姫、必殺をみる
三日目になると、一本目の木が切り倒された。
指示された方向へと綺麗に倒れていく。
周囲に木を叩き付ける音が鳴り響くが倒れた木は折れたりヒビすら入っていなかった。
既に他の木にも業者の人達が移動し始め作業を開始していた。
冒険者達も手が空いている力自慢の人が倒れた木の枝を切り取り、丸太になったものを馬車へと縛りつけていた。
前世の知識で言うところの大型トレーラーが連結されたような長さをしている。
感心をしながら私は切り取られた枝を集めて焚き火用の薪置場に置いていく。
後で魔術を使って乾かして使うのだ。
一部の人達はお土産にもって帰るらしい。
魔術師の杖の材料に使うそうだ。
「一本目が出来ましたか。
これからピッチを上げて伐採していきますよ!
冒険者の皆さんは森からのモンスターに注意してください!木が倒れたので、それに反応してやってきます!」
アキラさんが皆を急かし始める。
前にいっていた木がモンスターを呼ぶと言うやつなのだろう。
皆も小型ばかりでは物足りなかったようで、待ってましたと言わんばかりに武器を構え周囲の警戒を始めた。
少し時間がたって、森の奥から地響きが聞こえてきた。
音は凄いが乱れた音ではなく一定のリズムになっているので数は少ないと思われる。
「中々面白いのが来ましたね・・・」
そう言ってアキラさんが見て言ったものは、巨大な猪達であった。
大狼も大きかったが、この猪もかなりの大きさだ。
高さだけでも20mはあるのではなかろか?
人の数倍はある牙を持ち、青い毛を奮わせこちらへ突撃してきたのだ。
「全員、退避!!非戦闘員は戦闘に巻き込まれないように離れて隠れるんだ!!」
「まずは、俺が行かせてもらおう。」
「ピカレスクさん、お願いします!!」
モンジさんの素早い指示で戦えない人達は急いで逃げていく。
どうやら離れた場所に壕を作っていたようで身を隠していく。
ピカレスクさんは背中に担いだ大剣を抜き、猪へと上段に構える。
辺りにピカレスクさんの殺気が広がっていく。
猪もその殺気に反応したようで足を止めようとする。
「いい判断だ、だが、遅い!!」
まだ猪までの距離はあるが、ピカレスクさんがその大剣を降り下ろす。
いや、降り下ろしていた。
その動きすら捉えることが出来なかった。
その数秒後に剣から放たれた斬撃の余波が突風となり周囲の物を吹き飛ばし、猪は真っ向から両断されていた。
これが町最強の冒険者の力・・・
凄い。
凄すぎる!
あんなものどうやってやるんだろうか!?
大狼も一撃で終わらせたと聞いているので、見てみたかったと今更ながら後悔している。
「一匹終わったから、残りはお前らに譲るわ。
気張ってやらねぇと、死ぬからな?」
そう言うと、真っ二つになった猪後ろから同じ猪が二匹走ってきたのだ。
驚いてはいたが、全員自分の取り分があると分かり笑みを浮かべ突撃していく。
あんなもの魅せられたのだ、私も我慢できずに飛び出していった。




