姫、棺を物色する
目覚めたのは箱の中。
どうにも私以外にも色々な物が詰められているらしく自身の体より大きめであろう箱が狭く体全体を圧迫している。
「狭いですわね・・・」
予想が正しければ、ここは棺桶の中・・・
既に葬儀が終わった可能性もある。
目が覚めて、意識がはっきりして来たのか異様な寒さが肌を刺激してくるのが分かった。
「季節が秋になりかけていたとは言え、寒すぎますわね?既に葬儀すら終わって墓所に納棺されてしまった可能性がありますわね・・・」
前に聞いたことがある。
王家の墓所には魔法がかかっており、死体が腐ることのないように、いつか復活する可能性を信じて入った者をゆっくりと凍らせる魔法がかかっていると。
箱の外からは音は聞こえない。
誰も居ないのだろうか?
「とりあえず、ここから出て考えてみましょうか。」
動きにくい棺の中から手と足を使い蓋を開ける。
「開きませんわ・・・この棺、石で出来ていますわ・・・かくなるうえは!」
蓋を開けようとしている手足に魔力を込める。
私としては当たり前の事だったが、前世では魔術も魔術もなかったようなので驚きだ。
私自身、生まれてきてから魔力と常に共に生きていたので魔力がない世界が信じられなかった。
「ふぬぅぅぅぅぅっ!!」
魔力による筋力の増強。
王家の人間はこの魔力による筋力の増強が得意とされ、人間離れした身体能力で戦場を駆け巡っていたそうだ。
私にもその素質があるようで、いや、私にはそれしか出来なかったようで、コレと初歩の魔術以外何も出来なかった。
おかげで石で出来た蓋がゆっくりと開いていく。
自分一人分が抜け出せる隙間が出来たので棺から顔を出す。
やはり棺であった・・・
棺の外は真冬の朝方のような寒さをしていた。
「ほのかに灯りがあるようですが、これは完璧に王家の墓所ですわね。」
体を起こしながら部屋を確認しようとすると、お腹の上に置かれた何かが金属音と共にずり落ちる。
「剣?ですわね?」
剣を取り観察する。
ショートソードのようだが飾り気がなく、刃もない剣の形をした鉄の塊。
研げば使えるかもしれないが、刃が厚すぎて研ぐにはかなりの労力が必要だろう。
「冥府に逝くものには、一振りの刃を持たせよ、でしたわね・・・遺体を傷付けない為に刃の無い剣を使うと教わりましたわね。」
棺の中には、かつて私が好きだった花や人形、本が入っていた。
「本当に、私には勿体ない家族でしたわね・・・」
そうして、剣を取り棺から出るのであった。




