姫、武器を手に入れる
「いやはや、本当にこいつを買うとは思わんかったよ・・・」
「ええ、私もいつかは!と思っていましたが、こんなにも早く購入出来るとは思いませんでしたわ。」
必要なものを一式揃え終えたので最後に武器屋にやって来た。
実際問題、大狼の目に鉈を叩き込んでから行方不明になってしまったのだ。
武器が無くては戦えない。
いや、徒手空拳での戦闘スタイルも憧れるのだが、お祖父様達から止められているのだ。
一応、近所で格闘家達の練習場になっている広場で観察はしているのだが、いまいちしっくりこないのだ。
前世の知識にも拳闘系以外の知識があるので時間があるときに確認しておきたい。
「確かに、装備と斧を買えるだけの金額はあるようじゃのう。
どれ、手を見せてみなさい。」
そう言って、店主は私の手をじっと見つめては近くの箱から帯状の革を取り出してはしまってをを繰り返している。
柄に巻く革を選んでいるようだ。
「これでどうかな?」
選んだ革を素早く巻き付け、仮留めをした状態で渡してくる。
握ってみると前の斧の時には大きく感じた柄だが、こちらは丁度良い太さになっており、握りやすい。
「ええ、すばらしいですわ。これでお願いします。」
「わかった。留め具は金でいいかな?これはサービスじゃ。」
そう言って革を固定していく。
あっという間に出来上がってしまった。
「ほれ、これでお嬢ちゃんの斧の完成じゃ。
こいつを買ってくれたお礼に砥石と斧用のベルトもおまけしてあげよう。」
「ありがとうございます、店主様。」
ベルトをつけてもらい、斧が腰に来るように調節してもらう。
二本装備して、一本は直ぐに抜けるように、もう一本は片方を抜かないと外れないようにしてあるようだ。
他には革の鎧を、と言っても胸当てと肩当てと太ももの外側を保護する部分を購入。
右手には鉄の籠手を、左手には右よりも頑丈で、ナイフが仕舞える籠手を、足は既にブーツを買ってあるので特には買わなかった。
遠出するならマントが必要だと言うことで茶色いマントと、ケープを購入。
これで一端の冒険者になれた気がする。
「ありがとうございました。これで冒険者デビューが出来ますわ。」
「はっはっはっ、また寄っとくれよ!
斧のメンテナンスなら安くやってやるから。」
こうして私の買い物が終わり、店から出ていく。
外に出るとアキラさんが待っていた。
ここの店主とは何かあるらしく外で待っていると言われたのだ。
しかし、足元に妙な生き物が二匹じゃれている。
可愛いのだが、不自然に丸い・・・
大きいボールに短い手足が生え、犬の顔が埋め込まれたような毛玉だ・・・
こんな生き物は見たことがないし、前世の知識にも存在しない。
世界は不思議に満ちている。
「やあ、買い物は終わったようだね。」
「あの、なんですの、この珍獣は・・・」
そう珍獣。
その言葉が相応しいと思った。
「こいつらは僕の仲間で従者みたいなものだから気にしないでいいよ。」
「はぁ・・・」
そう言いながら一匹の頭をワシャワシャと撫で始める。
私も撫でてみる。
ふわふわでもこもこ
何か癒される。
これは癖になりそう・・・
「ご主人ご主人、この子誰?」
「誰?」
不意に下から声が聞こえた。
下をみると毛玉しか居ない。
誰が喋ってるのか辺りをみわたす。
ワシャワシャ
「もっとやさしく撫ででほしい。」
「えっ!?」
この毛玉、喋ってる!?
「コイツら一応獣人なんだ。こんな姿してるけど結構力あるから気をつけてね。」
世界は不思議がいっぱいだ・・・
この毛玉50cmくらいの大きさです




