姫、邪神戦争を説明する
今から約30年前、光の神を崇める国々と、魔族の国と竜の国が戦争を開始した。
その戦は魔族の神が引き起こし、自らが神徒である魔族の意思を惑わせ、他の神々の神徒を減らし、神々の王となろうとしていた。
魔族は操られ、竜は数を減らし魔族の配下へと洗脳され、獣人は数多くの民を人質にされ魔族に従わされていた。
それは人間対異種族の全面戦争だった。
戦争が続き、一つの国で神託がもたらされ、この戦争の原因が知らされた。
そして、解決策として異世界からの勇者召喚の術も。
その事に喜び、勇者召喚は行われ、四人の若者が呼び出された。
四人は事情を聞き、魔族の神を止める事を引き受けた。
人の国の民は希望を手に入れたのだ。
四人は、勇者、戦士、僧侶、魔法使いとして召喚され、次々と人間の勢力を取り戻していった。
兵を率いて戦う勇者達。
それは戦い続けた兵士達にも希望を与えた。
戦いが続き、戦力が拮抗し双方がにらみ合いをしていたときに、それは現れた。
全てを喰らい尽くすような巨大な獣。
あらゆる生き物を喰らい、巨大化していくさまは双方に混乱を与え、戦線を崩していった。
そんな中、勇者達と獣人の王と竜の王が手を取り合い獣を倒したのだった。
人々は歓喜し、勇者と王が共に戦った事で魔族に協力した理由を知った。
しかし、失われたものもあった。
獣との戦いで戦士と魔法使いが死んでしまった。
勇者は悲しみに暮れるが、森の賢者が仲間になり、勇者を立ち直らせた。
そこからは勇者達のカイシンゲキと言っても過言ではなく。
竜の王が意思を取り戻し、理由をが人間側に移り、獣人も人間と竜の協力を得て人質となっていた民を救いだした。
最後は魔族の王に乗り移っていた神を倒し、魔族は解放され、戦争は終結するのであった。
その後、勇者は神々に認められ長寿の力を与えられ、召喚された国の姫と結婚し王となった。
僧侶は神々と交信する力を貰い、神殿にて人々に神託を与える事にした。
賢者は森に戻り、人間と獣人と竜の間を取り持つことになった。
・・・・・・・・・
「こんな監事で聞いていましたわ。」
アキラさんが話を聞いてから頭を抱えて唸っている。
「だ、大丈夫ですか?」
「懐かしいな、俺も昔に聞いて勇者とか目指そうとしたな。」
ルークとパティさんが復帰したようだ。
この話は二人とも同じくらいの認識らしい。
「あ~・・・うん、予想以上に大雑把な伝わり方をしてて驚いただけだから、大丈夫。」
「長年続いた戦争とは聞いていましたが、よほどの事は戦記物の本や専門書を読みませんとわかりませんわ?」
「そうだよね・・・竜帝山脈を越えた反対側だし伝わってないのは仕方がないよね・・・」
これはかなりダメージを受けているようだ。
「仕方がない、さっきの質問だけど、僕は転生者であって召喚者でもあるんだ。」
「その二つって両立出来る物なのですか?」
「まあ、普通じゃ無理だし、あまり正しい在り方じゃない。
僕は勇者の仲間として召喚されて、この世界で転生したんだ。」
良く分からない?
なら年齢はもっと若いはずだが・・・
後ろにいる二人も分かっていないようだ。
「分かり難いかな?
僕は勇者の仲間だったけど、途中にこの体そのものを竜人として生まれ変わったと言えば良いかな?」
「そうなると、もしかしてアキラさんは勇者の仲間で死んだ魔法使いってこと?」
「正解だよ、ルーク。」
ルークがガッツポーズをとる。
「細かい説明を全部はしょってるけど、戦争の苦労話とか悲しい話とか聞きたくないでしょ?」
全員で頷く。
長くなりそうだし、あれか戦時トークと言うやつか。
あれは為になるんだがいかんせん長くなるのが困り者。
お祖父様も話し出すと長くなったし、終いには剣を振り回すわで、あまり良い思い出がない。
「君達の話だと、そこまで詳しい話が伝わってないようだから、余りそう他言しないようにね。」
「「「わかりました」」」
「さて、そろそろお昼だし、何か食べようか?」
「俺、賢者様の作った料理が食べたいです!」
「私も食べたいです!」
「私は食べた事がないのですが、美味しいのですか?
」
「仕方がないね、二人は森のなかで食べられそうな野菜を見付けてきてくれないかい?」
「わっかりました!」
「あっ、待ちなさいルーク!」
二人が森の中に消えていく。
「それで、何で急に転生の話を聞いてから持ち出したんだい?」
「い、いえ、少し気になっただけですわ!?」
「そう?それなら今はそう言う事にしておこう。
とりあえず、君には火の準備をしてもらおうか。」
火の準備、それを言われて気が付いたことがある。
「あのアキラさん?私、冒険者セットを持ってきていなくて・・・」
「あのセットが無くても、生活系の簡易魔術で点けられるでしょ?」
「いえ、その・・・大変申し上げ難いのですが・・・」
「なんだい?」
「私、魔術関連が一切使用できませんの・・・」
私は顔を真っ赤にして伝える。
火を点けたり、一時的に簡単な明かりを点けたりするのは子供でも可能なのだが、何故か私は出来ないのであった。
冒険者セットの中にある魔力がなくでも火を点けられる道具には感動したものだ。
「えぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ!?」
天然記念物を見るような目で私を見ながらアキラさんが叫んでいる・・・
出来ないのもは出来なかったのだ。
屋敷に居た頃から何度も練習しても出来なかったのだ・・・




