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姫、謝罪を受ける

お金の入った袋を受けとり、事務室から出ると二人の男が立っていた。

ヘンリーさんとピエールさんだ。


「いやぁ、嬢ちゃん。ちょっとこいつが話があるってんで、ちょっといいかい?」

「?はい、別に構いませんよ?」

「ごめんな。」


そう言って、空いているテーブルへと案内される。

後から事務室からアキラさんも出てきたようだ。

何らかの術か技なのか注意してないと気が付かないレベルの影の薄さだった。


「ほら、ピエール約束しただろう?さっさと言って楽になれよ。嬢ちゃんだって怒ってないんだからよ。」


ヘンリーさんがピエールさんに何かを促している。

さっきの変な事だろうか?

良く分からないがアンゼリカさんにジュースを頼む。

二人はエールを頼んでいたようで既に手元に飲み物が来ていた。

おごりらしいので、私としては喜ばしいのだが。


「あ、あの、エリーちゃん?」

「はい。」


つい癖で営業スマイルを出してしまう。

ピエールさんが赤くなった。

惚れるなよ?


「さっきはごめん。俺。あの大狼と戦ってエリーちゃんがやって来た時にはアイツに吹き飛ばされてたんだ。

もう駄目だって、死ぬんだなって思ったんだ。

目を瞑って、覚悟を決めたんだけど、止めの一撃は来なかったんだ。」


今度は顔を青くしながら当時の状況を淡々と語り始めた。

気が付かなかったが、あの直ぐ近くにピエールさんは倒れていたらしい。

興奮しすぎて気が付かなかった。


「んで、恐る恐る目を開けたらエリーちゃんが居たんだ。

大狼の攻撃をかわして、血塗れにして、笑っているエリーちゃんを見てて俺、怖くなったんだ・・・

俺達が束になっても敵わなかったのに、この子は笑いながら倒しちゃってる。

せっかく助けてくれたのに、酷いよな・・・

だから、ごめん!さっきの俺は変な恐怖に当てられてあんなこと言っちまった!

許してくれとは言わないが、謝らせてくれ!!」


ピエールさんの必死さが伝わってくる。

私は何も感じていないのだが、彼は自分の行為が許せなかったのだろう。

そして、怖かったのだろう、私が。

そんなものは分かりきったことだ、私自身何で生きているのか、なんでここまで戦えるのか分かっていないのだ。


「いいえ、許すも何も私は怒ってませんわ。

逆にピエールさんに感謝をしなければいけません。」


ゆっくりと、私は告げる。


「感謝?なんで?」

「私は何も分かっていないのです。

あの戦いで何が変わったのか、何が起こったのか。

貴方は私にそれを教えてくれました。

そして、その事を謝罪してくれました。

それの何が悪いのでしょうか?」


ピエールさんの手を包み込むように握り伝える。


「あ、ありがとうぅ・・・本当にありがとう・・・」


泣きながら感謝の言葉を彼は続けている。


「よかったなピエール!これで心置きなく依頼に集中できるな!」

「ああ、もう大丈夫だ!心配かけたな。」

「良いってことよ!」


ああ、男の友情。

イイデスワネー


「さて、そんじゃ俺達は依頼があるから行ってくるぜ。」

「ありがとうエリーちゃん、行ってくる。」

「気をつけて下さいね。」

「今度、飯でも奢らせてくれよな!」

「はい、楽しみにしてますね。」


晴れやかな顔をして二人はギルドから出ていく。

そうか、私は怖がられていたのか。

考えてみれば当たり前だった。14の女の子がBクラスの大狼を一人で倒しているのだ。やり過ぎた感が今さら出てきた。


「いや、君も罪作りだね。」


ヘンリーさんの座っていた席にアキラさんが座っていた。

いつの間に・・・

ちゃっかり軽食にサンドイッチを食べている。


「この隣にいた彼、惚れちゃったんじゃない?」

「そんなはずありませんよ、私は何処にでもいるような普通の顔ですし、怖がられてますし。」

「フフッ、どうだろうね?

でも、知り合いなのに変な気まずさが残らなくてよかったね。」

「そうですわね・・・」

「ここに座ってた彼は凄いね。」

「ヘンリーさんがですか?」

「ああ、二人にわだかまりが残らないように席を用意して、パーティーメンバーの心のケアまでしてる。

彼みたいな人が人を引っ張り導いていくんだろうね。」


そう言いながら、アキラさんは何処か遠い目をして外を見ていた。

口は笑ってはいるが、何処か泣きそうな目をしていた。

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