姫、再開する
「それと、私はエリーです!貴方の呼ぼうとしている名前など知りもしません!」
痙攣していないので、多分聞こえているだろう。
流石に回りの兵士たちも心配になって集まり始めているが、何もしてこないと言うことは王子が悪いと分かっているのだろう。
朝からとんだ騒ぎになってしまっている。
「冒険者の集まる場所なので、騒がしくしていますので、ご容赦を。」
外から戻ってきたであろうサブマスが誰かを連れて着た。
と言うか、朝のこの時間は出勤していないはずでは?
この人は、朝は早いのだが早くギルドに来ると掃除などを開始して他の人の仕事を奪ってしまうの事が多々発生したので、他の職員からもっと遅く来るようにと注意されているのだ・・・
「いやいや、冒険者は様々な仕事を請け負う者達、多少なりとも騒がしい方が活気があって良いと思いますよ。」
「そう言っていただけると助かります。」
サブマスに続いてもう一人入ってきた。
背は200は超えていて、体格もかなり良い。
眩しいほどの銀髪を短く刈り上げたスポーツマン寄りの堅い感じが印象の男だ。
んん!?
ちょっと待って?
なんで、この人が此処に来てるの!?
「えっ!?お、御従兄様!!」
そう、私の本名を従兄弟である・・・
「エリー!?本当にエリーなのか!?」
堅い表情が段々と崩れていき、軽く涙すら浮かべ始めている。
プルプルと震えながら、嬉しそうな顔をして・・・
あ、駄目だ。
とっさに床に頭を挿し続けている物体を引き抜き、前に押し出す。
「ぬおぉぉ!?」
「エリィィィィィィィィィィィ!!」
気が付いたら瞬間には、殺意溢るるベアハッグ。
もとい、愛の溢れる抱擁が行われていた。
ストーカー王子へと。
「心配したんだぞぉぉぉぉ!!急にあんなことになって、その後の報告を聞いてからは気が気でなかった!お祖父様も!伯父様も!皆、皆悲しんでた!どうしたら良いのか分からなくなっていた!!
でも、無事で良かった!!」
「ええ、渡しも御従兄様に会えて嬉しいですわ・・・」
「ググ・・・ギャァァァァァァおれるおれるおれる!ギブ!ギブギブ!!」
王子の体からミシミシと音が鳴っている。
感極まって全力で抱き締めてくれているのだろう。
こんな優しい親戚が鋳てくれて私は幸福者だ。
この愛情表現が無ければ・・・
「あぁ、エリー大きくなったね。
一回りも二回りも成長して・・・
腕も太く、胸もこんなにも広く、逞しいほどの胸筋で、まるで男のようだ!!」
「モウダメ・・・」
あ、王子の意識が飛んだ。
白目を剥いて、口から泡を噴いている。
「エリー、エリー・・・って、誰だこれはぁぁぁ!?
ペイン第二王子が何故俺の従妹と刷り変わっているんだ!?」
「ようやく詳記に戻ってくれましたわね従兄様・・・」
「すまない、ついやってしまったみたいだな・・・」
「私の素性を娘とは後で説明させて頂きます。
御従兄様は死後とでこちらにいらしたのでしょう?」
「ああ、クレイン殿からお前の話を聞いてな、皆から代表の座を勝ち取って町への駐屯部隊へと入ることになった。
クレイン殿を待たせてしまったし、後でゆっくりと話を聞かせてもらうぞ?」
「分かりましたわ。」
後ろでサブマスが呆れて疲れた顔をしている。
この二つの国の国境近くにあるこの町は、ちょっと騒がしくなりそうだ・・・
いや、かなりの間違いか?




