姫、依頼を受ける
「さて、話は変わりまして。
貴女が冒険者になるにあたって、一つ冒険者ギルドから依頼が入ります。
所謂指定依頼と言うものですね。」
「指定依頼!受けさせてもらいますわ!」
「妙に早とちりで物事を進める傾向がありますね・・・
冒険者を目指すのならば、先ずは依頼内容を確認してから依頼を受けるようにしてください。」
「はい・・・」
いかんいかん、指定依頼と言う冒険者には栄誉ある依頼を目の前にしたら速答してしまっていた。
ギルドで毎日自慢気に語っている冒険者達が羨ましかったわけではない。羨ましかったわけではない。
「この依頼は戦闘ではありません。
物資調達の手伝いになります。」
「物資ですの?」
「ええ、最近隣村が黒化の被害にあい、更には大狼が襲ってきたり、異常が絶えません。
この町の防備は簡単な塀しかなくモンスターの村などが襲って来た場合に対処することが出来ません。
そのために冒険者や業者と共に物資の調達を手伝って頂きたいのです。」
「そのくらいでしたら問題ありませんわ、喜んで参加させて頂きます。」
素材集めなどはやってみたかったので歓迎である。
他の人も居るのなら素材集めで間違うこともないだろう。
「行き先なのですが、貴女は神樹の森は知っていますか?」
「ええ、お祖父様が昔に入ったことがあるので聞いたことがありますし、確かこの町の近くまで森が来ていたはずですわね?」
「ええ、ではお復習と、貴女の知識がどのくらいか確認したいので説明してください。」
この男、教師か何かか!?
私も昔に聞いただけなので思い出しながら喋っていく。
「神樹の森、別名:巨樹の森とも言われる巨大な木が生い茂る広大な森。
その大きさはこの大陸を三つに分けている龍帝山脈を覆い囲うように存在しており、その中には沢山の神獣や魔獣が棲息し、獣人達と共に暮らしていると聞きますわ。
そこでの採集行為などは森を統括する賢者、もしくはその地域に住む獣人族の長老の許可が必要になり、無断で森が荒らされた場合は獣人だけではなく、神獣や魔獣さえも襲いかかってくると。」
「その通り、よく知っていましたね。
その神樹の森が依頼先になります。」
「え、ええ!?そんな国によっては進入禁止とまで言われているもりですよ?本気なんですの?」
実際に、森へ迷い込んだお祖父様が死にそうになった話を何度か聞いている。
それ以来ガンバルティアでは神樹の森に入ることは禁止されているほどだ。
「大丈夫ですよ、ちゃんと許可はとってありますので。」
「許可って誰のですか!?この辺りには獣人族の集落はなかったと思うんですが!」
「いえ、そこは森の賢者から。」
にこやかに答える。
私の知識では森の賢者は龍帝山脈の反対側に居て、こちら側の地域には住んでいなかったはず。
話によると気難しく放浪癖があり、白い髪と白い肌の青年のような外見をしていると・・・
ふと、サブマスの隣を見る。
にこやかに微笑む白髪で白い肌の青年擬きが・・・
「い、今さら失礼な事を聞きますが、貴方様は、もしかしなかても、賢者様なのデスカ?」
「そうだね、僕はそう言う風に名乗ったことは無いけれど、そう呼ばれているね。」
今度はサブマスが笑いを堪えて震えている。
はぜろイケメン。
何故人が立ち入ることの出来ないと言われている龍帝山脈の反対側に居る賢者がこんなところに居るのであろうか?
そんなことはどうでもよくなってしまいそうなくらい衝撃的な話であった。
「いや~、良い反応をありがとう。見ていて楽しかったよ。
今回、こっちに来ているのは、個人的な用事があってね。調べものついでに立ち寄ったら旧知の仲のクレイン君から頼み事されたから許可を出したのさ。
何かしら問題になる可能性があるから僕も同行させてもらうけどね。」
賢者ってこんなにフットワークが軽いのだろうか?
私のイメージでは偏屈で森の中で隠居している頑固なお爺さんだったのだが・・・
「報酬の半額をお渡ししますので、旅に必要なものを揃えておくようにしてください。」
そう言って話は終了するのであった。




