本でしか見たことがないが、ゴブリンとオークの可能性がある。
人として暮らしているはずの亜人達。
何があったのか。
この答えは私は知っている。
「黒化の可能性が高いですわね・・・」
‘黒化’数年前から発生している奇病で、様々な生物で発生が確認されている。
名前の通り、体が黒く染まる。
黒く染まった生き物は理性を無くし暴虐のままに暴れ、襲い、食べるのだ。
ここ最近では発生が増え人ですら黒化してしまった報告もある。
人の場合、日とを襲った場合、繁殖行為に走ることもある。
亜人の場合、繁殖行為後の出産までのスパンが短くなり、種別によっては一ヶ月未満で子が生まれてくる。
その子供も黒化しており、生まれて直ぐに黒化していない個体を襲い始める。
世界的に原因を探している病だ。
「黒化した人は殺してしまっても殺人には問われない。元に戻る術もなければ戻れる可能性もない。ならば殺してやるのがせめてものの情けだ。とお祖父様が仰ってましたわね。」
手斧を右手に持ち、私は足跡の先に見える森を見据える。
「覚悟決めなくてはなりませんわね。」
森の奥では木々が不自然に蠢いていた・・・




