姫、群へダイブする
黒化した狼へと走り出す。
正直なところ、あの王子は強い。
モンスター相手とは言え流れるように動き、的確に敵を切り刻んでいく。
力業で倒している私とは違う。
同時に始めたら負けるどころか、私の分まで取られてしまう可能性がある。
故に、全速力で相手の群の中に入って、内部から掻き乱す。
黒化してても群れとしての意識があるようで、私達に気が付き、襲い掛かってくる。
「一つ!」
先陣を切ってきた一匹を頭から叩き割る。
一匹程度では足を止めていられない。
「二つ!」
次いで二匹目、同じく頭へ一撃を繰り出すが、同時に片方の斧を利用し遠心力で体をジャンプさせ群の中へと入り込む。
突然群の中に降りてきた私に狼達は怯んだ。
黒化してても驚くとか感情があるような動作をしている。
これはコレで好都合。
先ずは後列の奴等を凪ぎ払う。
以前、黒化したゴブリン達よりも簡単に引き裂ける。
数匹がスライスされたように、横から真っ二つになっているのが見える。
やはり、以前より強くなっている。
横から来る狼を肘で鼻から顔面を砕き、反対側から来たものは回転して足を首へ入れ、そのまま蹴り首を飛ばす。
飛び掛かって来るものは顔から尻尾へと両断する。
下から仕掛けて来るものは、足で踏み潰していく。
「はて、こんなにも呆気ないものでした?
もう少し苦戦すると思ったのですが・・・」
「貴女が強すぎるのだよ、エリー。
もう少し周りの事を考えてくれないか?二匹目で群の中へ飛んだ時は、肝が冷えたぞ。」
「心配してくださるのですね?
ですが、これは拍子抜けですわね・・・」
「そう言うのは君くらいだよ・・・」
会話をしながらもお互いに狼を倒していく。
こちらは全身を使って倒していると言うのに、この王子は剣のみで倒していく。
返り血で所々黒く染まっているが、剣の光は健在で長く伸びる残光が綺麗だ。
私もああいった厨二武器が欲しい!
あ、剣は得意ではないんで結構です。
順調に倒していると、上から大きな声が響いてきた。
あの巨体が叫んでいるのだ。
ピエールさんの時と同じ、声と言うよりは空洞を風が吹き抜けるような低い叫び声を・・・
声に気をとられてい瞬間に、黒い巨体全体から刺が飛び出してきた。
私達の相手をしてい狼を巻き込み、周りで戦っていた兵も数人やられている。
私も危うく刺さるところだったか何とか避けられた。
無事と言うわけではなく、ズボンが引っ掛かり左の半分が持ってかれた。
スースーする・・・
「王子、無事ですか!?」
「おお、エリーよ俺を心配してくれるのか!!
今日は記念日にしよう!あ、いや、大丈夫だ全て切り落とした。」
コイツは・・・
ふざけたことを言っているが無傷、更には刺を全て切り落としている。
何で王子なんだろうと思う戦闘力してる。
コレで顔がイイからやっかいだ。
そして、黒い巨体がようやくこちらを敵として認識したようだ。
体全体をうねらせ、刺や触手が出てきて、腕を大きく上げ、私達へ叩き付けた。




