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姫、墓所を脱走する

棺から出ると予想以上の寒さが体を包んだ。

原理は分からないが、時間経過によって寒さが強くなっていく感じがする。

幸いにも足には布で作られた靴が履かれていた。

コレも葬儀に使われる死者への手向けである。


「助かりますわね、床に足を着けたら足裏が引っ付いてしまったら逃げられませんもの。」


逃げる?

私は逃げようとしているのか?

確か、死のうとして毒を飲み干したはずなのに・・・

毒と前世で頭が混乱しているのだろう。

今は思いのままに行動してみよう。


部屋を見渡すと、そこまで広くはなく、前世で言うところの四畳半位の広さしかない。

棺一つのための部屋なら大きすぎる気もしないでもない。いや、王家だったからこその大きさなのだろうか?

棺の左側面の壁に小さく子供一人が出れそうな穴が空いている。

少女の体である私なら通れるであろう。


この部屋から出る前に、棺の蓋を閉め、剣を取り一礼をする。

棺ではあるが何となくしなくてはならない気がした。

私は既に死んでおり、エレノアと言う名前に別れを告げるために。

前世を知り、変わってしまったのであろう私が、何も知らなかった私に。


「大丈夫、通れましたわ。伊達に毎日の運動と食事制限をされていた訳ではありませんわ!!」

お尻が引っ掛かりそうだったが、第一の関門は突破できた。

お尻の大きさは問題ない、そう問題ないのだ!!


穴は廊下に繋がっており、穴がある場所は封印後に誰が居たか分かるように名前を入れるよう出来ていた。

廊下を見渡すが、王家の墓所にしては飾り気がない。

王家の墓所ならば壁画や柱に彫刻などが入っているはずなのだが、それが見られない。

そして、一つの結論を出す。


「裏墓所と言うものなのでしょうか?」


裏墓所、王家の人間ではあるが訳あって本来の墓所には入ることが出来ず、逆に静かに眠ってもらいたいと願う国民には知られていない秘密の墓所。

墓所ではあるものの、墓荒らしに入られても金品財宝等がなく、あったとしても生前に使用されていた服や日用品しか入れないため、旨味も少なく、遺体を凍らせる魔法そのものが罠となり人が近づかない墓所。

年に何度か担当の墓守りが見回りに来る程度と聞いている。


「それはそれで好都合ですわね。」


そう言って私は廊下を歩き、外へと出て行くのであった。

独りで居る事が多かったので、独り言が多い姫様です。


しかし、伊達にって言ってる事は、この世界に伊達が存在したのであろうか・・・








いえ、答えは前世の知識が入っているせいで無意識に口走っているだけです。

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