姫、特訓の成果
以前の戦闘が嘘のように思えるほど、体が軽い。
魔力だけでなく、神の力が加わることで身体強化が更に上昇し全身に力がみなぎっている。
魔力を使用しないモンスターなら紙をナイフで切断するがごとく切り裂いていく。
牛ほどの大きさのモンスターすらも簡単に引き裂け、思わず笑いが込み上げてくる。
「ちょっ!?エリーそれ怖過ぎる!!血を撒き散らして笑うのは怖いって!!」
「あら?楽しいではありませんか?自身が強くなっていると分かる瞬間ですもの、笑いも出てしまいますわ。」
「うへぇ・・・」
ルークが文句を垂れている。
失礼な、努力が実を結んだ瞬間と言うものが分からないとは、悲しいことである。
前世の知識では殺生とは悪しき行いになっているが、この世界では違う。
人間同士の無用な殺生は禁じられているが、戦争は起こるし、怨みなどでの殺生は日常茶飯事だ。
特に、モンスターや魔獣などに関しては襲い掛かってくるのならば殺さなければこちらが餌食になるのだ。
なので群れを超える規模の大群が襲ってきた場合、逃げるか殲滅しなければ生き残れないのだ。
そう、原因が何であれ生きたいのなら戦うしかないのだ。
例え、それで修羅に落ちようとも戦い抜き生き残ったものは英雄と呼ばれる。
お祖父様が正にその修羅であり、英雄だった。
最近では当時の勢いを取り戻したようで、活躍は私のもとにまで届いている。
既にバレてしまっているのだ、私も元気だと分かるように派手に振る舞おうではないか!
「エリー!突っ込みすぎだ!戻ってこい!」
ルークが注意してくる。
周囲のモンスターは手足と首を狙って切り捨てて来たので、殆どが手負いになり動けず、死を待つような状態だった。
いつの間にか決められた防衛線を越えてしまったようだ。
もう少しで交代が終わるので、戻る準備をしなければいけない。
周りには、まだ生きているが足がなく動けないモンスターが沢山居る。
流石に持って帰るのは難しい量だ。
「ルーク、エリーちゃん、交代が終わったから戻ってきて!」
「わかった、すぐに戻るわ。」
「分かりましたわ、こちらも処理が終わったらすぐに戻りますわ。」
パティさんが念話で戻るように知らせてくる。
特訓中に教わったらしい。
元々器用だったのですぐに覚えられたと言っているが、念話は使える人が少ないので他の人が聞いたら妬まれるのは確実だろう・・・
私は戻る前にあることを思い付いた。
戻ったら休憩になるのだから、もっと今の力を試してみたいと・・・
戻る道がら、動けなくなっているモンスターの首を全て落として帰ることにした。
これならば交代した冒険者が気付いて持ってかえって来てくれるだろう。
首と足が無いので血抜きもされるしね!
身体強化を全開にして、戦場から拠点へ戻るのであった。




