姫、跳ぶ
岩が転がっていく・・・
ゴロゴロと音を立てて・・・
音に気が付いた兵士達が避難をしようと慌てているのが見える。
私は岩のあった場所に居るのだが、うまい具合に隠れて見えていないようだ。
そのまま兵士のテントへ転がっていく。
「岩が降ってきた!進路上のテントにで寝てる奴らを起こすんだ!」
「いや、それじゃ間に合わない、テントごと寝てる奴らを移動するんだ!」
「ひぃぃぃ!!祟りだ!忌み子を墓所に入れたから祟りが起こったんだ!!」
「やはり忌み子は死んで正解だったんだ、生きていたらこれ以上の祟りが起こったんだ・・・」
その祟りを起こした張本人で且つ忌み子だが、酷い言われようである。
忌み子忌み子言ってる君達、あとで王家の人間に知れたら大変なことになるよ?
しかし、これは運が良いのでは?
この騒ぎの隙に反対側に、山を登り反対側に出てしまえば見つからずに出れるのでは?
「善は急げと前世の知識にありましたし、兵士の皆様には申し訳ありませんが私はお暇させて頂きますわ。」
足に魔力を込め、この場を跳んだ。
まさに跳んだのだ、この身からは想像できないほどの跳躍力。
以前より稽古等で魔力による身体強化をしてきたが、ここまで高く早く跳べたのははじめてだった。
以前はせいぜい大人を飛び越えるくらいが限界だったが、今は周囲の木々を軽々飛び越えている。
死にかけた影響か、前世を見た影響なのか分からないが最早それどころではない。
「きぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!」
体感したことのない浮遊感と速度に思わず悲鳴を上げる。
枝や葉っぱが叩きつけられ、転がりながら何とか着地する。
「何なんですの今のは!?これでは前世の知識でみたアニメの超人ではありませんの!?
こんなもの制御仕切れませ・・・いえ、むしろこれは・・・」
ふとアニメと言う絵物語を幾つか思い出す。
似たような事が出来るのならば、同じことができるのでは?逆にこれからを生き抜く術を手に入れたのでは?
「ならば、やることは一つですわね!山を越えながらこの強くなった力を制御して行きますわ。」
そう言い、私はもう一度跳ぶのであった。
この山を越えるために。
そして、大木に激突するのであった。
「ふぎゃ!!」
山に響いた悲鳴と転がり来る岩、謎の衝突音は兵士達の怪談として末長く伝わるのであった。




