姫、参戦する
一匹目が倒され、冒険者達の士気が上がっていく。
二匹目もうまい具合に冒険者達が囲み、時間の問題だ。
三匹目は善戦しているが動きが怪しい。
前衛が少なく後衛との連携が上手くいってないようだ。
一匹目を倒した冒険者が三匹目の救援に向かっている。
ルークが先頭に立つと思いきや、倒れていた。
どうやら全力を出しすぎてガス欠しているようだ。
パティが引きずって戦線から離脱していく・・・
「問題は、大型の一匹かな?」
一番大きな大狼は未だにピカレスクさんと睨み合いが続いている。
あそこには誰も近付けない。
両者の気迫が渦巻きわずかな風を引き起こし、砂を巻き上げ地面に円を描き二人の死合いの舞台を作り上げていく・・・
あの中に踏み込めば、入ったもの達から先にやられてしまうだろう。
問題は二匹目だ。
中型の三匹は先ほど見た通りだが、残りの一匹は冒険者側の劣勢が続いている。
大狼はその巨体と素早さを利用して戦っているが、冒険者達も馬鹿ではない。
その早さの中でも確実に攻撃を入れているのだが、大狼の血が飛んでいない。
ダメージが通っていない可能性がある。
野生の獣の毛は強靭だが、大狼の毛はどれ程硬いのだろうか?
そうも言っている内にも前衛の冒険者達が段々と減っていく。
このままでは後衛もすぐに殺られてしまうだろう。
「それはいけませんわね。
ここは私も参加させていただきましょう。」
不意に笑顔が洩れる。
前のオーガは相当の大きさだったが、こんな大きな獲物は初めてだ。
助けを求められてはいないが、無惨に散っていく人々を無視するわけにもいかない。
流石の大狼もこちらには気が付いていないようだ。
なら、それを最大限に活かさせてもらうとしよう。
手本ならさっきルークが見せてくれたので問題ないだろう。
私は自分自身を弾丸にして屋根から飛び立った。




