姫、キレる
久々の休日だと言うのに、酷い一日だった・・・
名前は知らないが一国の王子に告られるとか地獄しか待っていないではないか。
何かの間違いでOKを出したとしても、私の素性を調べられ、本来の私が知られたら国を挟んでの問題から始まり、国民感情から戦争になりかねない。
受ける気は無いがな!!
しかし、頑丈な王子だった。
私の全力を二回食らって生きてるとは・・・
二発目は肺すら破壊するつもりだったのだが、何故か生きていた。
あれも一つ上の領域に辿り着いた人なのだろうか?
また来たら全力で殴ってみよう。
部屋から出てホールに向かう。
今日は朝食がとれそうだ。
「おはようございます。朝食頂いてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、エリーちゃん。昨日は災難だったね。
王子様とは言え、あんなプロポーズじゃ誰もなびかないよね?」
「なびくも何も、元より興味すらありませんわ・・・」
「そりゃそうよね、」
そんな事を喋りながら朝食を貰う。
ポトフと黒パンが今日のメニューのようだ。
基本的に塩味の強いベーコンとザワークラフトとジャガイモ、ニンジン、玉ねぎを煮込んだだけの簡単な料理だが、味がしっかり出ていて侮れないものがある。
量は人に合わせて出しているので、人によって料金が変わるが、女性の場合は結構安くしてくれるのだ。
そんなポトフにパンを浸し軟らかくしながら食べていると、一人の男性が私の対面に座った。
「朝から寂しい食事をしたいるようだね、俺の伴侶になってもらえるならば、君に相応しい朝食も部屋も用意しよう。
君にはボウケンシャハ似合わないよ、エレグボォォ!?」
つかさず大きめのジャガイモを彼の口に突っ込む。
なんで、私の本当の名前を知っているのだ!?
「ふふ、コレが『あ~ん』と言うものか!なるほど、これは食が進み簡素な料理も絶品の味わいに変わる!!」
「では、次はフォークごと喉に突き刺しますわね?」
「やめてくれたまえ、君が言うと冗談に聞こえない・・・」
「ええ、本気ですもの。」
彼がゴクリと喉を鳴らし、冷や汗をかいていた。
「ところで、私は貴方とお会いした事がありませんが、何処でお会いしたのでしょうか?」
「そんな!?覚えていいのかい!?
10年前に君の屋敷の庭で共に遊んだのを?」
「ええ、全く!」
あ、真っ白になった。
「そんな・・・俺は毎年君を見ていたのに・・・
その為に父上に無理矢理着いて行って、屋敷が見える丘から君が見える瞬間を楽しみに見ていたのに・・・そんな・・・」
「それは聞き捨てなりませんわね・・・
一体どの丘から、どんな方法で?」
「王都の周りにある森を抜けた先にある丘からさ。
そこから遠見の魔眼を使って見ていたのさ!
二年前に偶然着替え姿を見れたのは感動すら覚えたよ!!」
無言で鳩尾に拳を叩き込む。
痛みで屈んだ瞬間に後頭部から踵落としを決め頭を床に埋める。
文字通り、床を抜いて地面とキスしてもらった。
「それはストーカーと言うのですわ!!」




