姫、この原因を見る
四日目の夕方、視認できる一番遠い森の奥から黒い塊がゆっくりとこちらに近づいてきた。
その大きさは普通の木々よりも大きく、まるで赤ん坊がハイハイしているような動きで近くの生き物や木々を食べながらやって来た。
「なんだよあれ・・・」
「きょ、巨人じゃないよな?」
「真っ黒だから、巨人の黒化とか言うなよ?そんなのどうやって止めるんだよ!?」
視認できるようになった兵士や冒険者に動揺が走る。
逃げ出している者達も出ている。
無理もない、その巨体でありながら、人の形と分かるが常に形態が変化しているのだ。
腕であれば、体を支えている時は、太く、手を伸ばせば細くなり女性のようなしなやかな細さを見せ、地面に手が着けばまた太くなる。
一部、あの時、神樹の森から帰った人は理解していた。
アレはピエールさんと同じものだと。
「皆のもの、落ち着け!!遠くに見える巨体に恐怖を感じるのは分かる!しかし、今はこの町に迫り来るモンスターを排除するのが先決ではないか!?
我がウインダム兵はあのような化け物程度に怯えるほど弱い兵なのか!?」
王子が狼狽え始めた兵達に大声で激を飛ばす。
意外と熱血な所もあるのだと感心する。
いや、あれは演じているのか・・・
「いや、そんな兵ならここには要らぬ!臆病風に吹かれた者は即刻立ち去れ!我こそはと思うものは俺に続け!我が魔眼ど確認したが、この騒動の原因はアレだ!我と共に戦い、生き残ったものには褒章を与えよう!コレが新たな伝説の始まりかも知れんぞ?」
この王子、中々面白いことを言う。
伝説の始まり・・・
二十年前の邪神戦争は新しい伝説として活躍が伝えられている。
その中盤にある三神合戦は三つの種族が一つの荒野でぶつかり合い、最後は降臨した巨大魔獣が全てを掻き乱し、三つの種族が力を合わせて倒したと言う話だ。
伝わった話だと、ここでアキラさんと戦士として喚ばれた人が亡くなっている。
アキラさんが生きてるのだが、戦士も何かあるのだろう。
あの巨体はそんな巨大魔獣に匹敵する大きさはある。
私もあんな巨大な生き物は初めて見る。
遠目から見ても大きいのたが、段々と大きくなってないか?
そんな事を考えていたら、ウインダム兵を引き連れ王子が迎撃の指揮を開始していた。
「我が軍も負けてはおれんぞ!ウインダムが勇猛果敢に戦った中、ガンバルティアが指をくわえて見ていた何て言われてみろ!お前らは国に居場所がなくなるぞ!あんなものさっさと倒して勲章の一つや二つ貰って帰るぞ!今夜は俺の奢りだ!!進めぇ!!」
御従兄様、流石にそれはどうかと思いますが、それに乗るお前らも大概だな!!
「冒険者諸君!君達は自由だ、故に私は君達に強制はしない。戦うも逃げるもそれは生きるための選択だ!此度は私も戦おう!いつもは事務仕事に追われているが今日は特別だ、大いにこの剣を奮おう!
名声が欲しいものは前に!誰かのためにと思うなら守りを!命が惜しい者はこの場から去れ!さあ、この町始まって以来の大討伐だ!腕に自信のあるものは進め!」
サブマスもサブマスで冒険者を煽っている。
むしろ、戦える本人が一番嬉しそうな顔をしている。
この人、実は戦闘狂だったのでは?
「さ、僕たちも行こう。あそこにベルンディッテが居るのが確認できた。
この騒ぎの犯人だろう。
僕も彼は止めないといけないし、君は彼を倒したいのだろう?」
「ええ、そうですわね。短い期間ではありましたが私も強くなりました。それを教えて差し上げますわ。」
「俺はあの時何も出来なかった、アイツはヘンリーさんとピエールさんの仇だ。」
「私も怯えてただけだった・・・、今度はちゃんと戦えます!」
「行きますわ!!」
そう言って、私は走り出す。
二丁の斧を構え、黒色巨体に向かって。




