姫、宴の後の朝
昨晩はアキラさんが「コイツら倒したら今晩は安全だよ。」と言って安心したのか、かなり騒いでいた。
本当に、物語の賢者の様なことを言う賢者だ。
私もお酒を飲まさせたのか途中から記憶がない。
無事にテントまではたどり着いていたようで、体も何もないようだ。
外では男達が死んだように倒れていた・・・
数人は「だめ、歌は・・・もう・・・」「誰だ・・・あの子に飲ませたのは・・・」「ゆーのーだめ・・・りさいたるぱわー・・・きんじられたちから・・・」とかうなされている。
よくわからない。
日が出てきたばかりだが、既に今日の準備を開始している人達も居た。
既に猪の解体は終わり、木材の積込が終わったら載せるだけで済むようになっている。
魔術で倒した分で使えない素材はアキラさんが処分すると言っていた。
そして、目の前には使い物にならなくなった皮で出来た四角い物体があった・・・
「やあ、起きたのかい?昨日は凄かったね、流石に僕も音を遮断する魔術を使わせてもらったよ・・・」
「おはようございます・・・」
皮で出来た四角い物体からアキラさんが出てきた。
いつもフードをかぶっているが、焼けた皮で出来たところだけを見ると怪しい魔術実験をしているようにしか見えない。
何か煙も出てるし・・・
「ああ、これは僕の趣味みたいなものでね、煙に害は無いから安心して良いよ。
でも煙が重要だから入らないようにね。」
「は、はい・・・流石にこの外見では入りたい人はいないのでは?」
「そうでもないんだよ、特にコイツらが好きあらば中のものに手を出してしまってね。」
そう言って見せられたのは、縄でがんじがらめにされた二匹の珍獣だった。
「肉!食べたい!」「肉!肉!」
中にはお肉があるようだ。
煙とお肉となると・・・
「もしかして、燻製を作っていますの?」
「よくわかったね?昔から燻製品を食べるのが好きでね、暇をみては作っているんだ。
最近じゃ町で売ったりもするんだけど、油断してるとコイツらが食べてしまうことがあるんだ。」
「それは大変ですわね・・・」
「全くだよ・・・」
そうしてアキラさんは何かの魔術を皮で出来た箱?にかけ、地面に魔方陣まで書き始めた。
長くなりそうなので朝御飯を貰いに行こう。
「よう、お嬢ちゃん。その分だと体は大丈夫なようだな?」
「おはようございますモンジさん。ええ、問題ございませんわ。」
「なら良かった!
ところで聞きたいことがあるんだけど・・・お嬢ちゃんは家とかで歌の勉強とかしたことあるのかい?」
「はい?いえ、一度だけ教わった記憶はありましたが、その一回きりで終わってしまいましたわ。
私としてはもっと習いたかったのですが?」
「あ、ああ、わかった、それなら良いんだ。
お嬢ちゃんはあまりお酒は飲まない方が良いのかも知れないな!うん、体にも悪いしな!飲まない方が良い!!」
そんなことを良いながらモンジさんのは笑いながら去っていった。
なんなのだろうか?
似たようなことを他の人にも聞かれ、酒は飲まない方が良いと力説されてしまった。
よくわからないが、お酒は良くないと言う結果が生まれたようだ。
そんなことを言われたり、聞かれたりをしながらその日は順調に過ぎていった。
あの猪がここら辺の主のような存在だったらしく、モンスターも襲ってくることはなかった。
七日目になれば、木材は全て馬車にくくりつけられ、後は帰るだけとなった。
この最終日に、謀ったようにそれは襲ってきたのだ。
「お~い、北の方から誰かやって来たぞ~」
一人の冒険者が気が付き、全員に声をかけた。
よく見ると冒険者の集団のようで20人くらいが歩いてこちらへと向かってきていた。
「あの装備は・・・ヘンリーのパーティーか?」
「あいつらって隣村とその先の街道の調査に行ってるんじゃなかったのか?こっちと合流することはないだろう?」
「何でかとかは俺にはわからねぇよ?だけど、ピエールやトッドまで居るし間違いねぇよ。」
「護衛は多い方が良いし、同じ帰り道なら合流するか。ちょっと行って合流するように言ってみるわ。」
ヘンリーさん達が地核に来ているようで、合流することにしたらしい。
私の位置からは荷台を挟んで反対側なので見えていない。
声からするとモンジさんが行ったようだ。
行きとは違い、荷物が倍以上に増えているので護衛が増えるのはありがたいとみんなが喜んでいる。
「逃げろぉ!!急いで逃げろぉ!!!」
ヘンリーさんの所へ向かったモンジさんが大声を上げて戻ってきた。
少し粗暴なところはあるがベテランのモンジさんが慌ててるところを初めて見た。
「黒だ!あいつら全員、黒だ!!さっさと逃げるんだ!!
俺達は業者が逃げるまで時間を稼ぐぞ!!
全員、武器を取れぇぇぇ!」
黒、黒化した人達がやって来たのだ・・・
まって、さっき、ヘンリーさんのパーティーっていったよね?
昨日は風邪と熱で倒れて更新出来ませんでした・・・
季節の変わり目、皆さんもキヲツケテ下さい




