姫、従兄の事を聞く
御従兄様がサブマスと応接室に入って行くと、泡を噴いて倒れている王子だったものを兵士達が引きずり、ドナドナしていった。
仕方がないのだ、あれは事故だったのだ・・・
「しかし、貴族の出って聞いていたけど、エリーが王族の親戚だったなんてね~。」
「ヘンリエッタさん御従兄様の事を知っているのですか?」
「知っているも何も、ガンバルティア近衛騎士団三席アルベルト様って言ったら結構な人気者よ?
最近だと近衛騎士団から自由騎士に任命されたって話題になってたし。」
「いつのまに自由騎士に・・・」
あの国で言う自由騎士とは領地は持たないが騎士として爵位を与えられ、且つ国王に認められた人のみに与えられる一代のみの称号みたいなものだ。
その行動は国内では最高権限持ち、場合によっては国王の次に強い権限を得ることができる。
大変名誉な物なのだが、さっきの話を聞く限り、私を確認して逐一報告できるようにするために任命したと思われる・・・
お祖父様、過保護過ぎません?
もし会うことになった時が本当に怖い。
「でも、親戚に王族が居たんなら養ってもらえたんじゃない?ほらアルベルト様なんか二つ返事で了承してくれそうだし?」
「その家の人間全員からベアハッグを喰らい続ける覚悟があれば喜んでいきますわね・・・」
「あれをやられ続けるのは流石に無理ね!」
遠い眼をして説明すると、理解してもらえたようだ。
実際はそれ以上の存在だったとは言えない。
御従兄様もあらかじめサブマスから話は聞いていたようで、私の名前や姫と言う言葉は出さなかった。
まあ、屋敷にいた頃からベアハッグは行われていたが・・・
「しっかし、この町も賑やかになりそうだよ。
第二王子に隣国の自由騎士、賢者様まで居てその内何か起こるんじゃないかって思うよ。」
「そうならないことを祈りますわ。」
食事が終わり、食器を片付けギルドの控え室に入って制服に着替える。
考えてみたら、この姿を御従兄様に見せるのか・・・
また感極まって抱き締められそうだ。
何かしら対策を講じねば私が死んでしまう・・・
本当に朝から災難だ。




